「相沢……祐一」

羽入は祐一の名前を呟きながら少し自分の体が震えているのに気づく。

……ボクが怯えている?

誰にも触れられず、誰にも見つかる事のないボクが?

いくつもの無残な死をいう死をこの目で見てきたボクが……何故怯えなくてはいけないのか。

あんな普通の男の子に何が出来るというのか……。

確かに今までの世界ではありえない人物が現れた、しかしその可能性は0ではないのだ。

無限の可能性がある雛見沢では何が起こったとしても不思議ではない。

「なのに……この負担はなんなのですか?」

古出神社の祭具に囲まれながら羽入は一人体を震わせていた……。

 

 

出張!奇跡を運ぶ道化師

 

 

「……前原圭一か」

俺は臨時講師としての最初の一時間を無事終わらせて職員室の一角にあるソファーに座っていた。

次の授業は体育なので俺には3時間目までする事がない。

手には先ほど上級生のみに解いてもらった解答用紙が9枚、国語、数学、社会の3科目である。

まずは実力を……っということで解いてもらったのだが……。

「園崎魅音…、国語41点、数学58点、社会49点か」

これはまずい、なんというか勉強嫌いもここまで来ると才能かもな。

本人自体は頭が悪くはないのだろうが興味を持つ事にしか発揮しない……舞タイプか。

「竜宮レナ…、国語71点、数学69点、社会72点」

魅音ちゃんとは違ってこちらは平均的に点数が高い。

なんでもそつなく出来る優等生ってところか……佐祐理さんタイプだな。

「そして前原圭一…、国語98点、数学89点、社会90点」

このテストは魅音ちゃんのレベルに合わせて作ったっと知恵先生から聞いた。

つまり……圭一は一つ上の年に合わせたテストだったにも関わらずこれだけの点数を取っているのだ。

「……天才か」

しかもこのプリントを一番初めに解いたのも圭一だった。

最近引っ越してきた都会人と聞いていたけどこれは予想外だった……、はっきりいって勉強する必要がない。

多分圭一が今習うレベルなのは俺と同じぐらいの勉強なのだ。

つまり、圭一にとっては2〜3年後になる学力だ。

「さてと……どうしますかね」

 

 

「うらー! 3時間目だぞー」

体育の時間が終わりようやく俺も授業に加われる。

知恵先生は基本的に下級生の勉強を見ることに専念したいらしく今回も俺が上級生の相手だ。

「うっし! レナに圭一に魅音ちゃん! 勉強を始めるぞー」

俺がそういうとすぐに3人とも俺の周りに集まってくる。

「相沢さーん、なんで私だけちゃん付けなんですか?」

魅音ちゃんはこちらに来るなり膨れっ面でそう抗議してくる。

……あれ?そういえばそうだな。

気づかなかった、意外に自然にちゃん付けで呼んでたな。

「でも沙都子ちゃんや梨花ちゃんもちゃん付けだぞ?」

「えー? でもおじさんだけちゃん付けなんか納得いかないよー」

子供かい、別に仲間外れにしたわけじゃないのに魅音ちゃんは納得がいかないらしい。

うむ、それならば仕方ない……。

「それじゃあ今度から魅音って呼ぶよ、改めてよろしくな」

俺はそう言いながら魅音の頭を撫でた。

「わっ……!?」

すると撫でられるとは思っていなかったのか魅音はとても驚いたような顔をした。

心なしか顔が赤いような気がする、魅音って結構男に免疫ないのかな?

「魅ぃちゃん顔赤いよー? なんでかな、かな☆」

「れ、レナぁ!?」

そんな魅音と俺のやりとりを見てレナは嬉しそうに言う。

魅音は未だ赤面した顔のままレナを追いかけ始める……、二人って実に仲がいいな。

「こら待てレナぁ!!!」

「嫌だよ〜☆ 魅ぃちゃん祐一さんに撫でられて嬉しかったんだよね〜♪」

しかし結構レナって可愛い顔して抜け目ないよな、こういうの。

そんな二人のやりとりを見ていると舞と佐祐理さんのコンビを思い出す……なんか懐かしいな。

「相沢先生、魅音を口説いてないで勉強しましょう…知恵先生がさっきからめっちゃ睨んでます」

俺が変な感傷に浸っていると突然圭一が俺に対してそう耳打ちしてくる。

俺はそっと知恵先生の方を向く……うわ、めっちゃ怖い顔で睨んでる!?

「……んじゃ勉強を始めるぞー、みんな座れ座れー」

背後からの冷たい視線を感じながらも圭一たちを座らせる。

いや、なんかマジで殺意まで感じるんですけど……。

「それじゃあこれから個別に勉強をしてもらいたいわけなんだけど……圭一」

「はい? なんですか?」

「ちょっとこの問題を軽く解いてみてくれ」

「……? はぁ…いいですけど」

不思議そうな顔をしながら俺の作ったプリントを受け取る圭一。

レナと魅音は圭一の解いているプリントを興味津々に覗き込んでいる。

「……う〜ん、難しいな…これ」

そういいながらもちゃくちゃくと解いていく圭一。

ちなみにこれは秘密だが今圭一の解いている問題は俺の学校でこの前あった期末の試験内容を真似ている。

それを何の助言もなしに圭一はどんどん進めていく……。

「うっし、出来たー!」

「圭一君凄いね! レナ全然わからなかったよ?」

「はー、おじさんも何一つわからなかったよー」

レナと魅音は圭一の解いたプリントを興味深そうに眺めていた。

そりゃわからないだろうに、まだ習ってない所も多いいはずだ。

実際に圭一もわからないところが何箇所もあり、半分も出来ていない。

……しかしもう半分はちゃんと埋まっている。

「……39点だな」

「ぐあー、やっぱり駄目かぁ……」

……まだ解答ミスや凡ミスが目立つがこれだけ出来れば上出来だ。

まあ天狗にならないようにこの結果は話さないでおこう……。

さて…、圭一の勉強方針も決まったし後はレナと魅音の学力指南だな。

「圭一はまあこのプリントを中心にやってくとして…レナは基礎的な事が出来てるから後はゆっくり知識を蓄えていけばOK」

「はぅ……、なんか私いつも通り〜」

いや、流石に普通に勉強できる学生に教えるほど俺も頭よくないし……。

それに多分圭一みたいにどんどん進んでいく勉強方法はレナにとって逆効果になる可能性だってあるしな。

「それから魅音は……まずは基礎を固めよう」

「……わかってるさ、言わなくても」

魅音はそういいながら一人、床に指で「の」の字を書きながらいじけていた。

 

 

「昼休みだぁーーーー!!!」

「み〜〜〜〜♪」

勉強が終わりついにやってきました昼休み。

学生にとっては放課後の次に嬉しい時間だろう……。

圭一と梨花ちゃんがノリにのってめちゃくちゃはしゃいでいた。

さてと……ここの学校はどうやら給食ではなく弁当らしい。

……先生ってどうするんだろ?やっぱ出前か?

「みぃ? 祐一、何処いくですか?」

「え? いや、俺一応先生だし、職員室かなぁ?」

「みー、祐一のお弁当も作っていますですよ? いりませんのですか?」

梨花ちゃんはそういい手に持つ可愛らしいピンク色のハンカチに包まれた弁当箱を俺へと差し出した。

……手作り弁当か、俺が今朝起きた時にはもう作り終わってたんだろうな。

そんな朝早くから俺の分まで作ってくれたなんて……うぅ、感動だぜ!

「ありがたくいただきます」

「にぱ〜☆ それじゃあ祐一もボク達と一緒に食べるのですよ」

そういって梨花ちゃんは俺の手を引っ張りレナ達の所へと連れて行く。

「…っというわけで今日はここで昼食を取る事になったさ、よろしく〜」

「お? 相沢先生! 大歓迎ですよ!!」

そういいながら圭一は笑いながら歓迎してくれた。

レナ達も別に反対意見はなくスムーズにここで昼食を取る事が決定した。

取り合えず席が足りない分はレナ達に少しづつ席を詰めてもらって解決。

そして早速梨花ちゃんに渡された弁当箱を開いた。

「お、めっちゃくちゃ美味そう」

「祐一さん、ちょっとお待ちになってくださいまし」

俺が箸に手をかけ早速食べようとしたら沙都子ちゃんに止められる、なんだろう?

「あははー、このグループの決まりでね、委員長である私の挨拶が最初なのよー」

そういって魅音はちょっと偉そうに胸を張る……しかし魅音って意外にでかいなぁ。

「そうだったのか、悪い…んじゃ委員長頼んだぜぃ!」

「…では魅ぃ委員長の号令でいただきますです」

「「「いっただきま〜す!!!」」」

みんなの号令が重なる。

「んじゃ今度こそー、いっただきまーす!!」

そうしていい感じに俺は焼けた玉子焼きに箸を伸ばす。

……が、目指した玉子焼きは俺の箸を逃れ隣から急激に現れたピンクの箸に奪われる。

「……? 沙都子ちゃん?」

その箸の持ち主は北条沙都子ちゃん、……っていうか素早いなぁ。

「ふふふー、祐一さん! 油断は禁物ですわよ!! 我が班の決まりは誰のお弁当でも食べる事が許されるんですのよー」

「そうだぜ!? 最初の弁当の時間は俺もあまり食えなかったんすよ、今回は相沢先生も諦めてください」

――舞かよ!?

……ふふふ、しかーし!そのルールで俺に挑もうなんて100年甘いな。

「お? レナ、そのウインナーうまそうだな! いっただき……って、あれ?」

圭一はレナの弁当に箸を伸ばしていたようだが横から現れた漆黒の黒塗り箸に先を越される。

「あら? 圭一さんのお弁当、ミートボールが入っていましてよ? いただきですわー……って、はれ?」

今度は沙都子が漆黒の黒塗り箸に先を越される。

……その箸の持ち主はもちろん俺こと相沢祐一である。

「……ふ、甘いぜ? 俺のスピードについてこようなんてな!!」

確かに沙都子ちゃんと圭一の速度は速い、しかしこっちは舞のスピードに慣れてるんだぜ?

しかも俺はそれを1年間のほとんどを続けていた。

たまに栞が巨大弁当を持って乱入してくる事もあり平和な時もあったが基本的には奪い合いだ。

そんな俺に勝とうなんて……笑止!!

「へー、相沢さんもやるねぇ……、おじさんも久しぶりに燃えてきたよ」

「祐一さん凄い凄い! 圭一くんと沙都子ちゃんって私達の中でも早いんですよー?」

そんな俺の行動を見て魅音は不適に笑いレナは俺を褒め称えていた。

「…………嘘だろ?」

「…………ま、負けたっていいますの? この私が」

圭一と沙都子ちゃんはよっぽどショックだったのか白くなっていた。

「みぃ〜☆ 二人とも見せ場を取られてかわいそかわいそですよ♪」

そんな二人を梨花ちゃんはいつまでも上機嫌で撫でて続けていた……。

 

 

「んじゃ今日はこれで授業終わりー、気をつけて帰るんだぞー」

壮絶な昼のバトルが終わり、その後の授業も何の問題もなく終わった。

ふ、しかし弁当の時間は大人気なく久しぶりに本気を出してしまったぜ……。

人生どんな経験が役に立つかわからんな。

「相沢先生ー、俺達今日部活やるんですけど先生もどうですかー?」

圭一の声がして俺は振り返る。

そこにはレナ、魅音、梨花ちゃん、沙都子ちゃんもいた。

……部活?なんのことだ?

「みー、いいから祐一も一緒にやりましょうです☆」

「そうですわね、先ほどの屈辱を晴らしてやらないと気が済みませんでしてよー!?」

二人が駆けてきて俺を両端から引っ張る。

……なんかこの頃流されっぱなしだなぁ、俺。

「……で? 一から説明してくれると祐ちゃんは凄い嬉しいんだけどなー?」

「…それじゃあ部長である私、園崎魅音が説明しましょう」

俺がそう聞くと魅音は静かに語り始めた。

「我が部は複雑化する社会に対応するため、活動毎に提案されるさまざまな条件下、…時には順境、あるいは逆境からいかにして…」

……は?えっと?

遠まわしすぎてよくわからないんだけど……。

「レナは弱いから…いじめないで欲しいな…、仲良くやろうね?」

……レナさんまで何を言い始めましたか!?

「レナさんは甘えてますわ! 仲良くして勝てたら苦労しませんわー!!」

……沙都子ちゃんまで何か知らんけどやる気だな。

「昼には遅れを取ったけど…部活じゃ俺は負けねぇぜぇ!?」

……圭一、叫ぶのは構わんけど唾とんだ。

「…つまり、みんなでゲームして遊ぶ部活なのです」

俺の疑問に梨花ちゃんだけが唯一的を得た説明をしてくれる、あぁ、そういう意味か。

ようするにこれって部活という名の遊びって事だろ?

「先に言っておきますけどこれは遊びと思わない方がいいですよ?」

「そうそう、一勝一敗に男の命がかかってますからね?」

物騒な部活だな、そりゃ。

「まあ物は試しですよ、祐一さんも実際にやってみたらわかりますよ♪」

「あー、まあいいけど…何するんだ?」

俺がそう聞くとみんなは魅音を見る。

……どうやらその部活とやらは部長である魅音が決めるようだ。

「う〜ん、そうだねぇ〜、それじゃあ今日は簡単なカードゲームにしようか!!」

「……ジジ抜きか!?」

圭一が魅音の言葉を聞きそう推理する。

……なんかその笑みは微妙に妖しいんだけどなぁ。

なんかこう……危機感が働くって言うのか……。

「それじゃあ……部活という名の戦争を始めようか!」

――そうして俺にとって始めての部活が始まった。

 

 

あとがき

今回は圭一の学力調査&部活始動編です。

そして昔から書きたかった「祐一or舞がひぐらしの弁当の時間に居ればどうなったか?」を描きました。

部活の中身までは書けませんでした(´∀`)

ひぐらし本編と一緒で最初の部活は「ジジ抜き」です(ニヤリ

どうなるでしょうかねぇ……、これから…俺もわかりません(ぇ

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