「ねぇねぇ! 美汐、カノンが燃えてるよ?」

「……本当ですね、お祭りでもやってるんでしょうか?」

 

私は冗談交じりにカノンを指差している真琴に向けそう言った。

すると真琴は何かを期待する目でこちらを見つめてくる。

……まずいですね、この子には安易な冗談は通じないんでした。

 

「本当っ!? 真琴、お祭り行きたい!!」

「え、あ……いえ、それは冗談で多分今カノンは……」

「楽しみね〜、お祭りなんて本当に久しぶりだもんね♪」

 

慌てながら訂正しようとするが真琴はもう私の話を半分も聞いていなかった。

ならば言葉で通じなければ行動で示すのみ。

私は今にも駆け出しそうな真琴の腕を掴むと首を横に振る。

この無言の圧力で真琴に通じればいいんですが……。

 

「わかってるよ、美汐も一緒にね?」

「あ、そうじゃなくて……」

「ほらっ! 行こうよ!」

 

逆に真琴に腕を掴まれ私達はカノンへと向かう坂道を下っていく。

その途中何度も真琴に伝えようと口を開こうとしても吐き出されるのは呼吸音のみだ。

何故ならただでさえ人間離れした真琴の脚力に私は何も言えずついていくのがやっとだったからだ。

私は心の中で短くため息をつき走りながら燃え上がるカノンを見下ろしていた。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第十一話

「散り行く桜」

 

 

 

 

「―――かはっ! はぁ…はぁ…はぁ……」

 

積もり行く純白の雪が赤色に染まる。

あれ?なんだろう、これ?

私は何故か霧がかかっている頭を最大限活用させて現状の理解をする。

真っ赤な……雪、私の周りにのみ存在する……赤い雪。

あぁ―――なんだぁ、これ私の血かぁ……。

私は膝をつき、血が噴出している肩口を手で押さえた。

 

「……何が、おきたんだっけ?」

 

わからない、まだ頭が混乱しているみたいだ。

取り敢えず分かることは……これは致命傷だということだけ。

この傷は本当にまずい、早く治療しないとこれは死に至るに十分な傷だ。

でも、回復魔法なんて知らないしなぁ、まったく……あの馬鹿早く来いっつーの。

 

「おいおい、まだ生きてんのかよ?」

 

目の前からそんな声が聞こえてきて私は顔を上げる。

黒いマントに身を纏った身長の低い金髪の少年だった。

誰だろう?こんな生意気そうな子供に用はない。

急がないとこの傷を塞がないと、えっと、ここからなら確かカノン学園が近いかな?

 

「おい、無視かよ……こら」

 

鋭い正体不明の衝撃が私の腹部を貫く。

だけど痛みは感じずただ体を吹き飛ばされた。

………たく、何か用なのかしらね。

 

「な……んか用?」

「用とはご挨拶だな、戦いの最中に相手を無視するなよ」

 

戦い、そっか……私戦ってたんだっけ?

なんだか靄がかかったみたいにさっきまでの事が思い出せない。

でも私がこんな目の前のチビにやられるほど弱かったっけ?

 

「んだよ、死んでないだけでもう終わってんのかよ」

 

目の前のガキは詰まらなそうに右手を振るった。

すると今度は"私の後ろから"衝撃が起こった。

 

「ぐ……っ!」

 

今度は少し痛みを感じる、そして私はまた雪の地面を転がった。

そんな私の様子を見て目の前のガキはため息をつく……失礼なやつね。

 

「詰まんねぇ、折角元の姿に戻ってやったって言うのに結局はこれかよ」

「元の姿……? あんた何者よ?」

「あ? 見てわかれ、ボケ」

「―――腹立つ餓鬼ね、あんた」

 

私は出来うる限りガキを睨むが多分その顔は歪んでいるだけだろう。

しっかし今見るとこいつ、怪しすぎる格好をしている。

黒いマントに金髪、まるで何処かの童話に出てくる……吸血鬼だ。

 

「って、まさかあんた……吸血鬼?」

「やっとわかったか、そう……おれっちは吸血鬼の牙紗、闇夜の魔人だ」

 

金髪のガキはそういって仰々しくお辞儀をする。

確かにその姿は吸血鬼、しっかし化けたわね。

あのムカつく男がここまで変わるなんて思わなかった。

そうか……さっき煙のように見えたのは纏っているマントだったのか。

 

「そう、あんたさっきの……」

「まあな、この姿じゃ頭が足りない馬鹿が勘違いするからな」

「―――糞餓鬼、思いっきり騙されたじゃないの」

「なんだよ、自分から吸血鬼だっていう馬鹿はそうはいないだろ?」

「うるさい、餓鬼」

 

私は悪態をつきながら立ち上がる。

しかしそれさえも今の体は耐えられないらしく肩口から血が噴出す。

……こんな体で吸血鬼と一戦交えろって?

まあ……やるしかないって状況だけどね、相手はやる気満々みたいだし。

 

「口の減らないやつだな、まあそれなら戦えるだろ」

「うっさいわね、当たり前でしょうが」

 

メイスを開放して一振りの剣を取り出した。

聖剣草薙、この体で使いきれるかわからないけど……やるしかない。

距離は……およそ8歩の距離、聖剣の加護があれば2歩にまで縮められる。

多分この体で耐えられるのは一撃のみ、なら……一発で決めてやろうじゃない。

 

「いくわよ―――糞餓鬼」

「こいよ―――糞女」

 

―――地面を駆ける、腕には剣。

交差するまで……後1歩っ!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ、せぇいっ!!」

「―――"我、埋葬を厭わず"」

 

……っと、それだけで勝負は決まってしまった。

雪に激しく転がる体、目の前が反転して世界が可笑しな色に染まる。

そっか、一撃のみに賭けた私に誤算があったか……。

―――もう私の体は一撃にさえ耐えられなかったんだ。

動かない体が空へと向く、あぁ、降ってくる雪さえも赤く見える……。

可笑しいなぁ、私の予定だと今頃私はカノン学園で基礎魔法の練習でもしているはずだったんだけど。

何処をどう間違えたんだろな……、まあ多分一番の間違えはわかってる。

 

「―――だって、ここって……泣きたくなるぐらい寒いんだもんなぁ……」

 

雪が降っていた、そうだ……私寒いの苦手だもんな。

なら仕方ないじゃない、ここで負けようとそれは……この寒さのせいだよ。

そんな理由にならない理由を口にして私は少し苦笑する。

 

「最後ぐらい……あいつの顔が見たかったな……」

 

なんて、今まで一度も思わなかった事をポツリと呟いて私はゆっくり目を閉じた……。

 

 

 

 

「―――麻衣子?」

 

俺は麻衣子に呼ばれたような気がして空を見上げた。

あいつ……何かあったんだろうか?

まああいつがやられる事はないと思うけど何か漠然と不安がこみ上げる。

 

「まさか……な」

 

俺は首を振って無理矢理意識をこちらに戻す。

目の前の敵から目を離してはいけない、迂闊に目を離したらこっちがやられる。

 

「何よ、あんたみたいな餓鬼を私が相手しろっての? ―――冗談」

 

そういいながら銀色の長髪を揺らし気だるそうに歩いてくる女、レイナは手に持った巨大な斧を振りかざす。

さっきの攻防だけでも相手の力の強さは実感済みだ。

怪力で言えばゴーレム級、そして素早さで言えばワイバーン級だ。

流石は敵の大将ってだけあるか……もっとも手品のタネはまだありそうだけどな。

 

「はぁ……、―――"ファイヤーボールッ!!"

「舐めるな、初級魔法など避ける事もない」

 

その言葉どおり俺のファイヤーボールを一身に受けてもなんの効果もないように顔色を変えない。

………くそ、これ以上は魔力不足で使えないっつーのにな。

学園で魔力を消費しすぎた、今の俺じゃあ詠唱ありでも中級魔法がせきの山だ。

それなら―――俺の負けは決定的ってわけかよ。

 

「何? やっと諦めたの?」

「まあな、俺はやっぱ魔法の才能は全然ないわ」

 

俺はそういって軽く苦笑する、本当……俺には魔法使いの才能はまったくない。

そんなことは昔からわかってたけどやっぱり少しショックだな。

 

「だからさ……、やっぱ俺にはこれしかないみたいだ」

 

―――静かに右腕を空に向ける。

雪の空に向けられた手には絶えず雪が積もろうとするが"発火"しつつある俺の手に触れて蒸発する。

まったく、何回やってもこれは慣れないな。

そんな俺を見てレイナはサッと急激に青ざめた顔をする、まあ当たり前か。

 

「何よ……その魔力、あんた―――何者よ?」

「魔力……? これはそんな上質な物じゃないさ」

 

段々と体中に熱が回ってきた……、このぐらいで十分か。

俺は天空に向け言葉を紡ぎ出した。

 

「―――"我の呼び声に応えたまえ、我が内なる者よ"」

 

―――刹那、世界を漆黒に染め上げた。

体が変化していく……、いや、戻っていく。

茶色かった俺の髪は色素が濃くなり漆黒の闇に染め上がる。

体には数え切れぬ魔力が溢れ出し体外に絶えず零れ落ちる。

まったく、自分の本当の体だって言うのに未だにコントロールが慣れない。

 

「お待たせ、俺が相沢祐一だ―――正真正銘のな」

「………に、人間じゃないのか?」

「人間だぜ? 正真正銘の、お前だって見ればその位判るだろ?」

 

そう、この身は何の可笑しい事もないただの人間の肉体。

さっきまでの体の方が異常だったんだ。

 

「そんなわけないっ! 水瀬秋子でもそんな異常な体をしてるわけないだろ!!!」

「異常って……、中々に失礼なやつだな」

 

俺は不敵に笑いながら足を進める。

―――その度に足に当たる雪達が蒸発していく。

 

「なんなんだよっ!? あんたの体っ!!!」

「魔族にそこまで驚かれると凹むなぁ、流石に俺も」

 

苦笑しながら右腕をレイナに向けて軽く"押した"

 

「がはっ! がはっ!! な、なんだってのさ!」

 

それだけでレイナは腹を押さえて膝をつく。

へぇ、赤い血を吐くってことは人型か……変化型じゃないみたいだな。

吸血鬼、竜人、狼男などは人に化けるがその血は赤くない。

それで結構判別できるもんだけど、こいつは何の変化も出来ないただの人型魔族だ。

なら―――これ以上変化する事はないか。

 

「―――まあ俺に出会った時点でお前は運が悪かったんだ、悪いな」

 

俺はにっこり最大限の笑顔で笑いながら腕を振りかぶった……。

そして、レイナの体は灼熱の炎に身を包まれた。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第十一話いかがでしたでしょうか?

祐一君どうしたー( ̄□ ̄;)

更新遅れたゆきこうろぎです(汗)

結局十一話を二つに分けましたw

もう間に合わないので〜、ふぅ、時間がないぜぇ(TAT)

 

 

このS(以下略

 

 

 

 

―――第十一話★用語辞典―――

 

製作中

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