あなたに賭けてみようと思った

それはあなたを初めて見たから

 

あなたに賭けてみようと思った

それはあなたが優しいから

 

私は―――あなたに賭けようと思った

それは間違いじゃないと信じたい

 

 

出張!奇跡を運ぶ道化師

 

 

「―――はぁ、はぁ、はぁ!!」

私は興宮から雛見沢にようやく着いた。

途中何回も何回も足の豆が潰れ、何回も何回も歯を噛み締め、何回も何回も……。

車の行き交う交差点を通り唸るような長い坂道を通り舗装されていない道を通り、それでも私は止まらない。

ただ……ただ、沙都子の無事を信じ走り続ける。

「梨花……来ましたのですか」

雛見沢に入りデコボコの道を走っている私の隣に並行して何時の間にか羽入がいる。

私は足は止めずに羽入に向け無理矢理苦しい息を飲み込みながら問いかける。

「沙都子……は? さ、沙都子は…どうしたの!?」

私の問いに、羽入の顔は酷く悲しげになる。

……その瞬間私は現実を認めた。

決して止まるはずのない足が止まる……。

決して折れないはずの心が停止する……。

決して諦めないはずの目から……私は涙した……。

「さ……、さと……こ」

ごめんなさい。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

呟きながら私はその場に蹲る……、全ては私の甘さから出た事だ。

新しい出来事が起こる度に私は一挙一動に幸せを感じ過ぎて……沙都子から目を離した。

祐一にばかり目が行き意識が行き……みんなを忘れた。

全ては……私が原因だ。

「―――梨花、梨花……もうこの世界は諦めましょうです」

羽入が高揚なくただ呟く……。

もう諦める――か、それもいいのかもしれない。

沙都子がいない未来は私には必要ない、祐一が私だけを未来に連れて行く存在だったとしてもそれは……駄目だ。

みんなが……私の愛する人々が全員この惨劇を超えないと――駄目なのだ。

「流れるままに……流されるままに運命を流れ……傍観者となればその悲しみも超えられるのです」

流れるまま……か、確かにこんな幸運はもうないかもしれない。

祐一はこの世界だけの存在なのかもしれない。

私達が"繰り返してきた世界"にはもう相沢祐一という存在はいなくなってしまうかもしれない。

―――ならば、そんな幸福な世界で失敗したのならもう期待するのは……やめようか。

もう沙都子は……救えないよ。

「………ない」

「梨花?」

それでいいの?

救えないんだ、別に……もういいじゃないか。

でも……終わってない。

終わったよ、もう……。

でも、まだ世界は終わってない。

いくら涙が出ようと、いくら心が折れようと……まだこの世界は終わっていない。

「あき……らめ……ない!」

「………梨花」

―――ならば、諦める事などできはしない!!

それに今回は祐一がいる。

そうだ……最初に私は思ったじゃないか―――彼を信じよう…と。

「絶対に……私は諦めない!!」

諦めるのは世界が終わるときでいい。

泣くのは世界が終わるときでいい。

 

 

"―――世界はまだ終わってはいない、終わっていたのは……私の心の弱さのみだっ!!!"

 

 

「あれ? 梨花ちゃん……?」

そう、彼がいる限り……私も頑張れる。

私が信じた道化師が―――この青空の下、笑いながら私を見てくれている限り。

 

 

 

「圭ちゃん、ビンゴだったよ!」

そう言って魅音は俺の肩をバシバシ叩く……、痛ぇよ。

「で? 見つかったのか?」

「うん! 取り合えずはね、……でもこれ以上深く関わったら園崎家に気づかれるね」

……ちっ!これからが本番だっていうのにな!

これが今の限界……か、でも一日の成果としてはまだいい方だと思う。

「葛西さんにも今回はかなり無茶してもらったからね、後でお礼しないと」

「その時は俺もつき合わせろよー? 葛西さんって人には感謝しても感謝したりないぜー」

「もっちろん! 圭ちゃんのみとは言わず部活メンバー総出で労ってあげるよ!!」

「―――その時は沙都子も一緒だな」

「―――当然でしょ? その為に私達はここにいるんだから」

そういって俺と魅音は軽く視線を合わせながら笑う。

……俺達は俺達にしか出来ない事をする。

例え仲間に冷たい目で見られようと――今はみんなに会えない。

俺達は裏方で支えるのが仕事だ……、決してまだ表には出てはいけない。

だから……俺達が裏にいる間………沙都子を頼みます、相沢先生。

 

 

 

「物量作戦……ですか?」

ここは雛見沢神社の普段は会議などを行う為の小屋だ。

そこに俺、梨花ちゃん、レナの3人で円陣のように座っている。

魅音と圭一はどこにいるのかは知らないが取り合えず一時戦線を離脱している。

―――彼らは彼らにしか出来ない事をしている、そうレナから聞いたから心配する事はない。

俺達は俺達が出来る事をするだけだ……。

「そうさ、沙都子ちゃんを救う手が思いつくだけでも3手、その全てをまず試す」

「………でもその案は確実じゃない、ですね?」

「あぁ、でもそれはしょうがない……だから今回は量で勝負さ」

もうこうなったら質に拘るより量に拘る、でも質をそれほど落とす事も出来ない。

……はっきり言って理想論だが俺は出来る事を全てやりたい。

「警察、児童相談所、――そして雛見沢の村人達全てに語りかける」

レナが静かにそういった……その瞳にはもう先ほどまでの迷いはない。

出来る事がある、出来ない事は……ない。

信じろ、自分を――奇跡を起こす、世界にとっては災いの元であるこの身を。

それに、例え世界を巡る世界が一つ増えようと俺は――最悪"それ"を使う。

それはもう決めた事だ……やり直せる俺がやり直さなくて誰がやり直すっていうのか。

「この狂った世界をぶち壊す、梨花ちゃん……手伝ってくれるか?」

「――――――!?」

今の俺の言葉にどこか思うところあったのか梨花ちゃんの顔がみるみる内に変わっていく。

憑き物が落ち、どこか晴れ晴れとしたような顔になる。

「………もちろんなのですよ、もう惨劇は終わらせる――私達の力で」

そう言った彼女の顔はどこか大人びていて――とても頼もしい仲間の顔だった。

 

 

―――役者は揃う。

沙都子を救いたい者がそれぞれの道を歩み始める。

全ては……北条沙都子という少女を抗えぬ悲劇から救う為に………。

 

 

あとがき

彼女の為に出来る事……それを自覚した仲間達。

そして一人一人がそれぞれの自らが出来る事を行う為に今、みんなの心は一つになる。

皆の想いはただ一つ、北条沙都子を救い、ただ……それだけを想って。

―――っというわけで「幕壊し編」、十四話完成です!!

テスト勉強……?なにそれ?(´∀`)

明日も頑張り更新目指しますよー。

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