平和な時代は幸せでした

あなたは世界の真実を知らなかったから

 

平和な時代は退屈でした

あなたは世界の出来事を知らなかったから

 

では世界の真実と出来事を知ったとき、あなたはどうしますか

 

 

出張!奇跡を運ぶ道化師

 

 

カナカナカナカナ……。

ひぐらしが鳴いていた、それはもううざいくらいに。

ここは……どこだろうか?見渡す限りの自然、そして畑……めっちゃ田舎のばあちゃん家って雰囲気だな。

取り合えず現状を整理すると俺は白いTシャツとジーパンというラフな格好で道端に座っていた、終わり。

「なあ……これはどういうことだ?」

答える声はなく、どことなく寂しい。

汗が絶え間なく吹き出てくる……あぁ、なんかいい感じに俺の蒸し焼きが出来上がりそうだ。

なんだこの暑さは!まるっきり常夏みたいな陽気だぞ……、いや、本当は常夏いったことないけど。

「とにかく……歩くか」

これ以上ここにいるのも限界だ、名雪に引っ越してきた初日にくらった3時間放置プレイも辛かったこれも辛い。

今回は雪ではなく太陽、しかも迎えは待てども待てども来ない……。

とにかくなんとかしてこの状況をどうにかしなくてはいけないだろう……。

「たく、せっかくならもっと官僚待遇で迎えろっつーの」

今はいないあの美人さんに対し愚痴をもらす、なんでこんなことになったか……それはほんの1時間前の事だった。

 

 

「単刀直入に言おう、貴様は死んだ」

……ケンシロウ?

じゃなくて!えーっと?俺が死んでるって?

……はぁー、ということはここは死の世界かぁ。

「…………って信じられるかぼけぇ!!!」

取り合えずちゃぶ台返し並みにブチギレてみる、中々にいい突っ込みだと自画自賛だ。

しかしアレイスター・クロウリーはそんな俺を見ても未だ無表情を崩さない。

「信じられない? 貴様が信じられないなんて言葉を吐くとはな……、くっくっく……中々面白い事をいう」

「信じられないものは信じられん! 人の体をいきなり消しちゃって変な部屋に連れ込み拉致監禁するやつの言う事なんて信じられるか!」

クロウリーは俺の言葉に不思議そうに顔をかしげる。

その仕草は容姿と相成ってもの凄い似合ってるんだけど今はそんなこといってる場合ではない。

「何を言うか、貴様は世界中の誰よりも"信じられない"事を実践してきただろう?」

「…………世界中誰よりも信じられないこと? なんだそれは」

「9つの"奇跡"……覚えがないわけではあるまい」

――ッ!?9の奇跡……もしかしてみんなの事をいってるのか?

「そうだ、貴様は無意識に世界の事象を自らの都合がいいように変更したのだよ」

「……それはどういうことだ」

「わからないか? 簡単に言うと貴様は予め決められている世界の出来事、つまりは未来を変更したという事だ」

未来の変更?何言ってるんだ?こいつは?

「そしてその事は世界の輪に歪を作り天秤は傾こうとしている」

「……えーっと? つまり何がいいたんだ?」

遠まわしすぎてよくわからん。

「まだわからんか、つまりこのまま行けば世界は崩壊する」

「…………は? 世界の崩壊?」

……やばい、何か凄い理解不能な事言われた気がする。

もしかしてこれはなんらかの宗教勧誘じゃないのか?

ほら、「ノストラダムスの予言」とかいうインチキ宗教みたいな。

「信じられぬか?」

「えっと、あんたの話のどこが信じられるか一から説明してくれると嬉しいかな?」

こういう相手は適当に流すに限る。

その為にはクロウリーの話を一応聞いとく必要がある。

「ふむ、ならば一から説明してやろう……これから話すのは"起きるはずだった事象"だ」

「えぇ、そうですかー」

適当に相槌を打つ、もうこうなったらとことん付き合おうと思う。

「時間軸から言うと貴様の最初に変えた事象の対象者は水瀬秋子、彼女は交通事故にあいそのまま死ぬ予定だった」

「…………何?」

今こいつ、何をいいやがった……?

アキコサンガシヌウンメイダッタダト?

「そして母親の死を知った水瀬名雪は心が死に、そのまま体も死んだ」

「てめぇ……! どこで調べたかは知らないけどそれ以上喋りやがったら容赦しねぇぞ!!」

喧嘩は得意な方じゃないがこれ以上は堪えられない、次何か喋ったら俺はこいつを……

「次は月宮あゆ、彼女は7年間の眠りから目覚めぬまま永遠に眠り続けるはずだった」

「てめぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

俺はクロウリーに向かい拳を握り締めながら走り出す。

しかし、クロウリーに慌てた様子はなく……ただこちらを一瞥しながら右手をこちらに向ける。

そしてただ一言、"声"を発した。

『――その場から動くな、相沢祐一』

「……な!?」

クロウリーが発した言葉にどんな力があるのかは知らない、しかしクロウリーが「動くな」と言った瞬間本当に俺の体は動かなくなった。

まるで体が石となり、動けない事が当たり前の如くその場に足が縫いついてしまった。

「な、何を……しやがった!!」

『――喋るな、相沢祐一』

「……ッ! ……!!! …………!?」

次は声が出ない……、本気でどうなってやがるんだ……?

口は動くのだが声が出ない、何度試してみても声が出ることはなかった。

そんな俺を見てクロウリーは満足そうに右腕を下げた。

「ふむ、これでやっと静かになったな」

「…………」

「さて、続けるぞ……」

何も出来ない……言わせてはいけない事をこいつは言ってしまう。

しかし、俺には何も……出来ない。

「…………、………!!」

悪態をつくが声は出ない……。

「さて、次は沢渡真琴、彼女は自らの持ちうる全ての力を使いその結果存在を消滅させた」

「…………ッ!?」

覚えがある、真琴が高熱を出し、一時的に存在を消滅させてしまった事は知っている。

……同じ経験をしたという天野に教えてもらった事だ。

「そして再び大切な者を失った天野美汐は耐え切れずにものみ丘にて自殺を図る」

「…………」

「まあ結果的にはそれでは死にきれず病院で廃人のように暮らしたそうだ」

真琴が出てきた時点でもう大抵は予測していた事だ。

俺は段々とクロウリーの言葉を信じ始めてしまっている。

ここでないIFの世界、"そういう世界もある"という事では彼女の言葉は信じられる。

……実際に俺が昔予測していた未来と一致していたからだ。

「そして次に美坂栞、彼女は不治の病によってその短い生涯を閉じた」

「…………」

それも……わかる、今でさえ栞の病が治った理由はわからない。

医者でさえ諦めた栞の原因不明の奇病、それが彼女の誕生日に一日で治ってしまったのは本当に不思議だった。

「その結果、美坂香里は後を追うように妹の後を追った、こちらは病院の屋上からの飛び降りだな」

「…………ッ」

今俺は自分を殺したいと思った、香里の話を聞いた瞬間俺は薄情にも「あぁ、やっぱり」っと思ってしまったからだ……。

「次に倉田佐祐理だ、彼女は川澄舞から発せられた「力」によって重症を負いそのまま植物状態となった」

これも……俺が目の前で確認したことだ。

血まみれの廊下、落ちていたアリクイの人形……今も鮮明に思い出せる。

そうか、IFの世界では佐祐理さんは……あのまま。

「そして最後に川澄舞、彼女は知っての通り親友を傷つけた事を悔やみ自らの剣を体に突き刺し出血多量にて死亡」

「………………」

もう、何も言い返す力はなかった。

ここまで"知っている"クロウリーの言う事をもう信じられないと言う事は出来ない。

「……どうだ? 貴様ももう大体理解出来るだろう?」

「…………」

「これは本体起きるはずであった"未来"の話だ」

IFでの話しなら、俺は……理解できてしまう。

もしあのまま運命が変わらなかったら起こっていたであろう事、それは……否定できない。

多分一番近くで見ていた俺だから……わかる事だと思う。

「しかしその未来は起きなかった……何故かわかるか?」

何故か……?そんなものに理由なんてあるというのか?

"そうなったから"じゃないのか?色々な幸運が重なった結果、全員が助かったんだ。

それ以上に理由が必要だっていうのか?

「ふん、不思議そうな顔だな……やはり無意識に使っていたようだな」

無意識に使っている?それはさっきクロウリーが言っていた俺が起こしたとかいう"奇跡"の事なのか?

ありえない、俺にそんな力はないし世界の事象を変えるなんて大層な事をした覚えはない。

「否定するか? それもいいだろう、しかしどんなに貴様が否定しようとこれは事実なのだよ」

「…………」

「そしてその結果世界が崩壊の危機である、それも事実だ」

そんな事言われても俺にはどうにも出来ない、"奇跡"とやらも俺が起こしたかさえわからないのにどうしろというんだ?

「だから言っているだろう? 貴様はもうあの世界にはいられなくなった……」

蒼き瞳が俺を貫く、その瞳は深く……永遠の闇を見た気分にさせた。

「そしてそれを見ていた私がこの"あるはずのない世界"に引き込んだ、つまり相沢祐一は死んだのだよ」

俺が死んだ……そういうことか。

俺がいたらもうすでに始まってしまっている世界の崩壊を止められないと思ったクロウリーは"俺という存在"を殺したということか。

しかし、すでに崩壊の危機にある世界が原因である俺を排除しただけですぐに止まるのだろうか?

そして今気づいた、俺はクロウリーの言う事を大筋信じてしまっている。

つまり"自分が世界にとって有害である"という事を認めた事になるのだ。

「ふむ、どうやら大方事態は理解したようだな……、さて、ここでお前に一つ選択をさせてやろう」

選択……?なんだそれは?

「本当はこのまま消滅させたほうが楽なのだが私とて神ではない、人の運命を変える事は意外に疲れる作業なのだよ」

さらりと怖い事を無表情で告げるクロウリー。

この無表情に段々と慣れてきたが未だによく何を考えているのかは全然わからない。

「1つ、このまま自らの命を絶つ」

つまり自殺しろ……って事か。

なるほど、自分の運命を変える事は容易だって事か?

「2つ、そのままこの世界に留まり永遠を過ごす」

ここに留まる?冗談だろう?

白く何もない世界、あるものは壊れかけた思い出のみ。

そんな死んだ様な世界に一人留まるくらいならまだ自殺した方がマシだ。

……どうやら選択肢は結局俺の存在を消滅させる方法みたいだな。

それならばいっそ1番目の選択肢を選んだほうが気が楽だと思うんだが……、

「――そして3つ目、自分で犯した罪を自らの力で修正するか……だ」

……何?

 

 

カナカナカナカナー。

先ほどの場所から俺は舗装されていないデコボコ道をただひたすら目的地もなく彷徨っていた。

「熱ぃ……、やばい……このまま俺は干物になってしまうのか?」

さすがにまだまだ若い今日この頃で死にたくはない。

「で? 結局今回の"歪"とやらはどこにいるんだよ……」

俺がクロウリーからだされた選択の中から選んだ3番目の選択肢。

それは俺がいた"世界"とは違う"世界"の"歪"をなんとかして取り除く事だった。

俺の無意識に発した"奇跡"によって異常をきたした9の世界に存在してしまった"歪"。

その原因となっている"歪"を取り除く事によって俺の世界で起きた奇跡は"起こるべき事象"として処理されるらしい。

その"歪"に対し実際に何をすればいいのかは教えてくれなかったが取り合えず"歪"とやらに会って見ないことにはわからない。

どうやらその"歪"は並列された世界のバランスを崩している俺のような存在らしい。

……しかしもしかしたらその"歪"を取り除く方法が最悪なものだとしたら俺はどうすればいいのか考えてはいない。

もし俺のように元の世界からの消滅だったとすると俺はその"歪"を取り除く事が出来るのだろうか?

「……まぁそれは今考えても仕方ない…か」

それを考える前にどうにかしてこの世界に適応しないと本気で干物になる。

このままじゃ元の世界に戻れるなんていってられない、その前に死ぬ……。

あぁ、もう休んでも……いいよね?パトラッシュ。

本気で意識が飛びそうにある、やはり雪国に半年近くもいたため体がこの陽気に慣れるまで時間がかかりそうだ。

ふらふらと歩きまわりやっと辿りついた場所は……ゴミ捨て場のような所だった。

「なんだよ……ここは?」

テレビやら木材やらバットやら車などの廃棄物らしきものが無造作にそこらじゅうに捨てられていた。

近くに廃物処理場でもあるのだろうか?

「ぐあ……、しかもここめっちゃ熱い……」

物が多いいことや黒塗りの車が太陽の光を反射したりして周囲の温度は上がっていた。

あ、今凄い眩暈がした……。

俺はそのまま丁度あった廃物の中にある木造作りの椅子に腰を下ろした、暫く動けそうにない。

やばい……このままじゃBAD END確定じゃないか…………。

薄れゆく意識――あぁ、母さん、先立つ不幸をどうぞお許しください……。

そうして俺の目は無慈悲にも閉じかけようとしていた……が、閉じきる前に後ろの方から誰かが歩いてくる音がした。

「あれー? こんな所で何してるのかな?かな?」

それはどこか名雪を感じさせるような少し伸びた女の子の声だった。

振り向いた俺の視界に映ったのはスリットが入ってるチャイナドレスみたいなワンピースを着ている少女だった……。

 

 

あとがき

最初の世界は「ひぐらしのく頃に」へのクロスオーバーです。

白いワンピースを着ている少女……誰だかわかりますよね?(´∀`)

さて、世界に散らばる"歪"を探し始めた祐一君の物語は第二話にしてやっと幕をあけました。

取り合えずひぐらし編は10話ぐらい続くと思います、付き合ってくれる人募集(ぇ

そう考えると10話×9の世界……90話完結?勘弁してください(((゜Д゜;)))

出来るだけ毎日更新するようにします。

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