彼女は言いました。

「罪人は罪人であるが故に救いはない、永遠の輪廻から外された存在なのだ」

彼は問いました。

「相沢が何をしたってんだよ!」

彼女は答えました。

「しれたこと、貴様も知っているだろう、あの者の特殊なる力――奇跡の力を」

彼はまたも問いました。

「奇跡……そんなものがあるからってあいつの何が悪いっていうんだよ……」

彼女は答えました。

「あの者、相沢祐一は知らず知らずのうちに理を破壊していったのだ、――もうあの者はこの世界にはいられない」

――物語りの幕はもう、開きかけていた。

 

 

出張!奇跡を運ぶ道化師

 

 

結局北川は今日学校を休んだ。

さっきの出来事があったために少し神経が過敏になっているのか不安が広がる。

……あいつ、本当になんかあったんじゃないだろうな。

「あれ? 相沢くん、今日は名雪どうしたの?」

HRが終わりまだ来ていない名雪を心配して香里が話しかけてくる。

「あぁ、あいつはただの遅刻さ、今日は色々あって置いて来たんだ」

「……まあ、名雪だしね」

さすが名雪の親友、あの寝坊助の寝起きの悪さを体験しているためか俺を非難してこない。

「それより北川だよ、あいつどうしたんだ? 休むなんて珍しい……」

「そうよね、北川君が休むなんて……今日は雪かしら」

やめてくれ、さすがに夏にまで雪は降って欲しくないぞ。

しかしこれで香里も北川の所在を知らないということか……、仕方ない。

「今日学校終わったらお見舞い行こうと思うんだけど、香里はどうする?」

「北川君の? 構わないけど……部活はいいのね?」

あ、そうだった……、今日は香里の部活見学の日だ。

これを逃したらもうチャンスはない、香里は無言でそう言ってるかのように笑った。

「あ〜、まあ仕方ないさ……今回は潔く諦めるさ……」

「そんなに未練たっぷりの顔で言われても困るんだけど、ほら……そんなにふくれないでよ」

香里は苦笑しながら俺の頬を軽く人差し指でつつく。

……何かこの頃香里にペースを乱される事が多くなってきた気がする。

こう、根っからのお姉ちゃん体質というのか……多分この行動も栞に対して行っているものの一つなのであろう。

うむ、佐祐理さんとまた違った甘えさせ属性とみた、こう…いつもは厳しいけど偶に凄い優しい姉みたいな。

「中々に萌えですな、かおりん」

「かおりん言うな、しかし相沢くんの頬って思ってたより柔らかいのね……」

そうなのか?あんまり自覚はないけど……、よし、それなら比べてやる。

「んじゃ俺も……、お? 香里の頬っぺたも柔らかいぞ?」

「そ、そう? そりゃ女の子だし、男の子よりは柔らかいわよ」

香里は少し頬を蒸気させながら未だ俺の頬をつついている。

対する俺は香里の頬をこう、撫でるようにぷにぷにと揉む。

……なんか知らないが俺も恥ずかしくなってきた。

何故かいつまで経っても頬から手を放さない両者、……心なしか少しづつ顔が近づいていった。

「はいストップ、それ以上やるとお前ら明日の学校中の話題になるぞ」

「うわ!」

「きゃ!」

俺と香里はその声を聞いた瞬間弾かれた様にお互いから離れる、しかし微妙に残念なのは気のせいか?

声をかけてきたのは斉藤だった、あぁ、何かいつもより反応が遅れたのは北川と名雪がいないせいか。

……二人っきりだったら止まってなかったな、確実に。

 

 

「うっし! それじゃあ北川の家に行くぞ」

授業をすべて受けきり放課後になったがやはり北川は姿を現さなかった。

流石の香里も少し心配になってきたようだ。

「仕方ないわね、相沢くん北川君の家どこか知ってるの?」

「任せろ、斉藤に地図書いてもらったから余裕だ」

そういって俺は鞄から地図を取り出す。

この地図には簡単に道路と住宅街を示した北川の家に向かうためにしか使えない簡易地図となっている。

ちなみに今日の英語の時間中に書かせたものだ、書き終わるやら斉藤は「いい仕事をしたぜ」っとまるで職人のように汗を拭っていた。

それが原因で今日斉藤は英語の授業中3回も当てられていた、やつには今度ジュースでも奢ってやろうと思った。

「ほれ、ここだろ? あいつん家」

「……ふーん、北川くんの家って川沿いを歩いてすぐなんだ、意外に近いわね」

香里の言うとおり北川の家には歩いて10分も経たないうちについた。

意外にちゃんとした造りの木造アパートだ。

「それじゃあ行こうぜ? あ、見舞いの品なんか買ってきた方がよかったか?」

「それなら今から私買ってくるわよ、先に北川君の家に行ってて」

「いや、それなら俺が買ってくるよ」

「いいのよ、それに私が先に北川君の家に入ってしまったが故に何か間違いが起きたらどうするの?」

間違いってなんだよ……、病人が香里に勝てる気がしないんだけど。

あぁ、逆の可能性はあるか、北川をこう…絞め殺すみたな?

うわ、やばい……すげぇ現実にありそうな場面だ。

「なんか今凄い不愉快な想像しなかった?」

「イイエ、マッタクシテオリマセン」

めっちゃ怖いです、香里さん。

「それじゃあ私、買ってくるから」

そう言って香里は元来た道へと戻っていく。

どうやら商店街まで買いに戻るみたいだ。

俺は仕方なく先に北川の家に入る事にした……、まあそれは北川が家にいるってことが条件なんだけど。

 

 

ピーンポーン。

これで何回目のチャイムを鳴らしただろうか?

いくらなんでも寝ていてもこれだけのチャイムが鳴れば普通起きる。

いや、名雪と比べたらおしまいだけど。

「あいつ、いないのか……病気じゃなかったのかよ」

しかしならば何故北川は学校を休んだんだろうか?

本気でサボりじゃないだろうな……あいつ。

――見つけた。

「……? なんか今声が聞こえたような」

周囲を見渡す、しかし人影どころか周りにはこのアパート以外音を発する建造物などは見当たらない。

誰かの部屋から漏れたTVの音だろうか?

――大罪人、相沢祐一。

「――――ッ!? 誰だ!」

今確かに"俺"の名前を言った。

TVなんかじゃない、これは明確な俺に対しての言葉だ。

――裁きの時は来た……言い残す事はあるか。

「は……? 何言って……」

こちらの質問にはまったく答える気がないのか"声"はただただ事実を伝えるだけだった。

――ならば、裁きの時間だ、相沢祐一。

「何のことだよ?」

俺は一歩二歩と北川のアパートから後退する、しかし"声"は未だに俺の耳元から離れない。

ちぃ!なんだよ、この声は!!

――懺悔しろ、相沢祐一の転送を始める。

「意味わかんないんだが……、懺悔とか大罪人とかってなんだよ?」

"声"は答えない、俺は更に文句を言おうとしたが続けられなかった。

俺の体が溶けるように足元から消えていったからだ。

「は? ちょ……ちょっと待てよ!!」

――懺悔しろ、この世の全てに、貴様が犯した罪に。

消えていく、俺の体が……!?

「何なんだよ! ちくしょう!!」

体が消える、意識が消滅する。

そして……俺がこの世で見た最後の景色の中には……香里の姿が見えた気がした。

 

 

目覚めた先は白く広がった何もない世界だった。

倒れていた俺の周りにはガラス玉のようなビジョンがいくつも浮かんでいた……。

……それは過去の夢…というより再現といった方がいいだろうか?

そのガラス玉に触れると次々に思い出される過去の出来事、最近の事もあればもう忘れていた過去すらある。

しかしその思い出たちはどれもガラス窓のようにひびが入っていて今にも壊れそうだった。

「なんだ……? これは」

一つの過去を手に取る、それはあゆとの思い出だった。

あゆと出会った商店街から再生は始まっていて終わりはあの学校での出来事だ。

相変わらず……というのは過去の記憶を見ていうのはおかしいがあゆはうぐうぐ言っていた。

最近は新しく高校に入りなおしたらしい、あゆも新しい家で新しい生活にはもう慣れている頃だろうか?

俺はもう一つ別の過去を取る、これは……舞との思い出だ。

今では大学に行ってしまって最近は中々会えない舞、そうだった、あいつとは夜中の学校で出会ったんだっけ。

きっかけは名雪から借りたノートを取りいった事だった。

それから始まる魔物との戦い、そして舞は最後に力を受け入れ今も佐祐理さんと楽しく日々を暮らしているはずだ。

他にも名雪、秋子さん、真琴、天野、栞、香里、佐祐理さんとの過去の思い出が俺を中心に浮かび上がっている。

「……で? こんなものを見せて俺をどうしようってんだ?」

「貴様の罪を悔い改めさせようとしているのだよ、相沢祐一」

先ほどから感じていた鋭い視線、そこには金色の美しい長髪の女神…と呼ぶには目つきがキツイがまあそれなりの美人が立っていた。

「まず自己紹介からしたらどうだ? 俺のフルネームを知っているのにお前の名前を俺が知らないのは不愉快だ」

出来るだけ強気に出てみる、もっともこれは虚勢だ。

……いきなり俺の体を消し去るような危険人物には出来るだけ関わらない方が身のためだしな。

「ふむ、まあいいだろう、私の名前はクロウリー、アレイスター・クロウリーだ」

アレイスター・クロウリー?どこかで聞いた事ある名前だな、この美人さん。

もしかして有名な人か?っということはなんだ、これはTVか何かか……。

それならそうと言ってくれ、この芸人祐ちゃんはどんな時でもカメラがあればフルスロットルだ。

「いいともー」

「…………何を言っているのだ、相沢祐一」

どうやら外したらしい。

いや、そもそも外人さん(?)にはちょっと高度過ぎたのか?

「どうやら現状を認識できてはいないようだな」

「いや、当たり前じゃん!? 俺はいきなりここに連れてこられたんだっつーの!」

説明足らずの拉致事件は酷いと思う。

仲間外れ、とってもかっこ悪い。

「ふむ、それもそうだったな」

蒼眼の瞳が妖しく揺らめく。

クロウリーは一度こちらではなく、俺の過去の方を一瞥しまた俺に視線を戻しながら変わらぬ口調で事実のみを俺に伝えた。

「単刀直入に言おう、貴様は死んだ」

運命の物語は今……扉を開けた。

 

 

あとがき

クロスしてねぇー!(´Д`;)

すみません、今回もクロス出来ませんでした(汗)

取り合えず次回からはクロスになるはずです。

アレイスター・クロウリー、知っている人は知っている"とある有名人"。

知らない人はまだ知らないままでいてください。

決してネット検索とかしないでねー?(ぇ

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