「……梨花、どういう事ですか?」

そういって羽入は沙都子の隣に雑魚寝している祐一の方を見てそう問う。

そんな羽入を見て梨花は少し苦笑しながらも実に機嫌がよさそうに答えた。

「私は今まで逃れられない運命の中にいた、でも……もしかしたら今回でそれも終われるかもしれない」

そう、これは希望という名の新展開なのだ。

今までの"世界"では現れなかった分岐、選択肢が今現れた。

それは運命という名の螺旋に囚われた梨花にとっては闇の中を照らす眩しい光のようものだった。

「……無理なのですよ、こんな普通の男の子には何の力もないのです」

羽入はそう言いながら少し機嫌が悪そうに祐一を見る。

ここまであからさまに敵意というか恐れを抱いている羽入を見るのは梨花は初めてだった。

そんな羽入に驚きながらも梨花は薄く笑いながら窓から見える夜空を見上げる……、そこには見事な月が浮かんでいた。

「……それでも私は祐一に賭けるわ、もう残された時間は少ないんだもの」

 

 

出張!奇跡を運ぶ道化師

 

 

チュンチュン……。

朝の日差しが差し、部屋の中に優しい自然の光が照らし出す。

「う……ん、朝か…?」

俺は目を覚まし起き上がる……。

どこかまだだるい体を引きずって部屋を出て階段を下りた。

「ふぁ〜あ、母さんおはよう〜」

俺は朝の挨拶をしながら居間の椅子に腰かけテーブルに伏せる。

……微妙にまだ眠気が残ってるな、昨日はテレビを遅くまで見てたからなぁ。

「あら圭一、今朝は早いのね、ご飯できてるわよ」

そういって母さんはみそ汁を持ってくる、そのいい味噌の香りに動かされ俺は顔を上げた。

「お? 今日は豆腐とワカメのみそ汁! ん〜、いいねぇ」

昨日は確かお吸い物だったんだよな、でも俺はどちらかというと豆腐のみそ汁の方が好きだ。

なんていうかこう……豆腐に染み込んだ味噌の美味さというか、神々しさというか。

とにかく俺は具沢山なみそ汁が大好きなのだ。

「圭一、ご飯はどのくらい盛る?」

「超特大盛りで」

「はいはい……、っとこのぐらいでいい?」

「ん、OK! んじゃいただきまーす!!」

まずは普通にご飯から食べる……、うん!いい具合に炊けた白米だ。

そしてそこですかさずみそ汁を口に含む、味噌の味が口の中に広がりとても美味である。

「くはー! うまい!!」

「本当、圭一ってば美味しそうに食べるのね、それと…これがおかずの玉子焼き」

お?玉子焼きだ。

家で玉子焼きが朝に出るのは珍しい。

几帳面な母さんは昼の弁当にいつも玉子焼きを入れるため朝は大抵目玉焼きだ。

俺としてはどっちも好きだけど今日はどういう風の吹き回しだろうか?

「今日は玉子焼きなんだ、どうしたの?」

俺がそう聞くと母さんは少し嬉しそうに言った。

「昨日レナちゃんに新しい玉子焼きの作り方を教わってね、試しに作ってみたの」

そうなのだ、家の母さんは何故かレナとよく買い物で一緒に食材を買うらしい。

その際家の晩飯の話とかレナの家の晩飯の話とかで盛り上がっていると母さんから聞いた。

……その時俺の恥ずかしい過去話とかも織り交ぜて母さんが面白おかしく話すから俺としては立場がない。

「ふーん、んじゃいただきまーす」

ふむ、見た目は普通の玉子焼きだな……問題は味か。

ぱくっ!……もぐもぐ。

「おっ、美味い……! 結構いけるよ、これ!!」

中に入ってるのはチーズだろうか?

口の中でトロリととろける感じが結構美味い、これは盲点だった……。

「そうでしょ? レナちゃんがチーズを中に入れてみても美味しいって言ってたから試してみたのよ」

へー、レナって意外と創作料理好きなのかな?

しかし本当に結構美味いな、これなら白米が進む進む。

普通チーズとご飯ってミスマッチだと思ったんだけどな……。

「母さん、おかわりー」

「あらあら、圭一、そろそろレナちゃんとの待ち合わせの時間じゃないの?」

母さんにそういわれて俺は時計を見る……、うわ、本当だ。

「やべぇ! おかわりキャンセル! 行って来ます!!!」

俺は椅子にたてかけてあった鞄を取ると急いで玄関へと走った。

 

 

「レナー!! おまたせー!!」

いつもの待ち合わせ場所にレナはもうすでに待っていた。

……思うけどレナって何時ごろから待ってるんだろうか?

「あ、圭一く〜ん!! おっはよ〜!!!」

レナは俺を見ていつも以上に嬉しそうに手を大きく振っている。

なにかいいことでもあったんだろうか?

「おう! レナご機嫌だなー、何かあったのか?」

「え? そ、そんな事ないよ!?」

レナは否定しているがそんなに動揺してたらバレバレだぞ?

「なんだなんだー? 俺を誤魔化そうなんて100年早いぜ!?」

「な、なんでもないよー」

そういいながらぶんぶんっと鞄を振り回すレナ、よっぽどいい事があったんだな。

まあレナがここまでとぼけるって事はあんまり言いたくない事なんだろ。

「なんだよー、まあいいや! んじゃ行こうぜ?」

「うん! 魅ぃちゃんももう待ってると思うよ」

 

 

「レナー! 圭ちゃーん! おっそいよぉー!!」

魅音は今日は珍しく早めに来ていた。

しかもレナ同様にどこか嬉しそうな雰囲気が漂っている。

なんなんだ?今日は。

「んだよ、いつも待たせてるのはお前の方だろー?」

「そうだっけー? おじさんにはわからないなー♪」

そう言って魅音は大きく口を開けて笑う。

それにつられるようにレナも楽しそうに笑った、なんだか俺もおかしくなりそれにつられるように笑う。

……うん、今日も雛見沢はみんな平和だ。

「それじゃあ学校に行こうぜ!!」

俺達は学校へと歩きはじめる、その途中に魅音にも理由を聞いてみたけど「さぁ〜ねぇ〜♪」っと誤魔化されてしまった。

むぅ、本当になんなんだ?

 

 

「おはよー! 皆の衆!!」

教室に入るといつも通りの顔ぶれが見える。

俺達がいつも最後に教室入るからな、もうすでにみんな揃って……あれ?

「梨花ちゃんと沙都子来てないな? 休みか?」

「あれ? そういえばいないよ? どうしたのかな、かな?」

俺とレナは空席を見て不思議そうに辺りを見渡す。

実は鞄がないだけでもう学校に来てるんじゃないのか?

しかし、やはり二人の姿が見えない。

「二人揃って風邪かなぁ? 誰か連絡聞いてるー?」

魅音がみんなに向けてそう聞くがみんな首を横に振る。

すると一人の男の子がこちらへとかけてくる、富田くんだ。

「前原さん、でも梨花ちゃんと沙都子ちゃんの靴ありましたよ?」

ということは学校にはいるってことか……んじゃトイレかなんかだろ。

しかし富田くん、君は毎朝二人の靴があるかどうか調べてるのか?

……ふ、若いな。

「……なんか前原さん、変な事考えてません?」

「そんなことないって! ……まあ男の子だもんな」

「ち、違いますよー!!!」

富田くんは真っ赤になって抗議してくる。

わかってるって、君の考えていた事は〜。

ガラガラー。

「み〜☆」

「すっかりお話が長引いてしまいましたわね」

っと、いきなりドアが開いたかと思うと梨花ちゃんと沙都子が教室に入ってきた。

「おう! 沙都子に梨花ちゃん、何してたんだー? トイレか?」

取り合えず普通に挨拶……したつもりなんだけど沙都子が真っ赤になって詰め寄ってくる。

……な、何だ?

「け、圭一さんはデリカシーがなさすぎですわー!!」

「そ、そうかー? どこがだよ」

「みー、圭一はもう少し女の子の気持ちを考えたほうがいいですよ?」

梨花ちゃんまで……、俺なんか変な事言ったか?

そう思いレナと魅音の方へと向いたが二人もこちらを微妙そうな顔で見ていた。

……なんでだ?

「……それより圭一、もう先生が来ますですよ♪」

梨花ちゃんはそういい嬉しそうに俺の背中を押しながら席へと誘導する。

……なんか俺ってば今日はみんなのテンションについていけないなぁ。

ガラガラー。

そして暫くして知恵先生が入ってくる。

「皆さんおはようございます、委員長……号令を」

「きりーつ、礼!」

いつも通り魅音が号令をかける。

「「「おはよーございます!!」」」

「さて、今日はみなさんに嬉しいお知らせがあります」

……なんだ?今日は臨時休校だとか?

いや、そんなことを知恵先生が嬉しいお知らせだなんて言うわけないか。

「実は今日、都会の大学の学生さんが暫くの間皆さんの臨時教師をかってでてくれました」

「「「えぇー!?」」」

臨時の教師ぃ!?

た、確かにこの学校には知恵先生の他には後校長先生ぐらいしかいないけど……。

しかも都会の学生がなんで雛見沢にいるんだ?都会に行った元住人とかか?

「レナ……知ってたか?」

「ううん、私も知らないよ? どんな人だろ、だろ?」

レナはどこか嬉しそうに新しい先生の登場に期待していた。

都会の学生かぁ、ということは若いのか?

雛見沢には子供とお年寄りしかいないからなぁ、大学生なんて久しぶりに見るかもしれない。

「みぃ〜☆」

「ふふ、皆さん驚いてますのね」

みんな驚いている中、梨花ちゃんと沙都子は平然と…いや、嬉しそうに先生の登場を待っていた。

どうやら二人は知っているようだ、って事は二人の知り合いか。

あぁ、さっき二人が遅れてきたのはもしかして臨時の教師の事か。

「それでは先生を紹介します、相沢先生……どうぞー」

「うぃー、失礼しまっす!」

陽気な声で入ってきたのは……若い男の人だった。

へぇ、これが都会の大学生かぁ、うん、確かに田舎者っていうより都会人って感じだ。

「あー! 祐一さんだー!」

教室内に響く声、れ、レナか?

いつもはあまり騒がない方のレナがここまで大きな声を出すなんて珍しい。

みんなも興味津々とレナを見ている。

「お? レナじゃないかー、それに魅音ちゃんまで、おひさー」

そういって相沢先生は手を振る、なんだ、みんなの知り合いか。

それじゃあやっぱり雛見沢の住人なのか。

「あ、相沢さん!? なんでここに!?」

「いやー、まあ色々あってなぁ……、とにかくみんなの勉強は俺がばっちり見てやるさ!」

そういって相沢先生はみんなに向けて親指をビシィ!っと向ける。

中々ノリのいい人だ、結構仲良くなれそうだな。

 

 

「それじゃあ相沢先生は上級生のみんなの勉強を見ていただけますか?」

「了解ですよ! 任せてください!!」

俺はそう知恵先生にいいレナ達のもとへと向かう。

……しかしまさかこんな簡単に臨時教師が許可されるとは思わなかったぜ。

っと、上級生ってこのクラス3人しかいないのか。

レナに魅音ちゃん、それと後一人……元気そうな男の子だ。

彼だけ初対面だな、うむ……いっちょう挨拶しておくか。

「初めまして、俺の名前は相沢祐一! 世界を気ままに旅する若人さ!!」

俺がそう挨拶すると男の子はびっくりしたような顔をしたがその後すぐに笑顔に変わった。

「初めまして、俺の名前は前原圭一です! よろしくお願いしますね、相沢先生」

 

 

あとがき

祐一君、臨時の先生になるの巻(・∀・)

圭一くんも登場して前編がようやく終われそうです。

しかし予定より進みが遅れ気味ですよー(((゜Д゜;)))

あれ?部活は?っと思った人……時間切れだったんです(TAT)

このままではひぐらし編約10話完結は難しいですなぁ。

頑張れ、俺。

しかもこれまた書き直すかも……、ぐぁ、俺にもう少し描写力があったらなぁ(゜A゜;)

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