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◆戦略
総記FAQ目次


(こちらより引用)


 【質問】
 「戦略」とは?

 【回答】
 「軍事が政治・政策に及ぼす影響を考慮して,その対策を練ること」.
 そのため,戦略学の授業は軍事マニアにとっては哲学的に見えることが多いという.
 以下引用.

--------------
〔略〕
こちら〔軍事〕の厳密な意味で「戦略」(strategy)という言葉を定義すると,これはズバリ,

「軍事が政治・政策に及ぼす影響を考慮して,その対策を練ること」

という意味になるでしょうか.

 まず皆さんに頭に入れておいて欲しいのは,「戦略」というものを考えるときに参考になる,階層(ハイラーキー)というものです.

Vision(ビジョン)

Policy(ポリシー/政策)

Grand Strategy(グランドストラテジー/大戦略?)

Military Strategy(ミリタリーストラテジー/軍事戦略)

Operation(オペレーション/作戦)

Tactics(タクティクス/戦術)

 これからも分かる通り,戦略,もしくはこちらでいうところの戦略学(Strategic Studies)というものは,「グランドストラテジー」と「軍事戦略」の二つの部分で使われる対策のことを示すんですね.

 ところが日本ではどうも「軍事戦略」,もしくはそれから一段下がった「作戦」を含むものを「戦略」と言っていることが多いように思われます.
 しかもここでも「ソフト」と「ハード」の問題の取り違えが非常に大きいのです.
 日本人はなぜか「ハード」に強いために,たとえばゼロ戦マニアとか戦車マニアとかけっこう多いようなのですが,こういう人が欧米で戦略学の授業を受けてみると,
「なんじゃこりゃ? おれは哲学をやっているんかいな?」
と思ってしまうことが多いのです.

 なぜならこっちの戦略学では,武器のような「ハード」の問題よりも,もっと「ソフト」な部分を研究するからです.
 具体的には,
「なぜ大国はシーパワーを必要とするのか?」
という質問について答える,という作業などは,その違いがわかる典型です.

 日本の軍事・軍備マニアなどの「ハード派」の人は,たしかに
「二ミッツ級の空母にはどういう艦載機を乗せられるか?」
などという問題には詳しいのかもしれませんが,戦略学などではこれがどういった政治的な意味を持っているのか,ということを研究するのです.
 つまり,焦点(フォーカス)をあてている場所が,いわゆる日本の「兵学」などとは根本的に違うんですな.

------------「地政学を英国で学ぶ」

unknown

▼ また,ドラッカー曰く,戦略とは,
「リスクを伴う企業家的な意思決定を体系的に行い,その実行に必要な活動を体系的に組織し,それらの活動の成果を体系的にフィードバックするという連続したプロセスである」
 すなわち,目的意識を持って,達成しなければいけないことのために,段取りをして実行する,ということ.
 岡林秀明はドラッカーの論を進めて,もっとシンプルに,戦略とは一言で言えば,「優先順位を決めること」だとしている.
 力を入れるものと入れないものとを峻別し,必要な場合には,優先順位の低いものにはリソースを投入せず,撤退や解散することもありうる.
 逆に言えば,「すべてを均等に扱う戦略などはありえません(日本企業では,よくありますが)」と,岡林は言い切っている.

 日本企業のみならず,「南進」と「北進」を均等に扱う戦略を立ててしまった軍隊が,かつてどこかにあったような気が……

 【参考ページ】
http://ameblo.jp/daidora10000/entry-11015423815.html
http://www.visualthinking.jp/archives/1236
岡林秀明『ドラッカーの理論が2.5時間でわかる本』(TAC出版,2011),p.56-57

【ぐんじさんぎょう】,2012/07/25 20:10
を加筆改修

「すべての価格帯で消費者を満足させる,画期的な商品群」

ゆずこせう in mixi,2012年07月17日 00:36

 優先順位をつけること=戦略というのは,非常に本質を突いていると思うんだけど,ただまあ,優先順位リストに載る項目を作製せねばならず,それぞれの項目についての,目標・目的,そして必要な手段の提示は行われなけりゃならんでしょうね.

 そこまでが戦略だと.

 では,戦術は何かと言えば,手段の効率的な執行.

 作戦というのは,両者の中間概念だとあいまいに言われちゃうんだけど,一定のタイムスケジュール区間における戦略・戦術を切り取って計画として記したもの.
 言い換えれば,執行(=オペレーション)計画だと.

 作戦の位置づけをそういう風にすると,スッキリする.
 我流だけどねん(笑

ソフトヒッター99 in mixi,2012年07月17日 17:48

 いくら使って,いくら儲けるか,誰かがえんぴつ舐めたもの,
 または,メディア予算こそが戦略!
 ・・・って代理店時代の師匠と師匠2号が言ってた.
 真なり.

赤の9番 in mixi,2012年07月17日 23:43


 【質問】
 知り合いと戦国時代の雑談をしていたところ,
「戦略と戦術の区別がわからん」
と言い始めたので,
「戦略は複数回の戦闘で達成されるような大きな目標」
「戦術は比較的少数の戦闘で達成される目標」
と説明したら,
「区別の基準がわからん」
と言い始めたので,
「明確な判断基準はない.というか両方兼ねてる場合もある」
と答えたら,
「戦国時代の合戦で具体的なやつ」
と要求されたので,鳶ノ巣砦への迂回攻撃を上げました.
 これは,戦略・戦術両方兼ねている行動で間違っていないでしょうか?
 間違っているのなら,具体例を教えてください.

 【回答】
http://fsmism.exblog.jp/10139029/
によれば,「戦略とは戦術より上位にある計画」のこと.
 また,軍事に限定すれば,「戦略とは戦争に勝つためのものであり,戦術とは戦争を構成する個々の戦闘に勝つためのもの」となるという.
 さらに,軍事に限った戦略は,大戦略や軍事戦略の部類が該当し,国家戦略はどちらかといえば政策に該当し,政策は大戦略や軍事戦略の上位に位置するという.

 詳しくは同ブログを参照されたし.
 フライング・スパゲティ・モンスターが言ってるんだから,たぶん大丈夫.

***

 戦略とは,文字通り戦う前に敵勢力を屈服させる為の行動全般を指し,戦術とは実際の戦闘における作戦行動の方法論全般を指します.
 戦略に基づいて戦術を駆使して戦う,と言う事ですね.
 つまり端的には視点が異なる訳で,戦術はミクロ,戦略はマクロでのドクトリン(行動指針)と言う事です.

三等自営業 ◆LiXVy0DO8s in 軍事板
青文字:加筆改修部分

 より正確に言うと,戦争に勝つための手段は「大」戦略とか「政」略の範疇に入る.
 この場合の対象は敵の「国」そのもの.
 「大」をつけずに「戦略」と書く場合,厳密にはその戦場(個別のではなく「方面」レベル)において ,自軍が求める目標を達成するための手段.

 まあ,この辺はしばしば混同されるし,そこまで区別しなくても普通に説明する分には十分だが.

 また,どうも時代や,思想家によっても定義がズレるらしい代物だったりする.
 いくつか例示しておく.
 他にも例えばリデルハートが,大戦略とか定義してたり,ややこしい.

――――――
 戦略は軍を作戦地帯の決勝点に指向して,そして前もって戦闘の結果に影響を及ぼすものであるが,戦術は(勇気,才能および幸運の助けをかりて)直接勝利を獲得するものである.

――――――ジョミニ『戦争概論』

――――――
http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/101-5-1/index.html

Tactics
1. The employment of units in combat. 2. The ordered arrangement and maneuver of units
in relation to each other and/or to the enemy in order to use their full potentialities.
(Army) - tactics, techniques, and procedures (TTP) - 1. Tactics - the art and science of employing available means to win battles and engagements.
Strategy
The art and science of developing and using political, economic, psychological, and military forces as necessary
during peace and war, to afford the maximum support to policies, in order to increase the probabilities
and favorable consequences of victory and to lessen the chances of defeat.
――――――

――――――
 戦術と戦略に区分することは,現代ではほとんど一般的に行われている.
 そして誰もが,このように区分する根拠をはっきりと知らなくても,個々の事象について,両者のうちのいずれに属すべきかをかなり明確に知っている.

(この部分の考察は面白いけど長いので中略)

 戦術とは,戦闘における戦闘力の使用に関する規範であり,戦略とは,戦争目的を達成するために戦闘の使用に関する規範である.

――――――クラウゼヴィッツ『戦争論 レクラム版』

 例えば,敵のある中核都市を占領するために自軍の戦力をどれだけ投入し,どの方面に進軍させるか?
 敵防衛部隊と遭遇した場合戦うのか迂回するのか?
 そういうことを考えるのが,軍事的意味での戦略だ.

 戦場で勝ちまくったのに負けてしまったハンニバルの例が,戦略と戦術の違いを説明する上では,素人さんにはわかりやすいのでは?

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦略と大戦略ってどう違うのでしょうか?

 【回答】
 知る限りでは,大戦略(Grand Strategy,国家戦略とも訳される)という用語を初めて定義したのはリデル・ハート.
 戦争と政治は密接に結びついているので,それを意識した用語を,「戦略」の上位に定義したかったらしい.

 適当に要約すると,軍事のみならず,物質的・精神的なリソースの発展・分配や,経済的・外交的なオプションを含む,総合的な国家の戦略のこと.
 厳密な内容に知りたければ,書籍とかをあたったりぐぐったりしてくれ.

 成り立ちについて.
 『戦略論大系4 リデルハート』より引用.

---
 「戦術」が「戦略」の低次における適用であるのと同様,「戦略」は「大戦略」の低次の適用である.
 戦争遂行を指導する政策と同義語であるが, その目的を支配する基本的な諸政策とは区別して「大戦略」という用語を用いることは,「国家目的遂行に際しての政策」というニュアンスをだすためには有益である.
 というのは,大戦略(高級戦略)の役割は,一国ないし一連の国家群のあらゆる資源を戦争の政治目的, すなわち,基本的政策の規定するゴールの達成に向かって調整・指向することだからである.
---

 使い古された言葉だが,
「どの山に登るのかを決めるのが政治.
 どうやって山に登るか考えるのが戦略」

 で,
*今年はどことどこの山に登るのか?
*それは何時登りに行くのか?
*その山とその山に上るには,今自分が持っている装備で大丈夫か?
*大丈夫でないなら何を買い何を揃えるべきか?
というようなことを考えるのが「大戦略」.

軍事板


 【質問】
 国家戦略に対するリアリストの見方は?

 【回答】
 以下のような見方をします.

1,性悪説

 人間の欲望というものを否定しません.
 よって,きわめて性悪説的な国際政治の見方をします.
 国家は合理的に動くことはあっても,それは人間に元々そなわっている欲があるからだ,という考えから合理的に行動するのだ,というのがミソ.

2,アナーキーとパワー

 国際政治の大前提として,すべての国家の上に存在する「世界政府」はない,という見方をします.
 そりゃそうですな,
 日本がどこかの外国に攻められたとして,110番する相手はいませんからね.
 そうなると自分を守ってくれるのは結局自分,ということになり,このような状態をアナーキー(無政府状態)と呼ぶのです.
 このような状態では,国家は生き残りたいという欲望をもっているために,より多くのパワー(権力/影響力)を持とうとすることなります.
 よって,パワーの観点から見れば,国家の動きは全て説明できるんじゃないの?ということになるのです.

3,国際法,倫理,国際機関

 リアリズム&地政学では,国際政治は国家同士のパワーのせめぎあいだと冷酷に見るので,国際法や倫理,それに国際機関はほとんど影響力がない,という見方をします.
 これを言い換えれば,「悪い国」とか「よい国」とかいう区別をすること自体が元々無意味である,ということになります.
 国家はあくまでも国家であって,その性格や内容がどうのこうのというのは考慮に入れないわけです.
 木炭エンジンだろうが水素エンジンだろうが,車として走れば車は車だ,という見方です.

 とにかく世界政治で一番重要な役割を果たすのは国家なのであり,これを超える存在というのは,たとえEUであっても実質的な影響力は出せない,という見方をするのです.
 結局一番大事なのは「国家」という枠組みによって見る,ということになります.

 まだまだ書き足りないのですが,今日はこのへんで.

 うーん,,こうやって考えてみると,地政学やリアリズムというのはなんだか悲観的なもんですねぇ(笑

「地政学を英国で学ぶ」

 上記の内,
1.においては,モラルを比較的重視する点において,
3.においては,国際機間を比較的重視する点において,
リベラリストはしばしばリアリストと対立します.


 【質問】
 軍事は政治の一部分である,といいますよね.
 逆に政治が軍事の一部分になったことはあるんですか?

 【回答】
 ない,と言うかありえない.
 政治とは徴税,戸籍,インフラと行った内政や,法律,外交など一国を運営する上でのあらゆるものをひっくるめたもの.
 軍事はあくまでも,他国との紛争に関する一要素であって,外交の更に一部でしかない.
 「軍事が政治の一部分」と言うのはいわば,「エンジンが自動車の一部分」と言うようなもので,自動車がエンジンの一部になることがありえないように,例え政治の全要素において軍部の都合が最優先となる軍事政権であっても,一国の政権である限り,軍事は政治の一部分にしかならない.

 強いて言えば,第一次大戦末期のドイツ帝国がそういう状態だったと言えるかもしれない.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 「意思ではなく,能力に備える」理由が分かりません.

 【回答】
 中越戦争のように1,2年前まで友好国だったのが,情勢変化によって戦争をやりあうほどに変わってしまうことがあるんですよ.
 もしかすると攻めてこられるかもしれないとなった時に1,2年で軍を組織して装備を買って,訓練を施すなんて不可能です.
 だから平時から一定の戦力を整えておかないと,緊急時に対処できない.
 相手側にすれば,防衛力整備を始めた段階で攻撃して有利な立場を得ようとするので,過小な戦力が戦争を誘発しやすくしてしまうんですよ.

Posted by 名無しT72神信者 at 2010年08月27日 15:32:43

「週刊オブイェクト」◆(2010年08月26日)コメント欄
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 国の代表が他国に行く事は,お互いが信頼関係にあるからですよね?(安全保障上の関係で)
 だとしたら小泉さんの訪朝は,歴史的に見ても珍しい外交事例なのでしょうか?

 【回答】
 そこまで珍しくはない.
 「今まで険悪だったけど,これからを雪解け期にしていこうよ」程度の信頼関係でも,元首同士の訪問ってのは普通にあり得る.
 その代表で,日本人にとって衝撃だったのがニクソンの訪中だけど,知らない世代も普通にいるのかな.

 小泉元総理の訪中で珍しいのは,金総書記が返礼の訪日をする気ナッシングだった事.
 普通は元首が訪れたら,お返しに相手国の元首も訪れるなり,何らかの事情で無理でも代わりに重鎮を送ったりして,相応の礼を尽くすんだよ.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦略上,「合理性」はどの程度の意味を持つのか?

 【回答】
 必ずしも,いつも合理的行動がとられるとは限らない.
 そのため,戦略学などでは「戦略文化」(ストラティジック・カルチャー)というアプローチから相手の軍事行動を分析しているという.
 以下引用.

 よくこのような〔テロ〕事件が起こると,「一体誰が一番得をするのか」という観点から考えるとよい,という風に考えられております.
 ようするに犯人が合理的(rational)な動機を持っている,という想定から推理するわけですな.

 ところが国際政治学関連では,この「合理性」というものが,そもそもかなり疑われてきております.

 たとえば第二次大戦時の日本の行った特攻隊による攻撃.
 これなどは,日本人の感覚からすれば合理的(rational)だという気がしないわけでもない.
 実際にも「仕方がない」ということで(もちろん非合理的だという感覚はありましたが),あのような過激な作戦が実行されたわけです.
 ところが攻撃される側のアメリカ人にとっては,自らの命を絶って飛行機ごと軍艦に突っ込んでくるのは,彼らの思考の枠組みからは完全に外れた行動です.
 極端に言えば,特攻隊の攻撃は,西洋人にとっては宇宙人の行動のようなものなのです.
 彼らの思考のパラダイムの外で決定されたものであり,おせじにも合理的とはいえないわけですね.

 そこで今回のテロ攻撃なんですが,普通に「誰が一番得をしたのか」という推理で考えるのは,結局のところは「相手が自分と同じ損得勘定で動いている」ということを期待した範囲で考えることに他なりません.
 ようするに「合理性」で考えているわけです.
 ところが彼らが単なる愉快犯のような,単に面白いからやる,という考えで事件を起こしたらどうでしょうか.
 こうなると
「相手が同じ損得勘定で動いている」=「テロリストは合理的なアクターだ」
という前提そのものが崩れてしまいます.
 ようするに,「合理性」という考え方そのものが当てはまらないわけです.

 戦略学などでは,相手のこういう「合理性が通じない面」というものを重視して,以前から「戦略文化」(ストラティジック・カルチャー)というアプローチから相手の軍事行動を分析する,ということをやっております.

「地政学を英国で学ぶ」,2005-07-09 07:55

 授業の話に戻りますが,うちの先生は,戦略を考えるときにはとにかく敵の文化を知ることが重要になってくる.だからそういった意味で,孫子が「兵法」のなかで論じた「彼を知り,己を知れば百戦あやうからず」というのはまったく正しいのだ,と申しておりました.

 先生によると,アメリカ軍の中にも「文化」があるのだそうです.まず敵の「文化」を知ろうとするのが「海兵隊」と「陸軍」,相手の文化にあまり関心を持たないのが「海軍」,あいての文化を完全に無視しようとするのが「空軍」だそうです.

 しかし最近ではイラク戦争などの影響から,アメリカ軍の中でも相手の国の文化を知らなければならないという声が,少ないながらもあがっているのだそうです.

 ちなみにアメリカ政府の中では,伝統的にCIAと国務省が相手の国の文化を尊重して対話型の外交,国防省・NSC・大統領府はイデオロギー優先で軍事によって物事を解決しようとする傾向があるというのはけっこう指摘されております.

これも文化の違いなんですねぇ.

「地政学を英国で学ぶ」

 上記引用でも少し触れられているが,そもそも「何が合理的なのか?」という概念一つ取っても,各国それぞれ,人それぞれということでもあろう.
 端からは単なる無能な働き者にしか見えない場合でも,当人は「合理的行動」だと思っていたというケースが散見されるしね.


 【質問】
 「境界設定」とは?

 【回答】
 境界設定(demarcation)は地政学の概念で,考察上,地球を3〜4の戦略地域に分けるもの.
 以下引用.

 地政学というのは,はっきりいえば世界支配のための「世界観」です.
 欧米の戦略家が「世界をどう見ているか」を教えてくれるのです.

 地政学では,まず地球を大きく三つとか四つの戦略地域に分けて考えます.これを境界設定(demarcation)というのですが,これに優先順位をつけて,
「じゃあここだけはしっかり確保しておこう」
ということになるのです.まったく合理的な世界です.

 これに二分法(dichotomy)という,これまた合理的な考えが混じってきます.

 たとえば地政学の祖であるマッキンダーという人は,世界の歴史を
「海と陸の戦いである」
として,典型的な二分法による世界観を構築したのですが,これなどは欧米にあるマニ教とかの思想文化を一応理解しておかないと,ちょっと難しいのです.

「地政学を英国で学ぶ」

 なんとなく,映画「独裁者」でチャップリンが地球儀とたわむれるシーンを連想するのだが.


 【質問】
 戦略文化とは?

 【回答】
 戦略文化(strategic culture)とは,その国特有の文化と軍事とが結びつくことにより見られる,軍事的な特徴のこと.
 以下引用.

 どの国にも特有の文化があることは誰でも知っている事実ですが,とくに戦争のような社会の極限状態になると,この文化というものの特徴が色濃く出るということはお分かりいただけると思います.

 たとえば第二次大戦のころの日本ですが,よく言われるのは「兵站(ロジスティック)を軽視していた」ということです.
 もともと物資が少なかったのに加えて,変に精神論を持ち出して補給を軽視したために負けてしまったという話.

 これはドイツも同じで,彼らも陸上戦重視だったので,補給についての感覚がイマイチだったことが言われております.
 メカ重視だったこともかなり目立つところです.

 アメリカなんですが,この国はとくに火力重視ですね.
 でかい爆弾なり大砲などで吹っ飛ばせば,すべての問題が解決すると考えている傾向がみられます.
 現在おこなわれているファルージャ侵攻作戦などはまさにこの典型です.
 通常部隊でゲリラに対抗してどうする!という,戦略家たちのするどい突っ込みをすっかり忘れております.
 そういえばベトナム戦争のときにアメリカ軍では,「村を救うために村を破壊する」(we destroy villeges, in order to save them)という不可思議な論理が横行しておりましたな(笑)

 こういった戦略な文化なんですが,授業ではそもそもこういった「文化」を科学的に学ぼうとすること自体がそもそも怪しい,という話になりました.
 どういうことかというと,われわれは全員,文化の中で生きている,
 だからある国の「文化」を学ぼうとしても,それを学ぼうとしている私たち自身もある一定の「文化」の影響を受けている.
 だから,「文化」を越えた「非文化的」な視点からものを見るのはそもそも不可能だ,ということです.

 うーん,完全に禅問答みたいなんですが,これはたしかに当たっております.
 たとえばわれわれが
「アメリカってアホだねぇ」
と思ったとしても,これは
「日本の文化の影響を受けた私たちの立場から見て,アメリカってアホだねぇ」
ということになるのであり,これは決して何の文化の影響を受けない,「神の視点」のように「完全に中立な立場からものを言う」ということは不可能だ,ということです.

「地政学を英国で学ぶ」

 最後のほうの記述は,なんだか不確定性原理を連想させる内容である.


 【質問】
 大陸国家の有利・不利な点ってだろう?

 【回答】
 大陸国家と海洋国家の違いを表す物のひとつとして,物流活動の効率があると思います.
 陸路による輸送よりも当然,海上輸送の方が効率が良い
 資源と経済が世界を支配している今,これが経済活動にモロに響くわけです.
(陸送だと通過国による制約を受ける
 これが大陸国家が肥大化して行く理由だと思います.)
 さらに,大陸国家のウリである,国防上の優位点も,弾道弾の存在により弱まっております.

 後は,軍事力による経済封鎖のやり方の違いですね.
 海洋国家に対する海上封鎖と,大陸国家に対する国境封鎖.
 彼我の戦力と地政学が影響してきますから,議論してみるのも面白いでしょう.

 海上封鎖が意味を成さないケースとして,その封鎖された世界内において自給自足が成り立つ場合があると思います.
 日本のような無資源国ならば,海上封鎖は死活問題となりますが,仮にユーラシア大陸が海上封鎖されたとしても,不便はきたすでしょうが,すぐに降伏しなければならないような事態には成らない訳です.
 下手をすると,新たなブロック経済を作るだけ,ということに成りかねません.

 【反論】
 大陸間弾道弾による大陸国家の国防上のメリットの消失,これは否定しません.
 しかし相互確証破壊により,国家間の戦争で簡単に弾道弾が使えない状況である今,実は大陸国家の国防上のメリットは,実は未だに存在しているのでは?と愚考します.
 通常兵力での戦争の場合,空軍力だけでは制圧できないのは,皆さんご存知ですからね.

 また,大陸国家も現在,その物流&人の移動は殆どを海空に頼ってしまっており,海上封鎖の持つ意味がものすごく大きくなってしまってる現状では,仏独露(&中)に勝ち目があるとは思えません.
 そもそもそれらの国が太平洋・大西洋・インド洋の制海権を,シーパワー側から奪取できるとは思えません.

 パイプラインも,設置運用費用とその膨大な延長距離全体の安全性を考えると,決定打にはなりにくいと思います.
 中東にしろシベリアにしろ北海にしろ,人口集積地で使用するに充分な化石燃料の確保が,海上輸送以外に(コスト面・安全面も含めて)有効な方法が見出せないと言うのも事実では?

 今の世界で,ロシア,中国も含めて自給自足がなりたつ国家は不在だと思ってましたが,考えてみれば最近10年のイラクは,よく経済封鎖に耐えましたね.
 アフリカの最貧国でさえ,すでに換金農作物による貨幣経済,石油経済に巻きこまれてますので,自給自足圏はもはや地上に無いと誤解してましたが・・・.
(ゆえに一度戦乱で農業が破綻すれば,破滅的な飢餓に見まわれるのですが)

 WW2以前の不況による貿易縮小が,ブロック経済というかアウタルキー(自給自足)の発想を生み,南方資源なり東方生存圏をもとめて戦争がはじまった・・・いうのが,1944年ブレトンウッズにおける西側政財界の反省点でした.
 だから戦後,あれほどまでに自由貿易の思想のもとに,世界は相互依存体制にデザインされた.そのためのシステムがGATTO(自由貿易による利害を相互に調整しあう協定)であり,IMF(貿易立国のための国家への資本貸し出しシステム)だと思うのです.

軍事板,2003/03/11-03/12
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ランド・パワーはどのような行動に出る傾向にあるのか?

 【回答】
 地理的に「囲まれてしまう!」という恐怖を感じ易いため,外からの侵入に備えようとして,あえて外に攻撃的になるという.
 例えば,典型的なランド・パワーである甲斐の国(山梨)の武田信玄は,盛んに対外遠征をしている.

 詳しくは「地政学を英国で学ぶ」,2006/8/24付を参照されたし.


 【質問】
 ゲームで,ある助言にのせられて,敵兵力の多いところをを攻めたら,予想以上の大損害を受けた.orz
 こんなことは現実にも起こりえますか?

 【回答】
 起こり得る.
 戦略が必ずしも合理的決定に基づくものではないことは,クラウゼヴィッツの時代から指摘されているという.
 以下引用.

---------------------------
 クラウゼヴィッツの戦争の理論には,「激情」(passion),「偶然」(chance),そして「理性」(reason)という,3つの要素の間にある,本質的に不安定な関係が,その前提にある.

 (中略)

 戦争には偶然の関わる領域が広く,そこで要求されることは過酷であるため,国の命運の最先端を担って実行しなければならない人々は,自分たちが政策の目的に影響を与える可能性があることを,ある程度認めてもらわなければならない.
 本項の格言では,このようなことが頻繁に,そして決定的に政策を動かしてしまうことを警告している.
 つまり,戦争が政策の手段になるのではなく,逆に政策が戦争の手段になってしまうということだ.

---------------------------『戦略の格言』(コリン・グレイ著),p.68-72

以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦略がしっかりしていれば必ず戦争に勝てるものなのか?

 【回答】
 運の要素もあるという.

 以下引用.

 戦略学などを勉強して,やはりむなしくなることがあります.
 それは,「いくらものすごい戦略を持っていても,運のいい奴には絶対勝てない」,ということです.

 それは東洋式の考え方で考えれば一目瞭然
 東洋学では,昔から天・地・人という三つの階層(イメージ)というものがあります.
 この個々の捉え方については色々な考え方があるのでくわしくは語りませんが,戦略というのは,主に
「地と人」
の部分で最大限に準備すること,と考えていただければわかりやすいでしょう.

 ところが「天」という部分は,実は個人の努力だけではちょっと動かせない部分ですね.
 国際関係論でいえば「サードイメージ」とい国際関係の状況であり,経済学でいえばマーケットの動きといえばわかりやすいでしょうか.

 この天というのを,もっと単純にいえば「運」というか「時勢」ということにもなります.
 数々の戦いの歴史などを考えて見てもおわかりの通り,たまたま運よく勝ててしまった,ということは本当にザラです.
 戊辰戦争や関が原の戦いなどの天下分け目の決戦などでも,ほとんど運としか考えられないような紙一重の差で勝負がついたという例はいくらでもあります.
 これは個人で考えてみてももそうです.本当に運がいい奴には,いくらこっちが頭がよくても絶対に勝てません.
 「天」もしくは「時勢」が味方している方には,人間は勝てないようにできているからです.

 つまり戦略を越えるのは「運」なんですね.
 戦略は運に勝てません.

 だったら元々戦略など考えなくてもいいじゃないか!というのもわかるのですが,そういうわけにもいきません.
 「天」だけにすべてを任せて,「地と人」を全く用意しなくても勝てるというわけにはいかないからです.

「地政学を英国で学ぶ」,2005-08-22 09:41

 特に,希望的観測と現実とを混同し,結果的に「運任せ」になるような戦略を立てることになる場合があるので注意.


 【質問】
 天地人の要素とは何でしょうか?

 【回答】
 単純化すればこんなもん.

 天→天の時.
 何か物事を行うとき,それが時節にあっているかどうか.
 たとえばろくな冬季装備もなしに冬戦争を戦ったソ連軍.凍死者続出,補給断絶で勝手に消耗.

 地→地の利.
 その土地に関する情報をきちんと得ているか,また有利な地形を占めているか.
 日本海海戦のように受け手が有利になるのが軍事の常識.

 人→人の和.
 自分たちがきちんと結束しているか,また意思疎通が出来ているか.
 内部抗争しているような軍隊が勝てるはずがない.
 現在で言えば世論もこれに含まれる.これに失敗した例がベトナム戦争だ.

 出典は忘れたが,多分『孫子』か『韓非子』あたりじゃなかったか.


 【質問】
 地政学って地理の授業とはどう違いますか?

 【回答】
 地政学というジャンルは政治学にあってだな,特にアメリカが何故西進政策を取ったかとか,第二次大戦で枢軸国が何故南北に勢力を広めたかとか,歴史に関わる部分も多いと思う.

 そして車の生産が産業の○%だからここは×国,みたいな問題が主流の受験地理は,自然科学とは全く別種の学問だと思うんだけど.
 あれは,"地理"というより産業マップ作成学だよ.

世界史板
青文字:加筆改修部分

▼ 大学で地理を専攻している自分の意見が参考になれば,と思います.

 一方,大学で地理を専攻となると,高校地理レベルの「産業マップ作成学」とはやや異なります.
 産業だけをやる訳でもないので. まぁ,大して変わらないといえば変わらないんですけどね.

>そして車の生産が産業の○%だからここは×国〜

というのは,専攻となると逆にあまり触れません.
 専攻ともなると大抵は,何故それがここで発達したか,というより深い方向へ移って,時代を追って交通の発達などの面を考慮しながら核心に迫っていく…というのがお決まりの流れです.
 専攻だから当然なんですが,中学・高校で習うものとは全然違うと解釈されても良いかと.
 物好き以外はお受験地理で終わらせておくことを,強くお勧めします(笑)

 それから,地理は「過去から未来を予測する」ということは,全くと言っていいほどやりません.
 あまりアテにならない記憶で恐縮ですが,教授の論文でもやらない人が多かったと記憶してます.
 地理は「起きている,もしくは過去に起こった地域の事象」なので,未来について触れる必要がないのです(ゼミ教授に拠る).

 但し,人口推移予測などは場合によってやりますけど,それは統計学でもやりますから,書くことのほどでもないでしょう.
 最後に学部生から言わせてもらえば
「地政学やりたきゃ,地理なんて絶対に専攻すんなよ」
と.

 尚,うちの大学を前提で書きました.
 他大学の地理専攻の場合は違うかもしれませんので,悪しからず.

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青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ドイツ地政学はモンロー主義からどんな影響を受けたのか?

 【回答】
 ドイツの地政学者たちは,アメリカのモンロー・ドクトリンを研究,自分たちの理論の参考にしたという.
 アメリカも太平洋に到達するまではランドパワー国家だったわけで,この頃のアメリカの拡大政策とドイツのリーベンスラウムは,共通するところがあるという.
 ちなみにモンロー・ドクトリンは,ミアシャイマーも自身の理論の中で重要視している(『大国政治の悲劇』第七章を参照のこと)のだとか.

 詳しくは「地政学を英国で学ぶ」,2008-07-06 06:56付を参照されたし.


 【質問】
 北極を巡る軍事的状況は?

 【回答】
 北極海には良漁場としての価値があり,また,北極の海底には,世界の未開発の石油や天然ガスの22%が埋まっているため,ロシアは砕氷船を18隻も整備し,開発に大きな関心を寄せている.
 この地帯の他の諸国が常時保有する兵力より数倍上回る,非常に多くの空軍部隊もロシア軍は駐屯させている.
 また,カナダも大規模な軍事演習を行い,北極圏の北西航路の主権を主張,通過する船舶に対しても事前の届け出などを求めているのに対し,米国は航路はオープンだと言い続けてきている.
 北極海ルートは,西ヨーロッパと東アジアとを結ぶ最短のコースであり,地球温暖化によって休みのない通年航海が可能になることが期待されている.
 しかしカナダが砕氷船を6隻保有するのに対し,米国は沿岸警備隊所有の4隻,しかも,常に北極海域で活動できるのは1隻しかないという.
 さらにノルウェーも北極圏問題に関心を寄せており,これに関して日本との相互協力関係を強化し,両国間で対話を深めていることを歓迎している.
 国際的枠組みとしては北極評議会があり,ロシア,アメリカ,カナダ,ノルウェー,デンマーク,フィンランド,スウェーデン,アイスランドの北極圏沿岸国8ヶ国が,これに参加している.

 【参考ページ】
http://globe.asahi.com/feature/081006/02_3.html
http://jp.rian.ru/politics/20080516/
http://www.norway.or.jp/Embassy/ambassador/ambassadors_note/dec2009/
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromichit1013/59157285.html
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/090423/33442.html

【ぐんじさんぎょう】,2010/08/14 20:40
を加筆改修

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 離島を巡る争いで,資源以外での戦いが行われたケースはありますか?

 【回答】
 マイミクのzyesutaさんが,久しぶりにブログを更新されました.
 なかなかの内容で,「飯三杯いける記事」だと思ったぐらいです.
魚や離島をめぐる戦い:リアリズムと防衛を学ぶ

 この離島を巡る争いでは,南沙諸島紛争や尖閣諸島紛争,北方領土紛争,竹島紛争,フォークランド紛争などが挙げられていますが,中でもフォークランド紛争は特異のケースと言えるでしょう.
 これらの離島は程度こそあれ,本土(日本本土,中国本土,韓国本土など)と 近いケースがほとんどですが,フォークランドは英本土よりも遠く,むしろアルゼンチンに近く,
「何であそこにイギリスの 植民地があるのだろう?」
と疑問に思った人も少なくありません.
フォークランド紛争 - Wikipedia

 フォークランドは当初は,アルゼンチンの宗主国・スペインが占領,後にスペインからアルゼンチンに引き継ぎでアルゼンチン領となりましたが,フォークランドにはイギリス人のジョン・デービスが最初に発見したという説もあり,イギリスは以前からこれをもってフォークランドの領有権を正当化していました.
 そして当時のアルゼンチン統領・ロサスが,フォークランド海域でアメリカの捕鯨船が拿捕されたのをきっかけに,アメリカが海兵隊をフォークランドに送り込んで占領.
 1833年にはイギリスが引き継いで占領し,イギリス領となりました.

 その後,アルゼンチンは自由主義者が政権を握り,領土問題は棚上げされましたが,1982年にアルゼンチンの 軍事政権のガルチェリ大統領が就任すると,当時のアルゼンチンでの左翼反体制派抹殺作戦「汚い戦争」や,経済政策の失敗での政権批判の目をそらすため,フォークランドに軍部隊を侵攻させました.
 その後はどうなったかは,御存知の通り.
 このように資源だけではなく,政権維持のために離島に侵攻するケースも後を絶ちません.

 竹島問題も元はと言えば,韓国の李承晩政権の李ラインを設定した事から始まりましたが,李政権が当時の韓国独立した時の初代大統領とはいえ,その独裁体制と朝鮮戦争による国内の困窮から,国民の不満が高まっており,国民の目をそらすために竹島を不法占拠したという話もあります.
外務省: 竹島問題の概要

 ところで,このフォークランド紛争を調べていておもしろかったのは,当時のアルゼンチンの軍事政権は反共右翼政権であったのにも関わらず,ソ連から情報支援を受けていたという事実があったことです.
 ソ連は1979年に,アフガニスタンに侵攻.
 アメリカを含む西側は穀物禁輸措置を取りましたが,右翼軍事政権下にあったアルゼンチンとウルグアイは,それに追従せずに,ソ連に穀物や牛肉を輸出し続けました.
 アルゼンチンにはモントネーロスなどの反政府ゲリラが存在し,軍部が鎮圧に苦労したのに,何故かそのゲリラを支援しているのかも知れないソ連との友好に踏み切るとは,実に興味深い話です.
 おそらくアメリカが,フォークランド紛争では中立を宣言しながらも,イギリスにスティンガー携帯型地対空ミサイルを供与したのも,そういう背景があったからかも知れません.
ソ連情報組織の支援があった フォークランド紛争の内幕:memories on the sea 海の記録

 さらには同じ反共軍事政権のチリが,イギリス寄りの姿勢を見せたのも,アルゼンチンとソ連との関係を知っていたからかも知れません.

 南米の軍事政権は,ブラジル型反共主義的官僚主義的軍事政権と呼ばれていますが,反共の割にはアルゼンチンみたく,ソ連に穀物を売ってソ連から情報を得ていたり,ぺルーのようにソ連から武器を購入していたり,ブラジルやチリのようにソ連に敵対しているからと,中国と国交正常化や関係維持を保ったりしていました.
 もっとも中国にとっては,台湾に寝返るぐらいなら,反共軍事政権でもいいというリアリズム的発想もあったからなのでしょう.

 だとしたらブラジル・アルゼンチン・チリ・パラグアイ・ウルグアイ・ペルー・ボリビアの軍部の情報部による反体制派抹殺の共同作戦「コンドル作戦」も,本当に機能していたかどうかもちょっと疑問なわけですが・・・.
 実際,コンドル作戦ではチリ軍事政権の秘密警察DINAと,アルゼンチンの軍事政権の諜報部だけが頑張っていたような気も,しないでもないのですが.

バルセロニスタの一人 in mixi,2010年07月06日10:53


 【質問】
 モラルポリティークとは?

 【回答】
 ある国に対して力の弱い側の国が,強い国に対抗するために,ことさら自国の「道義性」と強い国側の「モラルの欠如」を痛烈に批判する,というもの.
 批判された側にとっては,「逆に批判しかえす」というのが最も効果的な手段になる.
 この戦略の弱点は「国家が本当の力をつけるまでしか有効ではない」,つまり旬が短いということだという.

 以下引用.

 〔略〕
私の周囲でもインドの戦略面を研究しようという人間がいるのですが,このインド研究で最近注目を浴びているのが「モラル・ポリティーク」というコンセプト.
 これは元々インド研究の学者たちの間でビスマルクで有名な「リアル・ポリティーク」という概念から借用して,インドが核兵器を手に入れるときに使った,「道徳・倫理性」を全面的に押し出した政治外交をあらわす概念です.
 最近ではフォーリンアフェアーズのいくつかの記事でも少し記述がありましたっけ.

 具体的にどういうときにこの「モラル・ポリティーク」が実践されるのかというと,たとえばある国に対して力の弱い側の国が,強い国に対抗するために,ことさら自国の「道義性」と強い国側の「モラルの欠如」を痛烈に批判する,というものです.
 もちろんこれのわかりやすい例が,中国と韓国の日本批判です.これは完全なる「モラルポリティーク」の活用例ですね.
 中国・韓国の場合は日本の戦争責任をことさら重視することによって「日本はダメな国だ!」ということを批判するわけですが,実はこうすることによって自国を有利に立てるという作業も同時に行っているわけです.わかりやすいですね.

 「我々は被害者なのだ!」と声を大にして批判するというのはけっこうなんですが,相手を批判している人というのは,人間一般の心理として
「じゃあ,この人は批判しているんだから正しいことをしているんだろうなぁ」
と見られがちになってしまうのです.
 単純にいえば,このような「批判したもの勝ち」という戦術を使うのが「モラルポリティーク」の最大の特徴なのですが,一般的に批判された側がどうするかというと,「逆に批判しかえす」というのがとりあえず最も効果的な手段になります.

 だから日本政府は「北朝鮮拉致」や「中国の人権問題」というところを必死についていこうとしているわけなんですが,どうにもこのカウンター攻撃は弱い.
 一番の問題は日本政府にガッツがないということにつきるんですが,この「モラル・ポリティーク」,弱点が一つだけあります.
それは「国家が本当の力をつけるまでしか有効ではない」,つまり旬が短いということなんですな(笑

 そういえば先週,江沢民が「日本に対して歴史カードを永遠に使い続けろ」という指示をしていたことがネットのニュースに書かれておりましたが,これも「モラルポリティーク」の典型です.
 しかし江沢民は偉い.なぜなら愛国的国家指導者というのは,必ず国益を考えてこういう指示を行わなければならないからです.私が江沢民だったら,間違いなく同じことを言っていたはずです(笑
 日本は核兵器を持っていないので,そういうところで中国に対してネチネチと「ソフト・バランシング」していくしかないわけなんですが,そういう意味で私がいま日本の首相だったら,「中国の人権問題を永遠に追求せよ」と言いますね(笑

 脱線してしまいましたが,とにかく「モラルポリティーク」というコンセプトにはこれから注目です.

「地政学を英国で学ぶ」


 【質問】
 21世紀の世界は,どの方向に向かうのか?

 【回答】
 はっきりとした結論を導き出すのは不可能だが,先進国の歴史を振り返れば,ある程度理解はできる.

 まず,19世紀の初頭に第1次産業革命に伴い,製粉・交通に蒸気を使用することによって,経済・社会・政治に強力な影響を与えた.
 これについて,ナイ教授は以下のように述べている.

--------------------------------------------------------
 生産,労働,生活条件,社会階層,そして政治権力のパターンが変容した.
 工場がますます複雑になり潜在的には危険性を増すにつれ,読み書きのできる労働者が必要になり,公教育が台頭した.
 また,運河や鉄道といった必要なインフラ整備のために,補助金が支給された.
--------------------------------------------------------

 20世紀初頭には,電気・化学合成・内燃機関といったような「第二次産業革命」が起こり,第一次と同じように,政治・経済に大きな影響を与えた.

 圧倒的な農業国だったアメリカは,工業化された都市型の国に変化した.
 1890年代には,殆どのアメリカ人は農業の従事者か使用人であったが,その30年後には,大多数が都市で生活し,工場で働くようになった.

 都市労働と労働組合の重要性が増すにつれ,社会階層と政治的な対立の軸も変化した.

 さらに,これによって,またしても政治が変質したとナイ教授は述べている.

--------------------------------------------------------
 そして再び,時差を伴って政府の役割も変化した.
 超党派の革新運動によって反トラスト立法が成立し,食品医薬品局の前身による初期の消費者保護規制が生まれ,連邦準備制度理事会による経済的安定がもたらされた.
 アメリカは世界政治の大国の地位を獲得した.
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 これを見ると,次に起こる「第三次産業革命」も同様に,経済,社会,政治,そして世界政治に影響を与えるであろうという予測も可能である.
 21世紀の世界政治における要因を理解する上で,こうした歴史的な類比は有益だとナイ教授は分析している.

--------------------------------------------------------
 経済と情報のネットワークは,政府よりも急速に変化してきた.
 主権や権威に関する政治的尺度は,未だに同様の規模に達していない.
「脱工業化社会に,とりわけ,それへの移行管理に,最優先の社会学的問題がひとつだけあるとすれば,それは規模の管理である.」
 より簡単に言うと,世界政治の基本的な構成要素が,新しい技術によって変容しつつあるのである.
 もし我々が国民国家のハード・パワーにだけ着目すれば,新たな現実を見失ってしまう.
--------------------------------------------------------

まとめ

・21世紀の世界政治を類推するには,過去の先進世界を振り返ってみると参考になる.

・二度に渡る産業革命は,社会・政治・経済に大きな影響を与えた.

・国民国家によるハードパワーにのみ着目すると,新たな現実を見失うこともある.
(ただし,ナイは他の項目では,国民国家の必要性は述べている)

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第8章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 21世紀初頭の国際秩序の姿がどのようになるかは,予想可能か?

 【回答】
・冷戦崩壊後において「新しい世界秩序」は定義が曖昧であるがため,説得力に欠ける.

・秩序という言葉自体も,見方によってさまざまに変化する.

・単独の考えでは,今日の紛争原因を探るのは不可能である.

***

 冷戦が終結したことにより国際システムに変化がおきたのは事実.

 だが,それをもって「新たな世界秩序」の幕が開けるというのは,「秩序」という言葉をどう捉えるかで違ってくるため,説得力が薄い.

 ナイ教授は,リアリスト・リベラリスト・コンストラクティヴィストの三つのアプローチから以下のように述べている.

-------------------------------------------------------------------------
 リアリストは,無政府状態の世界では,つまり,自助努力と軍事力以外に秩序を決定付けるものが存在しない世界では,国家が権力と安全を追求しようとするために戦争が起こると主張する.
 この考えでは,"秩序"は主として国家間のパワーの構造あるいは配分を意味する.
 リベラル[国際協調主義者]やコンストラクティヴィスト[構成主義者]は,紛争とその予防はバランス・オブ・パワーのみによって決まるのではなく,国内構造や,国家の価値やアイデンティティ,文化,さらには紛争解決にかかわる国際機関によっても決定されると主張する.
 リアリストとは対照的に,リベラルは,国連のような組織は期待感の安定を図ることで紛争予防と秩序の形成に寄与し,ある種の継続性と現在の協力が将来向く応えると言う感覚を生み出すのだと主張する.
 このため,リベラルにとっての秩序は,制度に加え,民主主義や人権などの価値とも結びつけれらるのである.
 最後に,コンストラクティヴィストは,いかなんる秩序でもさまざまな成員が競合しており,価値中立的ではありえないことを想起させる.
-------------------------------------------------------------------------

 この他に「秩序」を悪意的に解釈する人たちも存在する.
 アメリカのパット・ロバートソンとか,フランスのジャン=マリー・ルペンなどの排外主義者やナショナリスト集団では「新しい世界秩序」とは,世界を支配しようとする政界・財界のエリートの陰謀である.
(正直,自分で書いててMMRネタとしか思えん)

 この考え方を元にすると,ウォール・ストリートやロンドン,東京の金融市場と連携して,他者の犠牲の上に私服を肥やす集団が存在し,彼らが世界を牛耳ろうとしていることになる.

 また,イスラム原理主義者の中には,この「秩序」とは西洋社会が非西洋社会を支配しようとしている考えに他ならないと思うかもしれない.

 上記のように,秩序に関していろいろな概念があるため,「新しい世界秩序」の定義を作ることは困難となる.
 これらの考えは単独では,いずれも紛争の原因を理解するには不十分だからだ.

 ナイ教授は以下のように分析する.

-------------------------------------------------------------------------
 長期的な社会変化が国家主権の現範を侵食しつつある現在,リアリストがバランス・オブ・パワーを強調することは必要ではあるが,それだけでは十分ではない.
 主要な自由民主主義国家の間に平和が浸透しているという見方は正しいが,大国も含めて多くの国が自由民主主義国家ではないため,万能の解決策ではない.
 冷戦期における2極構造は,ある種の安定をもたらした.
 冷戦期に第三世界での紛争は増大したが,アメリカ,ヨーロッパ,日本の間の経済摩擦は,ソ連の軍事的脅威という共通の懸念のため抑制され,また東ヨーロッパでの悲痛な民族分断もソ連の存在によって押さえつけられてきた.

 2極構造は崩壊したが,紛争は続いている.
 けれども,それは異なる原因によるものである.
-------------------------------------------------------------------------

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


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