「真琴、どうしましょう?」

「どうしましょうって……どうしよう?」

 

私はため息をつきながら周りを見渡しました。

そこにいるのはワイバーンの群れ群れ群れ……、これほどの数を操る首謀者には感嘆の意を表します。

やっている事は間違いでもこれは凄い事です。

普段竜族は単独で動く事がほとんどでワイバーンなんてその象徴。

単騎で攻める攻撃力、防御力を持つ彼等は群れを作らず単独で行動を行う竜族のはず。

群れを組むとしてもそれは何か特別な理由がある場合しかありません。

―――カノン潰し、これは上手くいく可能性が出てきましたね。

多分相手の方が一枚上手な気がします。

 

「真琴にはワイバーンを倒すつもりはないよ? 倒すなら中心人物だと思うし」

「……そうですね、魔物に罪はありません」

「難しい事はわからないけどまあ人間を襲うようならお仕置きぐらいはするけどね」

 

それが私達のスタンス、方針でもある。

世界中を旅してきた私達にはわかるのだ、本来魔物達は普通の生物と変わらぬ生活をしている。

それは中には人間を食料にするようなものもいるがそれは仕方ない事でもある。

人間だって野兎を食べ、野鳥を食べる……魔物の方もたまたま人間が食料になる場合もあるというだけなのだ。

確かにそれは人間にとってはとんでもない事だ、その分には反撃や防衛をするのは当たり前だとも思う。

しかし、その結果全ての魔物=人間の敵と思われる事がいけないのだ。

魔物の中にも心優しいものだっている、それは人間だって一緒のはずだ。

野兎を食べずに植物を主食にする人間だっている、魔物も同じで草食なものもいるのだ。

そこの違いをわからない人間が増える事は……とても哀しいことだ。

 

「でも美汐、この子達なんかこっちを見てるよ?」

「草月も元はワイバーン、何か感じるものがあるのではないのですか?」

 

多分草月がいるから私達は攻撃されない……、竜族は同種同士の戦闘はしない事で有名なのだ。

ある者はそれを「竜の契約」と呼び、決して破られる事のない誓いとされいている。

それ故に草月がいる限り私達に攻撃はないものと見ていいでしょう……。

ならば目指す場所にはこの子達と一緒に着くことでしょうね……。

―――カノン城、目的の場所に着くまでは暫しこの空の旅を楽しむとしましょう。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第十八話

「紅き戦火の渦」

 

 

 

 

「どういう事だ? 久瀬……何の真似だ」

「何の真似……とは惚けますね、もう一度言いましょうか? あなたは槇村剛毅じゃありませんね?」

「……何を言ってるんだ、俺は槇村剛毅だ」

「―――甘いですよ、僕を誤魔化せるわけないでしょう」

 

僕はそういいながら手に持っていた杖を槇村剛毅モドキに向ける。

……まったく、まさかバレないとでも思ったんですかね。

 

「根拠はなんだ……?」

「それはもう沢山に、一つずつ説明しましょうか?」

「―――ほぉ、ふ……ふはははは、これはこれは……予想外だったよ」

 

槇村剛毅モドキは可笑しそうに笑いながら両手をあげた。

……降参という意味か、それとも……もしかしたら攻撃の合図かもしれないな。

僕は用心深く少しずつ後退しながら杖は真っ直ぐ槇村剛毅モドキに向け魔力を漲らせる。

後ろでは既に美坂さんと倉田君……そしてアーレン先生が異変に気づき警戒を高めている。

……これで詰みとなってくれれば楽なのですが、そうもいかないでしょうね。

 

「なぁ、一つ聞いていいか?」

「……なんですか?」

「何処で確信した? 結構変装には自信があるんだけどな」

「そうですね、絶対的確信はやっぱりさっきですよ……あなたは上級魔法を使った」

 

そう、それが槇村剛毅を偽者だと確信した瞬間だった。

カノン学生が廊下内で上級魔法を使うなどありえないのだ。

……何故ならカノン学生は入学する際に契約を交わす。

それは誓約の契約書、それを侵した者には必ず契約の執行が執り行われる事になっていた。

そしてその契約書の中でこんな一文が存在している。

"学園内では闘技場などの専用の行使場以外での上級魔法以上の行使を禁ずる"

つまり、我々学生は上級魔法を学園内の廊下では行使する事が出来ない。

契約を誤魔化し行使するならばそれ相応の専用魔道具などが必要となるが槇村剛毅はそんなものを持っていない。

だから確信した、こいつは槇村剛毅ではない……っと。

 

「……それで? あなたは何者ですか?」

「そう簡単に言うと思ってるかい?」

「いいえ、聞いてみただけですよ―――"ファイヤーボールッ!"」

 

僕は槇村剛毅モドキに向かっていきなりノータイムの詠唱破棄魔法を行使して不意をつく。

―――まあ、これだけで相手が倒れてくれるとは思いませんがね。

予想通り槇村剛毅モドキは一瞬驚愕に顔を染めたがすぐに我に帰り難なくファイヤーボールを避けきった。

……僕はその隙に魔力で強化した脚力を使い一気に後ろへと跳躍して距離をとる。

 

「詠唱破棄か……流石は魔法使い、やる事が素早いねぇ」

「お褒めに預かり光栄ですよ」

「それでどうする? 4対1で来るかい?」

 

そういって槇村剛毅は「かかってこい」と言わんばかりに挑発的な瞳でこちらを見ている。

よほど腕に自信があるのか、それとも何か秘策でもあるのか。

……どちらにしろ、これは下手に手出しできませんね。

 

「どうしますか? アーレン先生」

「……この狭い廊下で一斉にっていうのは逆に不利ですね」

 

アーレン先生はそういいながら苦笑してこちらに顔を向ける。

……アーレン先生が攻め手を迷うほどですか、これは一大事だ。

僕もこんな人目がある所で「あの方法」は使いたくない。

 

「なんだぁ? かかってこないのかよ?」

「………久瀬君、どうにか出来ませんかね?」

「冗談でしょう? 僕にあれの相手をしろと?」

 

それは契約違反だ、あんな正体不明なものに挑む利益などない。

僕らの目的は低級の魔物、中級の魔物を相手にすることなはずだ。

……これ以上の働きは期待してもらっても困る。

 

「しかし今ここにいる中で一番の実力者は多分あなたですよ?」

「……アーレン先生がいるでしょう」

「まだそこまでの緊急事態ではないですよ、あなた達に任せます」

 

―――何を言っても無駄……か。

仕方ない、ここは早々に相手に退散してもらいましょうか。

 

「美坂さん、倉田君、手伝ってもらえますか?」

 

僕はそう後ろに控えている二人に話しかける。

すると美坂さんと倉田君は微妙な顔をしながらこちらを見つめていた。

……これはこれは、どうやら企みは見透かされてるみたいですね。

 

「久瀬さん? ここはあなたの番だと思いましたけど?」

「そうね、私達はもう戦闘をしたんだから今度は観察する側よ」

 

はぁ……、やはりですか。

手の内は見せたくないんですけど退路も防がれましたね。

多分先ほどのアーレン先生の言葉に同調しているんでしょうけど、正直困りましたね。

相手の戦力がわからないのに戦闘をするなんて愚行だ。

やれやれ、こんな色々と不利な勝負は正直したくありませんね……。

 

「……仕方ありません、偽者槇村君……僕が相手だそうです」

「なんだ? 結局お前が相手かよ」

 

……僕だってあなたの相手なんてしたくないんですけどね。

まあ、学園側の命令だから今回は仕方ない……乗りましょう。

僕にとって今はまだ学園側の信頼を是非とも勝ち取っておきたいですからね。

 

「始めに警告しておきますがここで退いてくれませんかね? 手加減しませんよ?」

「心配ない、ただ魔法使いの死体が一体出来上がるだけだろ?」

「―――言いますね、その自信……打ち砕きたくなりましたよ」

 

杖を構え僕は槇村モドキに向かい構える。

そんな僕を見ても槇村モドキは構えずにこちらをただ笑いながら見ていた。

―――相手は槇村剛毅と同じ戦闘力かそれ以上、まあそれ以上と考えた方が普通ですね。

ならば一筋縄ではいかない事は確か、相手は序列生徒並みの戦闘力。

それ相応の対応で行かないと……こちらが負ける。

 

「―――"暗き闇より出でよ漆黒の剣、シャドウエッジッ!!!"

「ほうっ!? これまた珍しいもの使いやがるな!」

 

そうボヤキながらもその身を半身反らしただけで僕が唱えた魔法の剣の投影を避けきった。

まったく、矢や槍より素早い魔法をそうも簡単に避けないで欲しいですね。

――その動体視力と反射神経には敬服の意を示しますよ。

やはり初級の魔法では意味がない……、ならばそれ以上の魔法を浴びせかけるまでだっ!

 

「―――"我が求めしは漆黒、我が与えしは侵食、復讐者はその身を食い尽くす、ダークアヴェンジャーッッッ!!!"

「初級魔法が駄目なら中級魔法か? まったく、どの魔法使いも順序とやらを大事にしやがる」

 

―――地面を闇が侵食する、廊下全てを飲み込まんとする闇の復讐者は槇村モドキに襲い掛かる。

槇村モドキは愚痴をたれながらも跳躍して迫り来る侵食をかわす。

甘いですね、闇の復讐者は執念深い……その程度の跳躍では避けられませんよ。

 

「な……にぃ!?」

 

闇の中……もっとも深き漆黒の世界から現れるは闇の復讐者。

侵食された闇の中から現れた巨大な人影、いや……それはもはや「人」の影ではない。

下半身を馬に変え上半身は漆黒の鎧で固めた「アヴェンジャー」はその手に持つ銀槍を振りかざしながら槇村モドキに突っ込む。

対して槇村モドキは跳躍中、逃げ場は……ない!

 

「ちぃ! やっかいな魔法だぜ……、"アークディアクディッ!!!"

 

槇村モドキは手に持っていた杖を「アヴェンジャー」に向け詠唱破棄の氷系中級魔法で迎え撃った。

なるほど……避けられないならせめて威力の軽減を図ろうというわけですか、中々いい判断ですね。

しかし……それでも甘い、この魔法をただの中級魔法と一緒にしたら怪我しますよ?

 

「―――貫けっ! アヴェンジャーッッッ!!!」

 

「アヴェンジャー」の銀鎗が槇村モドキのアークディアクディを難なく貫き、そしてそのまま体も貫いた。

しかし、浅い……やはり中級魔法を破壊した際に多少威力が落ちたのか槇村モドキの腹を少し抉っただけに留まった。

槇村モドキは姿勢を崩しながらも何とか不恰好に着地してこちらを睨みつけている。

………仕留め損ねましたか……まあ、いいでしょう。

掠り傷でも傷を負わせた事には変わりない、これで状況は僕に一歩優勢って所ですね。

 

「………ぐっ、やるじゃねーか」

「お褒めに預かり光栄ですね、しかしあなたの対応も中々でしたよ」

「いや、今のは判断ミスだ……だがまさかとは思ったが、お前……闇魔法使いか?」

「さあ? どうでしょうね?」

 

闇魔法、魔法使いの中でももっとも習得が難しいとされる種類の魔法だ。

この魔法使い養成目的であるカノン学園でさえ闇魔法を扱えるものなどそうはいない。

それほど習得が難しく、また使用条件も実戦向きではない為多くの魔法使いが嫌う分野だ。

だが……そんな敬遠される闇魔法だが破壊という点に置いては他の系統の魔法より優れているのも確かなのだ。

世界に光が満ち溢れるように、世界には闇が必ず存在する。

その闇を操る術、世界という巨大な力を利用する闇の魔法は使い方さえ覚えれば……なんと心強い魔法だろう。

元来この魔法は使うだけで異端扱いされていたが時代も変わり今では使用も認めれている。

 

「思わぬ伏兵って所だな、正直ここまでやるとは思わなかったぜ」

「そうですか……、それならそろそろ退いてはくれませんかね?」

 

僕は苦笑しながら槇村モドキに向かってそう告げる。

……正直僕にもこれ以上の戦闘行為を続けるにはリスクが高すぎる。

今の「ダークアヴェンジャー」も一種の賭けのようなものだ。

僕が「闇魔法使い」という事はもうカノン学園では周知の事実だがその実態までは殆ど知られていない。

これ以上の能力の行使は今後の学園生活に支障が出る、これ以上はマズイ。

ただでさえ今後ろにいる二人は序列生徒、倉田君はまだ安全かもしれないが美坂さんは同学年。

もっとも戦闘回数が多いであろう彼女にこれ以上の情報は与えたくない。

 

「退け……か、それもいいかもしれないな」

「……………」

「だけどな、俺達魔族はプライドを傷つけられるのは大嫌いでな……借りはつくらねぇんだよ」

 

槇村モドキはそういうとあろう事か杖を床に放り投げた。

………戦闘を続行する気があるのに杖を投げ捨てた?

僕は相手の行動に呆気を取られながらも杖を向けて警戒を続けた。

―――何かの意図があるのは間違いない、相手は魔族……一筋縄ではいかないな。

 

「一つ先に言っといてやるよ」

「………なんだい?」

「―――テメェの力、全てパクらしてもらうわっ!」

 

瞬間、槇村モドキの体が爆発したように膨れ上がる……!

辺りに魔力が満ち溢れ目も開けられない程の疾風が僕の体をその場に固定する。

こ、これは……まさか……同調の魔法……!?

くっ……まさか僕がこんな油断を……っ!!!

 

「しまった……! 久瀬君! 避けなさいっ!!!」

 

アーレン先生が杖を片手に後ろから走りだすのが見えたが……遅い、これでは間に合いませんね。

体を風の力で束縛されている僕は避ける事も出来ずにその場に立ち尽くす。

仕方なく、僕は覚悟を決めて目の前で変化しつつある魔族の体を見つめていた。

僕の考えが正しいなら……今目の前にいるのは……。

 

「ふぅ……待たせたね、オリジナルの僕」

 

寸分違わぬ僕の贋作、カノン学園序列2位の久瀬英貴のドッペルゲンガーの魔物だ。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第十八話いかがでしたでしょうか?

ギブアップ……、今回はそんな感じです(汗)

道化師の設定でいっぱいいっぱい……、くはぁ。

結構無理がないように真実などを加えていくのは難しいものですな……OTZ

 

 

 

 

―――第十八話★用語辞典―――

 

製作中

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