「ふむ……何やら不穏な気配がするのぉ」

 

そう呟きながら手に持った扇子をパタパタと振っているのは八雲豊。

先ほどの戦闘のおり助け出した少女はもう王国の兵士に保護を頼み再び手持ち無沙汰で一人町を歩いている。

―――水瀬秋子から伝えられた任務は町に入り込んだ魔物の撤去とそれを仕切る幹部の撃退。

本当は魔物達を傷つけず追い返した所だったがさっきからどうも様子が可笑しい。

こちらの言葉は一切無視してただ襲い掛かってくるのみ、それほど知性がない魔物も珍しい。

どんなに低級の魔物だって少しは遠慮や躊躇がある……なのに今現在進行中の魔物達にはそれが一切なかった。

 

「まったく、誰が操っているのかは知らんが余計な事をしてくれる」

 

ただでさえ魔物達は人間から見て「悪」なのだ、それをこんな形で煽るような真似をするとは……。

まったく、本当にいい迷惑だ……八雲はそう呟きながら空を見上げる。

すると空には雪に紛れて何体かのワイバーンが飛び交っていた。

……やつら、ついに竜まで呼び出し始めたのか。

ワイバーンは竜系の中でも低級だが魔物としてのレベルは中級魔物の中でも最上級に位置する。

魔法を弾き返す鱗に岩をも砕くその牙、危険性でいえば既に上級の魔物といってもいい。

 

「マズイな、これは本気でカノンを潰しに来ているみたいじゃな」

 

さてさて、これはこちらも本気であたらないと手遅れになりそうだ。

取り敢えずは幹部級と話さない事には何も出来ない。

―――出来れば魔物達には自分達の意思でこの街から離れて欲しいものじゃな。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第十七話

「激戦×決戦」

 

 

 

 

「―――"闇夜を照らす業火と成れ、ファイヤーボールッ!!"

「―――"天を撃ち抜け灼熱の業火よ、フレアッ!!"

 

その瞬間、廊下は一気に炎で彩られた劇場と化した。

火炎球が迫り来る魔物の群れを焦がし舞い上がる炎の柱が逃げ惑う魔物達を足止めした。

初級魔法とはいえ実力のある魔法使いが使うとその威力は格段に上がり廊下全体を炎で埋め尽くす事も可能だ。

よって廊下一面に展開していた魔物達は突然の来襲に成す術もなくただ燃やし尽くされていった。

杖を構える魔法使いは二人、一人はウェーブのかかった黒髪を舞躍らせる美坂香里。

有名な貴族の生まれである彼女は血の滲むような努力によって数々の魔法を使いこなす魔法使いだ。

そして隣に立ち長い鉄製の杖を槍のように構えているのは倉田一弥。

こちらも有名な貴族の生まれで発展途上ではあるがその実力は確かな魔法使いだ。

 

「ふむ、よくやりましたね……美坂君に倉田君」

 

そんな彼らの後ろに待機していたアーレンが二人の健闘振りを称えながら手を叩く。

そしてさらにアーレンの後ろには二人の男子生徒が戦っていた二人の様子をジッと見ていた。

 

「いや……流石に序列1位と序列7位のコンビですね、予想以上だ」

 

そういって静かに久瀬英貴も二人の健闘を称えた。

本来ならば自分のライバルでしかない序列生徒だがこういう時には頼もしい。

学園の廊下は狭く自分を含めて5人もの魔法使いが戦えるスペースは確保出来ない。

なので提案として交代交代に二人ずつ前に立ち対処するという制度を試してみた。

これは予想以上の効果を発揮していた、それは戦闘面だけではなく見ている方にも多大な効果が得られる。

普段は敵対する事でしか測れなかった相手の実力。

しかし実戦を後ろで間近で見られるとなると相手の実力が手に取るようにわかる。

これはいい、普段見れない一面を見れる事は魔法使いとして勉強になる。

だが……自分の番はあまり来て欲しくはない……これだと他の魔法使いに自分の実力まで悟られてしまう。

……それに二人が先ほどから初級魔法しか使わないのは自分の手の内を他の魔法使いには曝したくないからだ。

これだから魔法使いは複雑で困る、自らの力は誇示しておきたいがそれを曝す事は出来ない。

そんな矛盾がいつも付きまとう厄介な職業が……我々を絶えず魅了する魔法使いというものだ。

 

「それでは次は久瀬君と槇村君にお願いしようかな?」

 

そういってアーレンは美坂香里と倉田一弥に今度は後衛に回るよう指示する。

そしてその後後ろに振り返り久瀬英貴と槇村剛毅に前衛を任せた。

―――仕方ない、多少のリスクはあるがこちらにも得るものはあった。

そう自分を納得させて久瀬はゆっくりと一歩前へ出る、槇村は黙って一人久瀬を置いて歩き始めていた。

 

「……槇村君、君の担当は廊下の右半分だ、僕は左半分を担当する」

「………必要ない、俺一人で片付ける」

 

久瀬の提案に槇村は首を横に振りながらそう呟いた。

……よほど自分の力に自信があるのか腰に差してあった小型の木製の杖を取り出しながら一人黙って先を歩く。

まったく、これだからチームワークを理解できていない相手と組むのは疲れる。

魔法使いの中にも実戦経験が乏しくこういう勘違いをする者も少なくない。

自分は強力な魔法が使える、だから魔物如きに負けるはずはない……っと。

しかし忘れてはいけない、本来魔法使いとは前衛を味方に任せ自分は後衛として前衛を補助する立場なのだ。

その原因として詠唱時間の問題や魔法を使う場合に消費される精神力の低下の問題もある。

戦闘中に長い詠唱など出来るはずもない。

ましてや戦闘中に段々と精神力が衰えるような連続的戦いは魔法使いには向いていない。

なので自分を守ってくれる前衛、または補助要員がいないと話にならないのだ。

確かにその対策として詠唱破棄などの魔法使い自ら前衛に立つ方法が作られたのも確かだ。

だがやはり長期戦になりそうな今回は出来るだけ精神力や魔力を温存した方が効率がいい……。

 

「そうはいかないよ、僕達は出来る限り魔力を抑えて戦うべきだ」

「………大丈夫だ、それ用の対策は考えてある」

 

そういって槇村は軽く笑う。

いつもは終始無表情なはずの彼の笑い顔を見たのは結構久しぶりだった。

しかしそれ用の対策とは何だろうか?

久瀬は不思議そうに槇村を見ていたが遠くから聞こえてきた鳴き声に思考を即座に切り替えた。

……今の鳴き声は…まさか…ドラゴンか?

 

「………どうやらワイバーンみたいだな」

「そうですか、これは魔力を抑えるとかいってられませんね」

 

久瀬はそう呟くと静かに魔力を体中に行き渡らせ始めた。

しかし、そんな久瀬を見て槇村は静かに久瀬を制しまた一歩前に歩み出した。

 

「………だから……任せておけといっただろう?」

「相手は低級の魔物じゃない、竜族です……その手強さは魔法学で学んでいるはずでしょう」

 

魔法耐性が強い竜は魔法使いにとっては天敵である。

初級の魔法など無効化に等しい程の耐性の持つ竜族には魔法使いは本当に相性が悪い。

中には上級魔法さえも通じない化け物さえいるから竜は魔法使いにとって相手にしたくない魔物なのだ。

だが槇村はそれでも1人で前に出て小型の杖をまだ見えぬ廊下の先にいる魔物に向ける。

 

「………竜族の対魔力の強さは知っている」

「ならば意地を張るべきではない、ここは協力し合うべきだ」

「―――心配するな、俺には勝算がある……久瀬は巻き込まれないように下がっていてくれ」

 

何故か自信満々な槇村を見て久瀬は呆れたように後ろにいるアーレンへと振り返る。

……どうにかして欲しいと口に出さず表情のみで伝えようとするがアーレン達はただ黙ってこちらの様子を見ているだけだ。

やはりよほどの危機がない限りは手助け無用……っということらしい。

これは困った、補助しようにも槇村が何をするか全然わからない久瀬はただ黙って引き下がるしかなかった。

そんな久瀬を見て槇村は満足そうに微笑むと詠唱を開始した。

 

「―――"猛り狂え大地"

 

―――瞬間、久瀬は自らにも迫る危機を感じ取り槇村から急いで距離をとった。

 

「―――"その身に宿りし力を解放せよ、大いなる顎で噛み砕け "

 

まさかと思うより体は先に動く、槇村から数歩距離をとり周りに出来る限りの魔法障壁を張り巡らせる。

 

「―――"暗黒の世界へ引き摺り落とせ、愚かなる者達を光届かぬ場所へ"

 

詠唱が完了する、そして丁度良くそこにワイバーン達がこちらに迫ってくるのが見えた。

しかし……今の久瀬にはワイバーン達よりも目の前にいる槇村の方が危険な存在であった。

 

「いけませんね――美坂君、倉田君、自己防衛を最大にしてくださいっ!」

「わ、わかりました」

「僕は防御魔法は苦手なんですけどね……」

 

後ろにいる3人もその危険性を感じ取り自らの周りに魔法障壁を張る。

それを気配のみで確認して槇村剛毅は最後の一言を開放した。

 

「―――"グランバニッシュッ!!"

 

その瞬間、久瀬達がいる"空間"が揺れた。

あまりの衝撃に空を飛ぶワイバーンが地面に落ちる……しかし、そこには何故か地面が存在しなかった。

あるのは黒き大穴、地割れのように開けた漆黒の闇が地面の代わりにそこに存在していた。

飲み込まれるワイバーン、鳴き声は遠く……そして消えていった。

そして数秒後、何もなかったようにその穴は塞がり空間は元に戻っていく。

最後には……先ほどと何も変わらぬ静まり返った廊下がそこに存在していた。

 

「ほら……大丈夫だっただろ?」

「………そうですね、まさか上級魔法を扱えるとは思ってませんでしたよ」

「まあ魔法使いは実力を隠すものだからな」

「そうですか……それは計算外でしたよ」

 

久瀬はそういいながら"槇村に向かって"杖を構えた。

槇村はそれを見て不思議そうに首を傾げる。

まるでそんなことをされる事が理解できていないようだった。

 

「何の真似だ?」

「―――あなたは槇村剛毅じゃありませんね?」

 

戦闘は激化してまだまだ続いていくようだ……。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第十七話いかがでしたでしょうか?

学生の戦闘開始〜。

意味わからねーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーー!!!!!

展開が急過ぎっ!もう少し詳しく書き直す必要がかなりあるかと……!

でも公開します、えぇ。

まあ次回に真相は持ち越しってことで〜……この話自体を書き直す場合もあるけど(汗)

 

 

 

 

―――第十七話★用語辞典―――

 

製作中

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