戦う力

守る力

与える力

拒絶する力

 

―――あなたはどの力を欲していますか?

 

 

出張!奇跡を運ぶ道化師

 

 

―――忘れていた。

そんな後悔に俺は包まれながらもなんとか誤魔化そうとするが彼女の目は鋭くこちらを見据えている。

「……祐一、あなたは何者?」

そう厳しい口調で俺を責めてたてるのはこの世界の居候先である古出家家主、古出梨花ちゃん。

その彼女の手にあるのは俺の……携帯電話。

「………えっと、これはですね? 色々と言えない理由とかがありましてね?」

もはや四苦八苦しながらも説明できないもどかしさが憎らしい。

……というか隠していた事実よりこの少女にこんな顔をされる事が一番辛かった。

何でこんな事になったのか、それは今朝の事だった……。

 

 

俺は結局、朝になる頃に古出神社へと帰ってきた。

外は騒がしいほどに蝉が鳴き、新たな朝の訪れを伝えている。

「ただいま……」

今だ晴れない疑問を抱きつつも、結局は今考える事ではないと思い気持ちを切り替える。

―――そう、今考えなくてはいけない事は一つ、沙都子ちゃんの安全だけだ。

「祐一、朝の散歩ですか?」

俺の帰宅の声を聞き、梨花ちゃんがトテトテと花柄のパジャマ姿で俺を迎えてくれた。

う〜ん、なんか可愛い妹がいたらこんな嬉しい気持ちになるんだろうな。

栞とかじゃこの可愛さはでない、あいつ等だったら「祐一さーん!」っていって突っ込んでくるからな。

多分あれはあゆ直伝の体当たりを真似してるんだろう、しかしその度に腹を痛める俺の気持ちも少しは考えてくれと思う。

「うん、ちょっとね、一人で考えたい事があったから」

「……沙都子の事ですか?」

「あ、うん……まあ」

本当は違う事を考えていたがここは誤魔化しておく。

「でもあまり無理は駄目なのです、ちゃんと睡眠は取って下さいなのです」

梨花ちゃんはメッ!っと軽く俺の額をデコピンで弾く。

……梨花ちゃんと一緒にいるとさっきまでの思案が馬鹿馬鹿しくなるほど心が落ち着く。

「それでは祐一も反省したと思うので朝ごはんにしましょうです♪」

そういって梨花ちゃんはまたトテトテと居間に戻っていく。

「あ、俺も手伝うぞ」

俺がそう言うと梨花ちゃんは不思議そうな顔をしながらこちらへと振り返り、

「? 祐一は料理出来ますですか?」

っと言った。

………俺が料理が出来るかって?

「………大人しくご飯が出来るまで待ってます」

一瞬で挫折した。

水瀬家では家事全般を秋子さんがほとんど一人でやってたからな。

たまに名雪や真琴も手伝っていたけど俺はあまり手伝った事はない。

暇な時俺が「手伝いましょうか?」と秋子さんに聞くと「大丈夫ですよ」と言われ一蹴されてしまう。

………あれは手伝って欲しくないというより遠慮しているといった所か。

うな垂れる俺を見て梨花ちゃんは苦笑しながらも優しい声で俺を励してくれた。

「祐一は祐一にしか出来ない事がありますですよ、そしてこれはボクにしか出来ない事なのです」

その通りだ、梨花ちゃんは梨花ちゃんにしか出来ない事があるんだ。

そして俺は……俺にしか出来ない事をやるしかない。

「だから祐一は気にしなくていいのです」

「―――あぁ、わかった、俺は俺にしか出来ない事を……」

ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃちゃ〜ん♪

「……あ、あれ? あぁ、携帯か、今まですっかり忘れてたな」

俺はズボンの中に入れてあった携帯電話を取り出す。

買った時から一回も変えてない有名なドラマの着信音が部屋の中に響く……。

むぅ、中々いい台詞の途中で邪魔する気の利かない輩は誰だ。

確かマナーモードに設定したはずなんだけど何時の間にかとけてたみたいだな。

……ん?待てよ?

「祐一? それ、なんですか?」

―――携帯電話ってもしかしてかなりやばくないか!?

 

 

という事でその後梨花ちゃんに携帯電話の説明を求められている今の図というわけだ。

「祐一、説明してくれますですか?」

そういって俺の携帯電話を梨花ちゃんは手に持ちながら俺を睨む。

怖い、俺は初めて目の前の少女を見てそう思った。

何故かは知らないけど彼女は本気で怒っている……。

見慣れない機器を見て驚いている……というよりは見慣れない機器を持っている俺に驚いているみたいだ。

「それは……う〜ん……」

なんと説明すればいいのかわからない。

気づかなかった俺も俺だがここは昭和58年、つまり……俺の世界より過去の世界だという事だ。

もちろん携帯電話などない、そんな世界なのだ。

つまり、やばい状況だっていう事。

「祐一……あなたは本当は何処から来たのですか?」

彼女は気づき始めているんだろうか?

―――俺の異常性を、"この世界にはいるはずのない人物"だということを。

「お、俺は……」

本当の事を言うべきなのか?

俺はこの世界の住人じゃない事を、俺は……世界を乱す原因だという事を。

……言っても大丈夫なのだろうか?

アレイスターからはその事を聞いていない、梨花ちゃんに影響はないんだろうか?

そしてその事を話して……梨花ちゃんに嫌われないだろうか?

「話してくれませんか? ……ボクを、いえ、私を信じてはくれないんですか?」

信じてる、信じてはいるが……話していいんだろうか。

「……少し、時間をくれないかな?」

 

 

俺はまたもや一人で外に出る。

梨花ちゃんは少し不満そうな顔をしたがちゃんと時間をくれた。

「………はぁ〜、失敗したなぁ」

梨花ちゃんから返してもらった携帯をいじりながら愚痴を漏らす。

自分が悪いんだけどやっぱり電話をかけてきた相手にちょっと恨みを抱いてしまう。

………あれ?今なんか…引っかかったぞ?

「なんだ? 何がおかしいって思ったんだ?」

携帯が俺のズボンに入っていた事?

いや、違う……、そうじゃない。

―――そうだ!なんで"この時代"で携帯の着信が来るんだ!?

「………着信は、非通知? くそ、なんだってんだ!?」

携帯と言うのは会社がなくちゃ機能しない。

まだその会社が出来ていない場合、この携帯が鳴るはずがないのが普通なのだけれども。

「それでも……携帯は鳴った」

ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃちゃ〜ん♪

俺の疑問に答えるようにまた携帯が鳴り出す。

―――着信はまた非通知だ。

俺は意を決して携帯のボタンを押す、そして緊張の面持ちで耳に携帯をつける。

「……もしもし?」

『相沢祐一か? 私だよ、アレイスター・クロウリーだ』

「―――アレイスターッ!?」

電話の主は俺をこの世界に送った張本人、アレイスター・クロウリーだった……。

 

 

あとがき

そうですよ、ひぐらしは昭和の出来事なんです。

携帯電話などは存在しない世界なのです。

近頃は「ロード★ナイツ」にかかっりきりですがこちらも頑張ります!

少し書き直し済み、う〜ん、もう少し時間がかかりそうですね(汗)

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