「祐一さん!!!」

 

私は祐一さんと別れた場所に魔法教師を連れて戻ってきた。

………多分あの時祐一さんは私を逃がすために魔物に単身で戦いに行ったんだ。

なら今度は私が祐一さんを助ける番だ、祐一さんは絶対に死なせない!

だから祐一さん、必ず無事でいてください……!

 

「こっちなのか! 魔物が進入したっていう場所は?」

「はい、あの角の所に……、それを止めるために祐一さんが一人で!!」

「くっ! なんてこった!! 学園まで既に安全じゃないって言うのか!?」

 

そう叫びながら私の前を走るのは魔法教師、アーレン先生だ。

総合戦闘魔法を教えていて学園内の教師の中では学園長を抜かして次に偉い先生だ。

27歳という若さでカノン学園の教師となったエリート魔法使いである。

噂では100もの詠唱破棄魔法を使いこなせると聞いた事がある。

 

「栞君は離れていなさい、私が先行して魔物を仕留めます」

 

先生はそう私に言い残して速度を上げて廊下の角へと向かう。

私は先生の言うとおりにして少し離れた所で立ち止まった。

手には杖を持って一応戦闘準備だけはしておく……、でも魔物に私の魔法が通じるだろうか?

昔から魔力量が高く親からは過度の期待をされていた私、でもそんな才能は私にはなかったのだ。

詠唱破棄さえまともに出来ずしかも詠唱魔法さえも覚える事に四苦八苦する始末。

―――やっぱり私はお姉ちゃんみたいには出来ないな。

もう既に3年生レベルの魔法勉強をしている自分の姉を思い浮かべ苦笑する。

才能がない私の代わりにお姉ちゃんの方に魔力量が渡ればよかったな……。

 

「栞君、ちょっと来てくれ」

 

私がそんな物思いに耽っていると先行していた先生がこちらへとヒョコッと顔を出す。

流石先生だ、もう魔物群れを撃退したんだろうか?

 

「祐一さんは無事ですか?」

「無事というか何と言うか……、取り合えず見てくれないか?」

「………え?」

 

私は先生の気まずそうな顔を見て鼓動が速くなる。

まさか、祐一さんがどうかしたんだろうか……?

 

「祐一さんはどうしたんですかっ!?」

「………これを見てくれ」

 

先生が指差した先にはある一つの結末。

私はそれが最初なんであるかが判断できなかった。

 

「―――えっ? こ、これは?」

「栞君、一つ聞くけど………それは本当にうちの生徒だったのかい?」

 

思考が巡り、ようやく現実が頭の中に入ってくる。

そこには―――血の海が広がっていた。

祐一さんの血ではない、緑やら紫やらと多種多彩な血液が辺りに飛び散っている。

天井、窓、廊下、扉、壁……もはやそこは一種の地獄絵図となっていた。

倒れている魔物はもはや原型さえ留めていないが数は相当なものだ。

 

「―――川澄舞レベルの怪物が現れたっていうのか?」

「………ゆ、祐一さんは?」

「ここには魔物の死体しかないよ、多分次の獲物でも探しに行ったんじゃないか?」

 

先生は少し青ざめた顔でそう茶化した。

でも、………とても私には冗談には聞こえなかった気がする。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第十話

「虚空の現実(後編)」

 

 

 

 

 

「………くっ! せいッ!!」

 

私は並行して走る牙紗目掛けてメイスを振り下ろす。

渾身の一撃で普通の人間なら間違えなく直撃コースのはずだ。

 

「おい、さっきの剣を出せよー? つまんねぇんだよ」

 

しかしそれを牙紗は体を捻り軽々と避けきってしまう。

……既にもうそんなやり取りが数十回と続いて私には苛立ちだけが募っていく。

―――くそっ、ただの軽業師ってわけじゃないみたいね!

 

「やるじゃない……、でも何であんたは攻撃してこないのよ」

「攻撃する価値もない雑魚には用はねぇんだ、早い事さっきの剣を出しな」

 

そういいながら牙紗はニヤリと笑い草薙の使用を促す。

……随分と舐められてるわね、ならばその余裕を驚きに変えてやろうじゃない。

 

「―――ふっ!」

 

私は槍の様にメイスを前へと突き出す……、しかし距離が足りず牙紗の目前で止まってしまった。

メイスは槍ほどのリーチはない、それにメイスは突き出すものではなく殴りつけるものだ。

この行為はメイスにとってはなんの利得もないただの愚行にしか過ぎなかった。

 

「………おいおい、ついにヤケになりやがったか?」

 

牙紗も私のそんな愚行を見て心底呆れた声を出す。

でも……悪いけどさっきの条件は"普通のメイス"にのみ適用されるルールだ。

私のメイスを甘く見たら………こうなるって事を教えてあげるわよっ!!!

 

「―――はぁっ!」

 

かけ声一閃、あろうことか距離が足りず止まっていたメイスの先端が牙紗に向けて伸びた。

流石にそんなメイスの動きは予想していなかったのか牙紗は驚愕に顔を染め両手で顔を庇う。

しかし勢いを止める事が出来ず牙紗の細い体はそのまま吹き飛ばされた。

―――ざまみろ、これが私のメイスの機能の一つ、メイスランスの威力だ。

昔、槍の達人に習って覚えた棒術をなんとか生かせないかと考えて作り出した伸びるメイス。

この機能を使えばリーチが足りないメイスを槍の様に長く伸ばす事が出来るのだ。

 

「まさに万能メイスってやつね、相手を舐めてるからそうなるのよ」

 

私はそういいながら吹き飛ばした牙紗を見る。

牙紗は住宅街の壁にぶち当たりそのまま崩れ落ちた。

………案外呆気ないものだ、まあ少しは頑張ったみたいだけど詰めが甘い。

いくら強かろうとこうして隙をつけばどんな強敵も脆いものだ。

 

「まったく、余計な時間を喰ったわ……」

 

ため息をつきながら私は伸びきったメイスを元の長さに戻す。

確かにリーチは長くなるが破壊力が下がりそうそうと使えない。

それに重量も上がるので近頃はさっきみたいに敵の隙をつく為に使うぐらいだ。

 

「それにしてもあいつ、遅いわね」

 

私は呟きながらカノン学園を向き直る。

まったく……、あいつは今何処にいるんだか……。

まああの馬鹿の事だ、人助けでもしながらゆっくり向かってきてるんだろう。

 

「まったく、馬鹿よね」

「ほう、誰がだ?」

「―――ッ!? あら、まだ生きてたの?」

 

後ろを振り返るとゆっくりと立ち上がる牙紗の姿があった。

………直撃だったはずだけど、腕を犠牲にして威力を軽減したのか。

その証拠に牙紗は動かぬ腕をぶら下げながらこちらへと歩きだす。

 

「………はっ、まったくおれっちもラッキーだぜ」

「何がよ?」

「折角カノンを潰しに来たのに一番のご馳走にはありつけなかったからがっかりしてたんだよ」

「あら、それはお気の毒」

「でも考えは変わったぜ? あんた最高だ」

 

牙紗はそういって動かぬはずの腕に無理矢理力を入れて両腕を空へと向ける。

―――何をする気かしらね、あいつ。

私はメイスを構えて注意深く牙紗の行動を見張る。

 

「こいつは水瀬秋子にしか使わないつもりだったんだけどお前は合格だ」

 

牙紗の腕から何やら黒い煙が出始める。

そしてその煙は牙紗の体を全て包み込むと牙紗の体が見えなくなる。

………なにかしらね、これは。

私は何かしらの悪寒を感じジリジリと後退する。

 

「終わりだ―――楽しかったぜ? 秋桜麻衣子」

 

黒き煙に包まれた牙紗がそう告げる。

私はわけもわからず牙紗の方を凝視するがやはり煙のせいで何も見えない。

ただ、嫌な予感だけが体を包み込む。

 

 

 

 

 

「―――"我、埋葬を厭わず"」

 

 

 

 

 

―――瞬間、私の体を黒い閃光が貫いた。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第十話いかがでしたでしょうか?

時間ねぇー(・∀・)

時間がない管理人、ゆきこうろぎです。

どうなる麻衣子、どうなった祐一?

 

 

このSSは毎(以下略

 

 

 

 

―――第十話★用語辞典―――

 

製作中

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