傍観者、相沢祐一。

 

現存する魔法使い達に最大級の侮辱と最大限の理想を魅せた唯一の人間。

その為"傍観者"は魔法使いの間では禁句にも等しい言葉だった。

禁忌を犯した魔法使い、しかしそれは魔法使いにとって目指すべき到達点である理想の形。

だが、理想とは目指すべき道であり結果というゴールではない。

理想はあくまで理想、魔法使いはそう考える。

魔法使いとは科学者、欲には事欠かない職業の彼等が"理想"とする姿。

それは……ただ単純な……そして簡単な事だった。

禁忌の人間、それが相沢祐一……。

 

魔法とは何のためにあるのか?

科学とは何のためにあるのか?

 

解釈は様々であろうが数多の魔法使いが行き着く最終的な目的地。

理想郷といってもいいだろう。

誰もが到達する事を目指し、そして誰もが到達出来ない結果。

 

魔法という神秘を使い、彼等は何を求めたのだろうか?

魔法という奇跡を学び、彼等は何を欲したのだろうか?

 

魔法というものを極めて、彼等は何になりたかったのだろうか?

 

 

 

 

その答えは、一人の傍観者だけが知っていた……。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第二十七話

「生と死」

 

 

 

 

「………さて、これはどういう事だ?」

 

屋上での戦闘を終えた北川潤は目の前の光景を見て多少混乱していた。

吸血鬼と戦闘後、北川は戦争に参加する事を許可してもらう為に学園長室に向かった。

だが、北川がその場所に着いた時……既に"学園長室"は存在していなかった。

理由は簡単、先程の廊下での戦闘時にアーレンが唱えたハイメテオが原因だった。

この魔法は飛来する隕石を対象者にブチ当てるという凶悪な魔法だ。

しかもその飛来する隕石は本当に空からやってきて対象者に降り注ぐ。

つまり、屋根などある場所で使うとどうなるか……考えてみればすぐわかる事だった。

もちろんそんな事実を知らない北川は突然の事態に思考が固まってしまっていた。

 

「敵に強力な魔法使いでもいるのか? うわぁ、これじゃあ学園長といえども無事かどうか……」

 

貫かれた学園長室を恐る恐る覗き込む北川。

北川が覗き込むと同時に今にも崩れそうな足場が少しずつ崩れる音がする。

……北川は生唾を飲み込みながら慎重に下を覗き込んだ。

するとそこにあるのは巨大なクレーター、かなりの大質量の何かがここに落ちたようだ。

学園長室は三階、そしてアーレン達が戦っていた階は二階……つまり三階より上の階ももちろん貫かれていた。

 

「………帰ろうかな」

 

学園長でも勝てない魔法使いがいるとすれば北川に勝ち目はなかった。

北川もいくら二年の部で序列が一位だとしても所詮はカノン学生。

契約書の効果により廊下では上級魔法が使えないので北川の実力はそこらにいる学生とあまり変わらなくなる。

唯一の例外として北川家の家宝さえ使えばこの問題は解決出来るのだが……そんな事は出来ない。

吹っ切れたといっても北川家の家宝は別問題、これは気軽に使っていい代物ではない。

 

「はぁ〜あ、こりゃみんなも無事かどうかわかんないな」

 

北川はそう呟きながら今日カノン学園で出会った学園生徒の顔を思い出す。

美坂に久瀬、そして川澄先輩に川口……そういえば相沢祐一もいたな、生きてればだけど。

……何故だろう? 誰一人として死んでないような気がする。

何か変な信頼で"あいつらは殺しても死ななそう"というイメージがあるんだよな。

つーわけであいつらは大丈夫だろ……なんてったって俺が認めてるやつらばっかりだからな、相沢祐一は知らんが。

さてと、こんなとこでのんびり寛いでる場合じゃなくて……そろそろ動くか。

まずは思い浮かんだあいつらの中の誰かに会いたいな、相沢祐一は抜かして。

そう思いながら俺は苦笑交じりに歩きだそうとした瞬間、後ろの方で微かに音が聞こえた。

 

「………これは足音か?」

 

どうやら当たりらしい、相手も俺の存在に気づいたのか少し早走りでこちらに向かってくる。

―――流石俺、こんな時にもついてるね。

誰だろうか、出来るなら美坂とかがいいなぁ……川口とか久瀬は却下だ。

なんて事を考えながら俺がにっこり笑顔で振り向いた先には……一人の同い年ぐらいの少年が立っていた。

あぁ、わかってたよ……本当は。

だって俺、昔からくじ運とかそういうものって絶対ハズレ引くんだよな……さっきの吸血鬼みたいに。

 

「げっ、お前は北川……だっけ?」

「何だ、やっぱり生きてたのかよ……相沢祐一」

 

―――そこにいたのは面倒くさそうにこちらを見る相沢祐一だった。

あぁ、やっぱり帰っとけばよかったな。

 

「何やってんだよ? こんな所で」

「お前こそ、何やってんだ」

 

一進一退、両者とも警戒しながら相手を睨むように距離をとった。

……このままいきなり走り出して逃げてやろうか。

あー、でもそんな事をしたら追いかけてきそうで嫌だな。

今は出来るだけ魔力を抑えたいし、それに相手の実力もわからないしな。

―――出来る事なら、穏便にすませたいけど……無理か?

 

「そういえばお前には色々借りもあるんだよなぁ」

 

そういいながら相沢祐一は挑発的にこちらを威嚇する。

―――うわ、何か凄い機嫌悪そうだな。

まあ殺されそうになったんだし、当然といえば当然なんだろうけど。

あんまりそういう事で怨む事はなさそうな感じがしたんだけどなぁ?

 

「何だ、そんなに屈辱的だったか?」

「いや、お前の"あれ"はどうでもいいが……さっきちょっと違うヤツと揉めてな」

「それじゃあ俺のせいじゃないじゃん」

「そうだな、いうならばこれは八つ当たりだ」

 

うわ、何があったか知らないが凄い殺気だ。

それほど屈辱的な事があったのか、こいつ。

やだなぁ、こんな所で戦ったら間違いなく死闘になりそうだ。

しかも相手はまだカノン生徒じゃない、上級魔法も使えるって事だ。

……うげぇ、また俺の魔剣の出番か?

いや、それでも一度は見せた切り札だ……二度も通用する保障は何処にもない。

リスクばかりでいい事ないな、こういう時は一つしかない。

 

「……降参します、白旗白旗」

「―――はぁ?」

 

勝負を逃げるが勝ち、逃走ではなく白旗。

まいったか傍観者、これが昼行灯の最終兵器だ。

―――あぁ、生きているって素晴らしいなぁ……そうは思わんかね?

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

 

気合一閃、私は速度を更に上げつつ目の前に立つ法術師を追い詰めていく。

―――法術は基本的に方術と違い元となるそれ相応の装備がないと力をまったく行使出来ないはずだ。

ならば相手が獲物を出す前に決着をつければ済むことだ。

 

「……くっ! 草月っ、一度上がります!!」

 

法術師はそう宣言すると後ろに控えていたワイバーンを羽ばたかせ上空に逃れようとする。

……中々いい判断だけど、そのぐらいで私の草薙が止まると思わないでよっ!

私は一瞬の判断の元、即座に座るような姿勢になりそして上空を睨む。

まだそんなに高くは上昇していない、今ならまだ……追いつける!

 

「草薙っ! 更に同調開始!」

『正気か? これ以上は冗談抜きでまずいぞ』

「だからって敵を前にして止まれる!? 私は止まれないわよ!!」

『……了解、この際だし第三段階まで上げちまうか?』

 

……っと、草薙はとんでもない事をいいだした。

―――こんな状態で第三段階?

この馬鹿はそんなに全てを破壊し尽くし、殺し尽くしたいのかしらね?

この状態で第三段階なんて行ったら……最後にこの町で立っているのはまたあの馬鹿だけになるでしょうがっ!

そんな事はもう二度としない、そう決めたから。

 

「私が今後、第三段階を使うとしたら……私が本当に死ぬ時だけよ!」

 

だからさっさと同調しなさい!っと続けるつもりだった。

しかし、そんな私の言葉を待ってたように草薙は聞こえないぐらいの声で呟いた。

 

『それなら安心だな、我が主人……もう死ぬぜ?』

「―――えっ?」

 

跳躍しかけた足が止まる、今何をいいやがったこの駄剣は。

最早上昇し続ける法術師の後を追い、跳躍するのは無理だろう。

それほどの相手との距離、高度が上がってしまっていた。

しかし、そんな事はもう私の頭の中に入っていなかった。

 

「……今、何ていったのよ? あんた」

『だーかーらー、もう終わりなんだよ……我が主人』

 

終わり、つまり終局。

……私が……もう死ぬ?

何馬鹿な事言ってるのかこの駄剣は、止血しているのは他ならぬあんたでしょ。

 

『馬鹿か? 止血はあくまで止血だろ、俺は傷を治した覚えはないぜ?』

「えっ……だって、それなら多少は大丈夫でしょう?」

『だからもう多少なんて量は超えたんだって……そうだな、我が主人の完全なる判断ミスだな』

「―――判断ミス?」

『だから最初に言っただろ? "先に治療"を受けとけってよ?』

「………………」

 

草薙は私に嘘をつかない。

というより嘘をついても意味がない、メリットが存在しない。

ならば……草薙のいっている事はどうしようもない事実だという事がわかった。

わかって……しまった……。

そうだ、考えてみれば可笑しい。

……さっきから痛みを感じなくなっていた。

てっきり草薙が止血と感覚を麻痺でもさせているのかと思っていた。

でも……今考えれば、痛覚が働かないほどに……私はもう手遅れだったんじゃないのか?

そして、私は呆然として足を止めてしまった。

 

「……その隙、もらいましたっ!」

「―――ぐっ!?」

 

―――其処にすかさず上空から急降下してきたワイバーンの翼に跳ね飛ばされた。

まるで空中を舞うような感覚、いや実際は舞っているんだろう……兎に角私の世界はその瞬間壊れた。

転がる体、雪を撒き散らしながら無様にも受身もとれずただ転がった。

そして……見上げれば其処には紅く染まった空が見えた。

あぁ、さっきの吸血鬼戦と同じ展開じゃない。

―――唯一違うこと、それは……私はもう既に草薙を開放した後だった。

 

『"死"は契約破棄って意味だぜ? 我が主人?』

「……………」

 

しまった、もう体が動かない。

草薙の所有者である最後の務め、草薙を封印しないで死ぬわけには……。

助からないならせめて、この戦闘狂だけは道連れにしない……と。

寝るな……、寝たら取り返しのつかない事に……な…る。

…………くっ、でも…目蓋が……勝手に……落ちる…………。

祐一……ごめん……最後に…約束……守れ………なかっ……。

 

……………。

………………………。

…………………………………。

 

『契約破棄を確認の為優先権を確保、これより……第三段階の発動に移る……今まで楽しかったぜ? 我が主人様』

 

だから、安らかに眠れ。

後はこの草薙に任せておけよ、全て終わらせてやる。

 

 

―――いや、この幻想神種の位を持つ……ヤマタノオロチ様がよ。

 

 

to be continue……

 

 

                                            

 

 

 

あとがき

今回はある意味でっかいお話、読むのも書くのだるいですOTZ

色々な進展があったような気もするし何もなかった気もします。

まあ一ついえる事は……おまたせっ!って感じでしょうか?

次回、物語が動きます。

 

 

 

 

―――第二十五話★用語辞典―――

 

製作中

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