「世界から逃げるな……か、くっくっく、いい言葉だとは思わんか?」

そういって水晶を見ていたクロウリーは金髪の少年へと振り返る。

しかし少年は黙して語らずただ成り行きを見守っているだけだった……。

そんな少年の態度も気にせずクロウリーは一人失笑を漏らしている。

「それでは相沢祐一……貴様は世界から逃げずに使命を果たす事が出来るか見せてもらうぞ」

そしてクロウリーは水晶にまた見入る、その瞳には期待と絶望が入り混じっていた。

 

 

出張!奇跡を運ぶ道化師

 

 

私の名前は園崎魅音。

雛見沢村御三家、園崎と言えば雛見沢に住むものならば例外なくその存在を知っているだろう。

戦後から急成長を遂げた園崎は各界のあらゆる事業などに精通し、今や雛見沢の顔役とまでになっている。

……これは内緒の話なのだが家の父親は地元のヤクザ達の頭を張っていてその道でも園崎の名は有名だ。

そしてそんな園崎家の次期頭首である"鬼"を継ぐ者がこの私、園崎魅音である。

つまり自分で言うのもなんだけど雛見沢村の中ではある意味私はとても重要な人物の一人でもあるのだ。

なのでそんな私の家、園崎本家に訪ねてくるような人間達は決まって"そういう系統"のお客さんが多くなる。

まあ実際には意味的にあまり変わらないのだが兎に角"私"を訪ねてくる人間なんてほとんどいない。

来る人たちは大抵現頭首である私の婆っちゃ、園崎お魎を訪ねてきているのだ。

しかもそんな人達に限って園崎家へのご機嫌を取りに来る者や園崎家に融資などのお伺いをしてくる者などだ。

そんな事が小さい頃からずっと続いていた為に普段から私は来客者に対してのそれ相応の対応の仕方を学んでいた。

だがしかし、今回訪れてきた彼は今まで家に来た人達とは何もかも違っていた。

「おー、君が魅音ちゃんって子? 俺の名前は相沢祐一、世界を旅する気ままな若人さ!!」

このテンション高いお兄さんは一体何しに来たのだろうか?

 

 

「それで?相沢さん……我が園崎家へ何の御用ですか?」

丁度婆っちゃんが出払っていたということもあり私がこのお兄さんの相手をする事になった。

相手が私より年上であろうと私は園崎家次期頭首、下手な対応はしない。

……だから適度に相手をして頃合いを見計らい追っ払おうとしたのに、

「なんかこの家すげぇ広い! 庭には獅子脅しまであるのかー、みっしーが見たら喜びそうだな」

さっきからこの人はなんなんだろうか?

園崎家に用事があって来たのではないのか……そう言いたくなるぐらいの無遠慮ぶり。

居間に通し私が茶菓子やらなんやらを用意して台所から戻ってきた時飾ってあった飾り兜を被っていたのはさすがにびっくりした。

しかも今でさえ人の話を軽く無視しながら部屋の中を勝手に見て回ってるなんて普通の精神じゃない。

まったく……本当にこの人はなんなんだろうか?

もしこの場に私ではなく婆っちゃがいたら一瞬で逆鱗に触れそうだ。

「……もう一度聞きます、相沢さん? あなたはこの園崎家に……」

「あれ……なんだこれ? うっわ! 日本刀が飾ってある! こんなのみっしーも持ってないぞ!?」

……あぁ、もう。

本当になんなのさ、このお兄さんは?

ここまで完璧に無視されると逆に清々しい気もするけど今はそんな事関心してる場合じゃない。

……それにさっきからちらほらと出てくるみっしーって何なのよ?

「相沢さん? お話がないようでしたらお帰り願いませんか? 園崎の家はそれほど暇ではないのです」

私は少し強めに言う、これならば雛見沢御三家、園崎の名が勝手に相手に威圧感を与えてくれる。

自分的にはあまり望ましい事ではないがこういう時には便利なものだ。

案の定相手も急に真面目な顔になり私の机を挟んだ対面にある座布団の上に腰を下ろした。

「それで? 一体何の用事ですか?」

もう一度念を込め私は相手を問う。

流石に相手も園崎の名前を出されたら対応と変えてくるだろう……と思ったのに、

「そんな怖い顔は君には似合わないよ……、笑った…君の顔が見たい」

「…………はいぃぃ!?」

なんて事をいきなり笑顔で言ってきたりした。

笑った私の顔が見たい!?

い、一体何初対面でくどいてんのか、この人は!

「えっっと!? あっ…? …………あ、あぅ」

自分の顔が赤面するのがわかる……。

う〜!私はこういうのが苦手だっていうのにー!!

「……ふ、レナの話してた通り魅音ちゃんは純情だな〜」

はっはっはーっと笑う目の前の男。

私は目をぱちぱちと瞬きを数回繰り返した後やっと、からかわれた事がわかった。

「〜!? だ、騙したなぁ!?」

園崎魅音を騙すとはこの餓鬼ぃいい度胸だ!

…………ん?レナ?

「相沢さんってレナの知り合いなんですか?」

それにしては雛見沢で見たことない顔だけど……。

もしかしてあれかな?お兄さんとか?

でも苗字違うし……、あぁ、もしかして母方の方の子供かな?

「まあね、レナと俺はすでに友達以上恋人未満の関係さ!」

「へー……って、えぇぇ!?」

と、友達以上恋人未満!?

それって……かなりあれな関係って事ぉ!?

「…………まあ冗談は置いておいて、今回は魅音ちゃんにお願いがあって来たんだ」

その時――彼の顔はもの凄く真面目になった。

「頼み事……、なんでしょうか?」

「あぁ、君が竜宮レナを……助けてあげて欲しい」

 

 

「世界から逃げるな……?」

俺の言葉を聞き、レナはオウム返しのようにその言葉を繰り返した。

「そうだ、確かにレナがさっき思っていただろう方法は最低限の思考の中で出てくる最大の理論だと思う」

多分……レナが考えていた事はとても物騒な方法だろう。

そんな事を俺はレナにして欲しくない。

まだ選ぶだけの選択肢があるんだ、俺はレナに違う選択肢を選んで欲しい。

だから、俺は話続ける。

「でも……それはやっぱり正しい事じゃないんだよ」

「正しくない?」

「あぁ、人として生きていくのは正しい事ばかりすればいいってものじゃない事もわかってるけどレナが考えてる選択は違うよ」

「…………」

「まだ試していない選択肢が残ってるんだ、それが全部無くなるまで試してみないか?」

「………………」

レナは……沈黙してしまう。

俺からはもうこれ以上いう事はない、最終的な判断は俺がするんじゃない。

俺だって聖人じゃない、もしかして同じ事態になったら俺も同じ事を考えてしまうかもしれない。

だからこそ、……レナの間違いがわかってしまうのだ。

「でも……わ、私は……!」

レナは必死に自分と戦っていた。

多分レナはもう間違いには気づいている、しかし……多分後"一歩"が踏み出せないのだ。

そしてその一歩を後押ししてあげるのは俺じゃない。

この大事な大事な"一歩"は会ったばかりの他人である俺の一言で進んじゃいけないんだ。

そうなると……、レナが本当に信じられる人が一番いいんだけど……。

「なぁ、レナ……、お前の中で一番の親友って誰だ?」

 

 

「……ここまでが俺の話の全てだ」

――そうして彼、相沢祐一の話は終わった。

「レナのお父さんが……そんなことに………」

私はレナの家族がそんなことになっているなんて本当に知らなかった。

しかも美人局の実行犯は間宮リナと北条鉄平ときた……、近頃葛西さんからよく聞く名だ。

北条鉄平、あの野郎……また雛見沢に戻ってきやがったのか。

「それで……友達の魅音ちゃんにレナを助けてあげて欲しい」

「助けて……というの少し上品な言い方ですね、実際にはどうしろと?」

私の家は裏の家業にも通じている。

つまり……原因を排除するという力がないこともないというのは事実だ。

簡潔に言うと……間宮リナと北条鉄平を"消す"ということだ。

「もしあなたが園崎家…という家柄を聞いてのご依頼ならば無駄ですよ」

私は園崎家次期頭首だ、現頭首である婆っちゃ事園崎お魎がいる限り私には何の権限もない。

つまり、私は無力なのだ。

出来る事なら私だってレナを助けたい、北条鉄平ならば消えてもいいとさえ思っている。

でも……私は今はまだただの……魅音なのだ。

「んー、何を勘違いしてるのかはわからないけど多分誤解してるぞ?」

「誤解……ですか?」

「あぁ、俺は強行的な原因の排除は望んでない、寧ろ今回の問題は竜宮レナ自体が解決すべきだ」

……私は少し目の前の彼を見る目が変わった。

彼はとても大人的な考えが出来ている、見る人からみたら冷たい…と言われるかもしれないがこれは大人な対応なのだ。

自分の問題は極力自分で解決しないと必ず"しこり"が残る。

その"しこり"を残さないように彼は最小限にレナを助けようといっているのだ。

「でも俺が出来る事はこれ以上ない、だから…情けない事だけど君の力を借りたい」

「それは園崎家の園崎魅音…としてではなく?」

「あぁ、友達としての園崎魅音の力を借りたい」

……私は彼の言葉を聞いて、ただ静かに一つだけ頷いた。

 

 

これで……レナは大丈夫だ。

俺はあの後レナの現在の居場所を魅音ちゃんに伝え園崎家を出た。

後日会った時魅音ちゃんが結果を伝えるって言ってたけど……もう大丈夫だろう。

これで俺の出来る事は終わった、だからこれからは自分の事を考える事にしよう。

「…………で?これからどうするか?」

見上げれば満天の夜空が空に舞っていた。

つまりは夜、ついに宿を見つける前に日が沈んでしまった。

「……もしかして、俺って野宿?」

すげぇ蚊にさされそうだ。

 

 

あとがき

書き直し後の第四話ですー。

基本的には前回と変わりませんけど次回から必要となる"言葉"を入れました。

さて、魅ぃちゃん視線の第四話、いかがでしたでしょうか?

今回は園崎家と園崎魅音との関係を中心に描きました。

微妙な所で揺れる魅音を感じていただければ幸いです(´∀`)

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