そして―――影が私の目の前に覆いかぶさった―――。

 

「―――っと、ギリギリセーフだったみたいじゃな」

「………え? な、何?」

 

しかし、その時私の口から出たのは恐怖ではなく疑問を意味する言葉だった。

私の目の前に覆いかぶさるように現れた影は小さなもので断じて魔物のそれではない。

 

「あなた……誰?」

 

私は呆然として目の前にいた一人の"男の子"に話しかけた。

見た目は私とあまり違わない容姿でありながら威風堂々としたその姿はどこか大人びている。

そして、その両手にはなんの冗談か……銀色の扇子のようなものを一つずつ持ってその場に立っていた。

その男の子はまるで私を守るが如く、私の目の前に立って後ろから追ってきた魔物達と対峙している。

―――いけない、このままじゃこの子までっ!

 

「に、逃げてっ!」

「………? なんでじゃ?」

 

男の子は本当に不思議そうな顔でそう返してきた。

変な喋り方の男の子だなんて事はどうでもいい、今はこの男の子を私が守らないと。

だって、見れば……私より身長が低くて何処となく抜けてそうな感じして……私の弟に似ていたから。

だから―――今度こそは私が守る番だ、ここで逃げたら私は一生後悔する。

そう考えたら体はまだ震えるけど立ち上がる勇気だけは少しだけ回復してくれた。

これなら……少しは動ける。

 

「わ、私が……引きつける…から、逃げ……て」

 

声が震える、そんな情けない私だけど目の前の男の子を不安にさせたくなくて一生懸命笑顔を作った。

武器……何か……木の棒でもいいから…何かないかな。

魔物達はいきなり現れた男の子に驚いて一瞬動きを止めたけどすぐにまたジリジリと近寄ってきている。

このままじゃ……間に合わない、二人とも……。

 

「安心するがいいぞ、我がそなたを命に代えて守るから」

 

……っと、目の前に立っていた男の子はそういうとにっこり笑って歩きだした。

―――その先には数え切れないぐらいに集まってきた魔物達の群れ。

 

「だ、だめ……っ」

 

私は急いでその男の子へと手を伸ばすが……もはや間に合わず、その男の子との距離は離れてしまった。

そして……男の子の周りを囲むように魔物達は包囲する。

―――私はまた……守れなかったみたいだ。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第十三話

「屋上の攻防戦(後編)」

 

 

 

 

「やっばいなぁ……」

 

俺はそう呟きながら目の前にいる吸血鬼を見ていた。

……あーあ、こりゃ計算外だわ、まさかこれほど吸血鬼が手におえない存在だと思わなかった。

緑色だった瞳を金色に変えてその上体を包む魔力量が増大した。

はっきりいってこれは予想外、もしかしたら俺はとんでもない化け物に勝負を挑んだのかもな。

―――これが闇夜の支配者、不死者である吸血鬼の真の姿か。

 

「待たせたな、北川潤」

「あー、お気にせずにもうちょっと時間かけても構わんよー」

 

不思議と恐怖はなかったが頭でははっきり理解していた。

―――俺じゃこいつを倒しきる事は出来はしないな……と。

魔力量、持っている武器の質、そして……吸血鬼ならではのその耐久力。

総合的に見て俺が勝てる確立なんて0に近いだろ……。

 

「それじゃあ始めようか? 死闘をな」

「んー、俺的には他人にバトンタッチしたいんだけどな〜」

 

俺は苦笑しながらそういうと目の前の吸血鬼は呆れたようにこちらを睨む。

……うわ、すっげぇ殺気……やる気満々だなぁ。

逃げる事は出来ないな、背を向けたらさっきの魔道具で殺されそうだ。

 

「ふざけるな、おれっちはお前と本気で戦いたいからこの姿になったんだ」

「いや〜、そこまで期待されてもなぁ……」

 

過大評価されても全然嬉しくなかった、寧ろ俺は過小評価ぐらいで丁度いいんだけどなぁ。

仕方ない、出来るだけ……やってみるか。

俺はそう思いため息をつきながら腰に差していた剣を抜く。

吸血鬼と本気で戦うとなったら俺も最初から全開でいかないと……数秒でやられちまうな。

 

「あ? なんだ、お前も隠し玉持ってんのかよ……しかもそりゃ剣か?」

 

吸血鬼は何が可笑しいのか薄く笑いながら俺を指差す。

お前も?俺の他にも、もう既に戦ったやつがいたのか……。

結果は……いうまでもないか、こいつがここにいるっていう事は自ずと答えがわかる。

敵討ち、なんてのはガラじゃないがまあ少しはそうなればいいな。

 

「行くぜ―――"ローエンシュヴェルト"」

 

俺は北川家魔剣、ローエンシュヴェルトを抜くと真っ直ぐ吸血鬼に向ける。

これでこっちの準備も整った。

後は……この魔剣がどれだけ通じるかが問題だ。

 

「いいねぇいいねぇ! ゾクゾクくるぜッ!」

「………戦闘狂、まったく、こっちはいいとばっちりだぜ」

 

すると―――目の前の吸血鬼は意外そうな顔をしてそしてその後すぐに可笑しそうに笑った。

 

「何を言ってやがる、そんなにも楽しそうな顔しやがって……説得力にかけるぜ!?」

 

―――そういわれて、初めて俺は自分が笑っている事に気がついた。

はっ!なんだ……そうだったんだ。

俺も最初から狂ってたんだな……吸血鬼と同じように俺も戦闘狂だって事だ。

 

「―――はは、ははははははっ!」

「くっくっく、あっはっはっははははははっ!!!」

 

俺達は笑いあう、やばいなぁ……今から殺しあうって言うのに楽しすぎる。

―――学園内ではいつも俺は目立たないようにしていた。

魔法の勉強も適当に……美坂の言うとおり本当に才能だけでやってきたと思う。

それでも学園内では序列1位になってしまったりして正直ガッカリした。

今―――その理由がよく判った気がした。

 

「俺も訂正するぜ?」

「何をだよ? 北川潤」

「お前を俺の好敵手と認める、本気で戦おう」

「―――いい覚悟だ、北川潤」

 

俺達は示し合わせたように軽く笑いあう。

そうだ、俺とこの吸血鬼は同属なんだ。

同じ―――好敵手を探している、自らの命を賭けられるような戦場を探していたんだ。

 

「行くぜ、吸血鬼」

「来いよ、北川潤」

 

―――もう遠慮する事はない、観衆がいようと関係ない。

これほど楽しい戦いを出来るなら……自分の家なんか棄てようじゃないか。

この戦いは常に全開、出し惜しみはなしだっ!

 

「―――"ローエンシュヴェルトッッッ!!!"

「―――"我、埋葬を厭わず塵と化せっ!!!"」

 

そして……屋上に二つの魔力が交差した……。

 

 

 

 

今、目の前で起きていることが信じられなかった。

魔物達に囲まれた男の子はなんの抵抗もせず、たった今魔物達に飲み込まれた。

しかし……次の瞬間、魔物達が一瞬にして吹き飛ばされるのを私はこの目で見ていた。

魔物達を吹き飛ばした中心に立つ男の子の手には扇子が二つ、まさかあれで魔物を吹き飛ばしたとでもいうのだろうか?

 

「まったく、今回の事は御主らが悪い……怪我をしたくなければ早々に立ち去るがよいぞ」

 

男の子はそういいながらゆっくりと吹き飛ばした魔物達に近寄っていく。

その姿はまるで……台風、近寄れば吹き飛ばされて抵抗など不可能。

それを回避したければただ避けて去る事しか出来ない、その身一つでは台風を防ぐ事は不可能だ。

魔物達もそう感じ取ったのか、一匹……また一匹と男の子の傍を離れ逃げ出していった。

………なんなんだろうか、この男の子は?

魔法使い……?いや、何故かわからないけどそれとは違う気がする。

私が物思いに耽っていると男の子はゆっくりと私に向かって歩いてきた。

取り敢えず……お礼を言わなきゃ。

 

「あ、あの……あ、ありがとう」

「ふむ、気にする事はないぞ? 我は当然の事をしたまでじゃ」

 

そういって男の子は笑う。

その姿を見て……どうしてもさっきの台風のような雰囲気は感じられなかった。

私はまだ混乱する頭でふらふらと立ち上がると……何故か口が勝手に動いた。

 

「あなた……名前は?」

「ん? 我の名か? 我は八雲豊と言う、よろしくなのじゃ」

「は、はぁ……えっと…豊くん?」

 

私が呆然とその名前を口にすると男の子、八雲豊は嬉しそうに笑った。

その姿は年相応で、やっぱりさっきの出来事は夢だったのだろうかと思わせるほどだった……。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第十三話いかがでしたでしょうか?

北川オンリーw

またかよっ(何

意外と戦闘狂な北川くん、ちょっと危ない人になってますwww

しかし時間がないー!(´A`;)

見直しすら出来ないこのヘタレさ……誤字ありそー(爆)

 

 

こ(以下略

 

 

 

 

―――第十二話★用語辞典―――

 

製作中

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