カノン商業地帯、第28番街の裏路地で少女は魔物に追われていた。

それはさっき起きた一瞬の出来事であった……、少女は28番街に住む平民の普通の女の子だ。

何も特別な事はない、しかし一般的な家庭に生まれた少女は今まで何不自由ない生活を送っていたのだが……。

しかし……それは一瞬にして崩れ去ってしまった。

突如として現れた魔物達はその時少女達が遊んでいた公園を襲撃してきた。

少女は運良く魔物達の襲撃から離れた場所にいたので即座に足は公園の出口へと向かってくれた。

しかし自分の思考が理解できず何故逃げてるのかさえわからなかった。

―――後ろから悲鳴のような哀願が聞こえようとそれを振り切って少女は走る。

ただ……怖かった、恐怖のみが少女の体を動かし悲鳴さえも上げずにただ走らせていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……っ」

 

わかってた、本当はわかってたんだ。

でも……それを認めるのは嫌だった、後ろから聞こえた声なんて知らない。

私とは関係ない人たちの声だ、あんな悲鳴に聞き覚えなんてない……。

そう思いながら私は必死に足だけを動かした。

 

「ひっく……はぁ……ひっ……はぁ……っ」

 

なのに何故、この瞳からは大量の涙なんてものが出てくるんだろう?

………だって、仕方ないじゃないか。

本当は私は知ってるんだ、悲鳴の声の主を。

―――だって、さっきまで一緒に遊んでた友達達はまだ公園で……今もそこにいる。

友達を見捨てて私は一人逃げだしたんだ……。

それに……今だって私の後ろを着いて来る魔物達が叫んでるような気がする。

 

「仲間ヲ見捨テタナ? 仲間ヲ見捨テタナ?」

 

声なんて聞こえるはずがない、でも確かにそういっているように聞こえる。

だから……それらが仲間を見捨てた事実を責めて来るような気がして……私は泣いた。

何も出来なかった自分の非力さに……ただ泣きながら謝るしかなかった。

 

「ごめ……なさい……ごめん……な……さい」

 

いくら謝っても魔物達は許してくれずただ速度を上げて着実に私の元へと近づいてくる。

もう……すぐ傍まで近づいてきている。

だって、すぐ後ろで荒い息遣いが聞こえてくる……。

後数歩も歩かず内に私は……追いつかれる。

だから……最後に……追いつかれる前に……みんなにもう一度だけ謝りたかった。

 

「一人で……にげ…て……ごめんなさい」

 

―――そうして、私の目の前に影が覆いかぶさった。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第十二話

「屋上の攻防戦(前編)」

 

 

 

 

「さて……っと、中々楽しかったぜ、秋桜麻衣子」

 

そう呟き牙紗は目の前に倒れている麻衣子を見下ろした。

……動く気配はない、完全に呼吸も途絶えた。

まだ死んではいないようだがそれも時間の問題だろう。

流石に敗者に攻撃する趣味は持ち合わせていない牙紗は反転して歩きだした。

 

「これで後は人柱候補に期待するのみだな」

 

秋桜麻衣子との勝負は中々楽しかった。

意外な攻撃も受けたし予想以上に抗戦してきた。

それにあの剣、どうやら魔剣の類だと思うが……、かなりの業物に感じられる。

多分最初に秋桜麻衣子が本領を発揮していたらどうなっていたのか、もしかしたら結果は違っていたかもしれない。

 

「まっ、それもあいつの運が悪かったんだろ」

 

相手の評価を勝手に下に見て最終的な結果が今に至る。

おれっちが先に本気になった時、既に勝負は決まっていたのだ。

吸血鬼とはそういうもの、一瞬でも相手が気を抜けば人間如き瞬殺出来る。

 

「カノン学園……か、在籍の魔法使いに期待って所だな」

 

おれっちはそう呟きながら聳え立っているカノン学園に向けて跳躍するッ!

肩で風を切りながら空を駆ける―――、目指すはカノン学園の進入口……屋上だ。

こういう要塞には必ず穴がある、それが天井からの進入だ。

魔法防壁は大抵壁に設置されているもので上空からの進入には疎い。

魔法使いは上空から来る者には対処が得意なのでそこまで防御を厚くしていないのが現実だ。

だから……こういう穴はおれっちにとってはかっこうの侵入口なのだ。

 

「よっと……、進入成功……って事だな」

 

音もなく着地をして黒いマントをはためかせる。

なんだ、意外と簡単だな……さてはおれっち以外の誰かがもう侵入した後か?

おいおい、少しは楽しみを残しとけってーの、拍子抜けじゃねぇか。

 

「―――げっ、なんだよ……あんた」

 

っと、おれっちがため息をつきながら呆れているとそんな声がすぐ近くから聞こえてきた。

―――あ?なんだ?

おれっちは声のした方に振り返るとそこには魔法使いっぽい服装の餓鬼が一人、驚いた顔をしていた。

金髪に変な癖毛がついている餓鬼で見た感じひ弱そうな顔立ちをしている。

 

「なんだぁ? てめぇは?」

「………ぐあっ、なんかすげぇボスキャラっぽいやつだな」

 

金髪の餓鬼はそういってため息をつく。

なんだ、こいつ……もしかしてここで隠れてやがったのか?

かっ!だから人間は嫌いなんだ、戦争の時に隠れる腰抜けなぞ魔物達に喰われてしまえばいい。

 

「……というわけでおれっちの目の前から消えな」

「おいおい、何が『というわけ』なのか知らないけどここは元々俺達の場所だろ?」

「黙れ、死にたくなければそこらへんに亀みたいに縮こまっていろ」

「む、中々ムカつくやつだな……小さいくせに」

 

―――決めた、こいつがこの学園の最初の生贄だ。

おれっちを『小さい』といったその口を切り裂いて魔物に喰わせてやる。

ついでにその変な癖毛も引っこ抜いて花壇にでも埋めてやるぜ。

 

「殺す……遺言はあるか?」

「うっわ、大人げねぇ……そんなんじゃ吸血鬼の名が廃るぜ?」

「はっ! てめぇおれっちが吸血鬼だってよくわかったな」

「誰だってその格好見ればわかるだろ、んな如何にも吸血鬼ですって主張された格好ならな」

 

そういいながら目の前の餓鬼は薄く笑う。

……こいつ、恐怖で頭がどうにかしたのか?

いや、この目は違う……これはおれっち達と同じ目だ。

―――心から戦闘を望んでいる魂からの叫び、楽しみたい一心で殺し合いが出来る瞳だ。

こいつは意外に拾い物かもな。

 

「てめぇ……名前は?」

「北川潤、ただの魔法使いさ」

 

―――そういって餓鬼、北川潤はにっこり笑う。

 

「北川……潤か、いい名前だな」

「そいつはどーも、で? お前の名前は?」

「おれっちの名前は牙紗、ただ戦いを求める者だ」

 

もうこれだけで十分、俺達は互いに一度だけ頷く。

二人同時に一歩間合いを離して構える。

それで殺しの合図は―――もう既に始まっていた。

 

「―――"我、埋葬を厭わず"」

 

おれっちは先制とばかりに腕に持った物から"それ"を解き放つ―――ッ!

目にも見えないほどの速度に達したそれは人間の反応速度を越え北川潤を襲う。

しかし―――まるでその軌道が見えてるのか北川潤は紙一重で体を反らしながら中級魔法を放ってきた。

 

「―――"アークフレアッ!!"

「ちぃ! やるなッ!」

 

おれっちは足元から立ち上る火炎の柱をかわしながら一時後退する。

これでまた間合いは離れたか、だが気になる事は……あいつおれっちの攻撃を避けやがった。

ただの魔法使いじゃないって事か……中々やるな。

 

「ひゅ〜、あぶねぇなぁ……」

 

北川潤は右腕をこちらに向けながらそう呟いた。

しかしその様子に恐怖などは一切ない、北川潤は命のやり取りが純粋に嬉しいみたいだ。

……中々見所あるやつだな、こいつは秋桜麻衣子以上に楽しめそうだ。

 

「行くぞ、北川潤ッ! ―――"我、埋葬を厭わずッ!"」

「くっ―――そぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

おれっちの放つ"それ"を北川潤は叫びながら必死にかわす。

―――こいつ、やっぱりおれっちの攻撃が見えてやがるのか?

ちぃ、これが単発式じゃなければ追い討ちもかけられるっていうのによ!

そして北川潤はおれっちの攻撃を避けきると静かに笑った。

 

「ふぅ、大体お前の攻撃は理解した」

「……何? どういうことだ?」

「それは……魔道具の類だろ? 形状は……そう、魔法銃だな」

「―――なっ!?」

「その上連続攻撃は不可、単発式の魔力で作動する感じかな?」

 

………驚いた、こいつたった二回の攻撃で全てを見切りやがった。

こいつの言う通りにおれっちの持つ魔道具……"我、埋葬を厭わず"の特性は全て合っている。

単発式のこいつはおれっちの魔力で作動する魔力変換銃だ、しかし……ここまでの洞察力がある人間も珍しい。

こんな短時間におれっちの魔道具を見切ったやつは初めてだ。

楽しすぎるぞ、北川潤……。

 

「訂正しよう―――北川潤」

「………何をだよ?」

「お前を我が本当の宿敵と認める、そして……これから先は死闘を演じよう」

 

おれっちはそういって封印された能力を開放した―――。

これより―――この場は死場と――化す―――。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第十二話いかがでしたでしょうか?

北川オンリーw

頑張れ脇役頑張れアンテナ。

次回も戦闘ばっか……、戦闘以外の何者でもないっすよー。

 

 

こ(以下略

 

 

 

 

―――第十二話★用語辞典―――

 

製作中

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