「さて……っと、問題はこれからだよな」

 

学園内に再び戻ってきたはいいがこれからどうしようか。

学園内は出てきた時と大して変わらず今走っている廊下もまだ綺麗なものだ。

それほど戦闘は起きていないという事なのか……それとも他の場所に集中しているのか。

まあそんな事はどうでもいい、取り敢えず知り合いと遭遇したいものだが……。

まだ知り合いなんて少ないし都合よく遭遇できるとも思えない。

名雪や栞、それに北川……と言ったか?

まあ北川とは変にまた因縁つけられては堪らないから出来れば今は会いたくないがな。

そいつらが何処にいるかさえわかれば苦労はしないんだが……さて、どうするか。

 

「取り敢えずこうして校内を走り回る事しか出来ないか……」

 

魔力の衝突による違和感を肌で感じるが場所が特定出来ない。

近くではないことは確かなのだが……一体何処で戦闘が行われてるんだろう。

俺は走りながら感覚を研ぎ澄まし魔力や気配の残留が残っていないか探した。

 

「………ん? 何か微量だけど視線を感じる?」

 

しかし足を止め振り返るがそこには誰もいない。

……うーん、視線だけで殺意や殺気はないから別にいいんだけど気になるな。

まるで俺の事をつけてきているみたいだ……。

 

「気配の消し方は満点だけど……一体誰だ?」

 

取り敢えず言える事は知り合いではないな。

今まで会ってきた中でこんなにも気配を上手く消せる者には会った事がない。

……麻衣子は直角的過ぎて気配を消す事は苦手だし名雪や栞は無理だ。

唯一北川だけは出来そうだけど……する理由がないな。

それにしても視線が離れない、常に同じ速度で距離を詰める事もしなければ離す事もしない。

かなりの実力者だな、尾行がとても上手い。

さて、こんな事してても時間の無駄だしな……そろそろ行動に移るか。

―――撒くか出るか、追跡者の存在は一体何を現しているのか俺には知る理由がある。

ならば……出るしかないな、はぁ……面倒くさい。

 

「………よっと」

 

俺は再び足を止めて後ろを振り向く。

だが相変わらず追跡者の姿は見えない、まあ予想はしていたけどな。

このぐらいで尻尾を出すような奴じゃない、ならばどうするか?

こういう尾行で一番追跡者が嫌う事、それは自分の正体がばれる事だ。

だから一定の距離を測って相手が停止すると自分も停止する。

……ならばそれこそが相手の弱点となりえる。

 

「―――行くぞ」

 

足に魔力を込めて今来た道を引き返すように俺は走り出した。

魔力による簡易強化だがこれで少しは脚力が上がる、問題は相手の速度だな。

俺の接近に気がついたのか追跡者は身を翻し離れていく。

―――かかったな、撤退する際に微量だった気配がくっきり現れてくる。

焦って一瞬だけ気配を消す事を忘れてしまったらしい。

こうなったら後は速度の勝負だ、相手は思ったより速い速度で撤退している。

追いつけるか……撒かれるか、立場が一瞬にして逆になったな。

 

「―――見えた、あいつか」

 

廊下を暫く気配のみを頼りに走る続けた結果、ついに俺は相手の姿を捉えた。

後姿だけだが人影は何かに跨り狭い廊下を凄い速度で飛ばしていた。

―――なるほど、速度が速い理由は空を飛んでいる事にあったのか。

しかしその能力をこの狭い廊下では十分に発揮する事が出来ず段々と距離は詰めていった……。

廊下を走り階段を跳躍しまた廊下を走る。

何とか振り切られずに付いて行く事が出来ているがそろそろ足が限界だ。

特に相手の速度に追いつくために行使された膝の損傷が激しい。

だがその甲斐あってか追跡者の背中はもう目の前だ。

空飛ぶ箒のような物に跨った長い亜麻色の髪を靡かせて飛ぶ一人の魔法使い。

着ている服を見るに栞達と同じだからここの生徒のようだけど……それにしても速い。

あの箒、余程の業物か……秘められた魔力が肌に突き刺さるように感じる。

だけど鼬ごっこはここまでだ、そろそろ疲れてきたんで終わらせてもらう。

 

「―――"遙かなる大地に吹く風よ、今目の前にいる愚かなる者を捕らえる鞭と成れ、ウィンディウィップッ!!"

 

俺の詠唱と共に追跡者の周りには数多くの風の鞭が展開され追跡者を捕らえようとその切っ先を伸ばす。

風の鞭は箒に絡みつきその速度を落とさせようと必死に引っ張った。

だが……その瞬間、風の鞭はまるで暴風にでも遭った様に吹き飛ばされるように左右に飛び散った。

レジスト……にしては強力すぎる抵抗だな、まるで風の障壁が展開されているような感じだ。

詰めが甘かったか……だけど逃がすわけにはいかない。

捕まえられないなら悪いけどの箒を壊させてもらうまでだ。

 

「―――"ヴィルヴェルヴィントッ!!!"

 

風系中級魔法、ヴィルヴェルヴィントを追跡者の箒を狙い打ち出す。

―――狙うのは箒だけだ、悪いが鬼ごっこはこれでお終いにしようぜ。

俺はそう小さく呟きながら全速力で追跡者へと駆け寄る。

 

 

 

 

 

「あはは、やりますね〜……でもこれでどうですかね?」

「何……?」

「―――"リフレクトミラー"

 

 

 

 

 

まるで鈴が鳴いたような声が聞こえたと思うと今しがた放ったヴィルヴェルヴィントがこちらに戻ってきた。

―――これは……反射魔法っ!?

文献でしか見た事がない完全魔法反射魔法、魔法使いの意味を無効化させる"最上級防御魔法"だ。

こんな危ない物を扱うなんて……コイツ何者だ!?

 

「―――ちぃ! "ウォーターウォールッ!!"

 

水の障壁を展開して自らが放った風の魔法を防ぐ。

―――ヴィルヴェルヴィントは水の壁に当たり辺りに衝撃を飛び散らせた。

水飛沫は霧となり辺りを一瞬だけ覆い隠した。

……そして、霧が晴れると同時に再び俺は駆け出そうとしたが……そこにはもう追跡者の姿はなかった。

 

「………やられた、完敗だな」

 

俺は苦笑しながら頭をかいた。

まさかここまで相手の策略に嵌るとは思わなかった。

……気配を探そうにもここでは魔力の残留が多く集中できない。

何者かはわからないが……あれは本当にこの学園の生徒なんだろうか?

出来る事ならこの戦争が終わった時に、また会いたいな。

 

 

 

 

―――その時は絶対に何か仕返しをしてやろう、うん。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第二十三話

「天を狩る聖女」

 

 

 

 

『天を狩る聖女……ね、具体的にはどうするんだ?』

「決まってるでしょ? 言葉どおり、"天を狩るのよ"」

『天を狩るぅ? どうやってさ?』

「まあ見てなさい、多分もう滅多に見られなくなる光景だから」

 

私はそういいながら草薙を地に突き刺して上空を見上げる。

―――ここからじゃ見難いけどあれは竜かしらね?

何か中心にいる一体の竜の周りを何体もの竜達が旋回しながら事の成り行きを見守ってるみたいだ。

……あの中心に何かあるのかしらね?

まあいいわ、あいつ等が地上に降りてくれば分かる事でしょ。

私はそう思い目を閉じて意識を集中させる。

最早聖女ではない私が未だに出来るかどうかは不安だけど……まあ大丈夫でしょ。

聖女の名を棄てただけだし、能力的には昔と変わらないはず。

 

「我が灯火の光は天の光、我が祈りの光は天の光、我が命の輝きは天の輝き也……」

『おぉ!? 何かすげぇ……魔力じゃないが何か湧き上がるものを感じるな』

 

草薙が感心したような声を発しながら私を観察している。

―――どうでもいいけどもう少し静かにして欲しい。

本来なら"静寂の間"で行われし聖女の儀式なんだからね、これでも。

 

「天空の聖女の契約のより天空の支配を我が灯火に譲るモノとする……」

『……うぉ!? じ、地震かっ?』

 

地面が揺れ始め世界への同調が始まる。

万物は一つであり無限でもある、有は無に帰り無は有を生み出す。

人間は世界の一つであり世界は人間の一つである。

世界を支配し世界に支配される、それが聖女たる私の役目……だった。

―――確かあの馬鹿はこの事を"世界への生贄"って言って妄信した老人達を馬鹿にしたんだっけ。

 

「―――"天狩りの陣、我は一つで汝も一つ……契約の元、秋桜麻衣子が命じよう"

『おいおいおい、どうなってんだよ……こりゃあっ!?』

 

 

 

 

 

「―――"崩壊する空"」

 

 

 

 

 

―――瞬間、上空に存在していた者達が急速に落下し始めた。

多分空を舞っていた彼らには訳がわかるまい。

それが天狩りの陣、「崩壊する空」の力だった。

 

『重力魔法……って所か?』

「似たようなもんね、範囲的に空を崩壊させる一種の結界陣だからね」

『……魔法は使えないんじゃなかったのかい?』

「魔法じゃないわ、これは法術の一種よ」

『なるほど、魔法じゃなければレジストも出来ない……確かに"天を狩る"って感じだな』

「まあね、それよりそろそろ団体さんが来るわよ」

 

次々に落ちてくる空を舞っていた者達。

その形状は接近してきた為に何とか確認できるようになってきた。

……やはり竜族、両翼の特徴的なシルエット……ワイバーンの類か。

数はおよそ十数体はいるみたいね……まずい、負傷していたって事忘れてた。

いくらワイバーンが竜族の中では位が低いって言っても竜族は竜族……一筋縄ではいかないな。

 

「草薙、下手したら第三段階まで位を上げるからね」

『……正気か? ただでさえやばいのに……それを使ったら"確実に死ぬぜ?"』

「もしかしたらって事よ、私もまだこんな所で死ぬわけにはいかないからね」

 

私はそういいながら草薙を構える。

ワイバーン達の群れは民家の屋根に墜落したりそのまま地面に叩き付けられたりと次々に地上へと降り立った。

………これで数が減ってくれれば大成功なんだけど、竜族にそんな期待は無意味ね。

 

「ぐるるる……」

 

地面に叩きつけられたはずのワイバーン達が唸り声を上げながら次々に起き上がる。

―――やっぱりそれほど甘くないか、やるしかないみたいね。

私は軽くため息をつきながら草薙を握り締めて一歩を踏み出した。

今なら相手も少しはダメージを負ってるはず、この好機を逃す手はないわね。

 

 

―――が、その一歩は新たなる落下者の介入により遮られてしまう。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「………え? ちょ、ちょっとぉ!?」

『我が主人、かわした方がいいぞ』

「無理言うなーっ!! うわぁ!?」

 

私は仕方なく草薙を放り投げて落下者を受け止めるべく両手を伸ばす。

間一髪、私の腕の中に一人の女の子らしき人影が収まった。

………まさか人間がいたとは思ってもいなかった。

いや、浮遊魔法が使える魔法使いがワイバーン達と戦っていても不思議はなかったんだけども。

可笑しいな、一応魔族にのみ効く様に調節して放ったなずなんだけど……久しぶりだから間違えたかしら?

 

「ちょ、ちょっと……大丈夫?」

「こ、怖かった〜」

 

落下してきた女の子はそういいながら私の腕からゆっくりと自分の足で地面に降り立った。

どうやら身体には異常がないらしい、凄い耐久力ね……この子。

あの高さから落ちてきて受け止めたとはいえ傷一つ見当たらない。

 

「あぅ〜、一体何なのよぉ〜」

「あははは……ごめんね?」

「あぅ? ………あっ! それより美汐は!?」

 

私が謝罪しようとするが女の子はそんな事お構い無しに空を見上げた。

そんな女の子に釣られて私も空を見上げる、すると其処には一匹のワイバーンが悠々と降り立ってくるではないか。

―――嘘っ!?私の法術が効かなかった竜族がいたの?

 

「真琴、大丈夫ですか?」

 

そしてそのワイバーンの背中からひょっこり顔を出したのはこれまた女の子だった。

もう訳がわからない、法術が効かない竜族や落ちてきた女の子。

予想外な事ばかり起きて私の頭はパンク寸前だ。

……それなのにまだイジメ足りないのか更に不可解な出来事に遭遇した。

 

「何じゃ、いきなり勝負を放棄して地上に降り立ったと思えばこんな所で何をしてる?」

 

私は声をした方向に顔を向ける、今度は何よ。

すると其処には悠々と降り立ってきた男の子が民家の屋根に着地していた。

 

 

―――何が一体全体どうなってるのよ?

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第二十三話いかがでしたでしょうか?

スランプは続く……もう頭パンク。

容量が足りません、誰か……助けて(泣)

 

 

 

 

―――第二十話★用語辞典―――

 

製作中

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