「―――あっ、あの馬鹿負けた」

 

私はそんな麻衣子ちゃんの声に振り向く。

祐一と別れてから私は麻衣子ちゃんが連れて行って欲しいといっていた食堂へと向かっていた。

その途中、麻衣子ちゃんはいきなり立ち止まりそう呟いたのだ……。

誰が負けたんだろう?私は不思議に思い渡りを見渡したが誰もいない。

 

「誰の事? 麻衣子ちゃん」

「ん? あぁ、気にしないで〜、ちょっと意外な結果に驚いただけだから」

「???」

「まあまあ、それともう少しで祐一も帰ってくるからそしたらみんなで食堂でご飯食べよ?」

 

そういいながら私の背中を押す麻衣子ちゃん、わっ、麻衣子ちゃん凄く力強いよ〜。

それにしてもどうして祐一がもうすぐ帰ってくるってわかったんだろう?

私は疑問に思うがその疑問を断ち切るように麻衣子ちゃんは私の背中を押す。

結局私はその理由を聞けず、……麻衣子ちゃんの言うとおり先に食堂に案内をすることにした。

 

「―――まったく、あの馬鹿ってば何回死んだら気が済むのかしらね」

 

……しかしその途中、麻衣子ちゃんはそんな可笑しな事を呟いていた気がした。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第五話

「貴族の少女」

 

 

 

 

「いや〜、失敗失敗……」

 

俺はそう苦笑して呟きながら見知らぬ学園の廊下を走る。

……しまった、帰り道が全然わからないかもしれん。

行きはあの北川ってやつの視線通りに案内されただけだからな……。

しかし、まさかあそこまで徹底的にやられるとは思わなかった。

まあ魔剣なんて代物だされたらどんな魔法使いでもああなって当然だろ。

 

「さてさて、今回も見事に敗北したか〜」

 

もうこれで何度目になるだろうか?

相沢祐一という存在の死は……、そう、あの時…俺事相沢祐一は確かに死んでいた。

北川の魔剣、ローエンシュヴェルトによって破壊された事は事実だ。

でも俺はここにいてピンピンしている、……まあそれが俺の特性とも言えるのだけど。

 

「まあそれはいいとして、ここ何処だよ?」

 

見渡すがどこを見ても覚えがない、せめて校門まで戻れればまだわかりようがあるのだけど……。

―――仕方ない、誰かに食堂の場所を聞くか。

しかし、俺は周りを見渡して見るが……誰もいない。

 

「………なんだよ、人っ子一人いないじゃん」

 

俺はため息をつきながら当てもなく歩く。

だけどさっきから体のあっちこっちがギシギシと軋む……、くそ、やっぱり急造は辛いか。

でもまあ愚痴っても仕方ない……、それよりこれからどうするか?

話を聞けないならこうして歩きまわるしかないんだけど俺意外と方向音痴だからなぁ。

 

「探知の魔法でも覚えてれば別だけど……んなものないしなぁ」

 

自分の魔法ストックの少なさに嫌悪しながら俺は見つけた階段を上っていく。

しっかし広い学園だなぁ、暫く歩いたけど校門らしき場所は見つからない。

 

「………ん?」

 

階段を上りきり廊下に出た時、俺の目の前を1人の女子学生が通過する。

丁度いい、あの女の子に食堂の場所を聞こう。

 

「あー、ちょっと悪いんでだけどさ」

「はい? 私ですか?」

 

少女は不思議そうな顔でこちらへと振り向く。

その際に少女が肩からかけている変わった布が舞い踊った。

あれは魔法使いのマントみたいなものだろうか?

……少しだけだが魔力の痕跡が残っている。

 

「………あの?」

「いや、悪い悪い、えっと……ちょっと場所を聞きたいんだけど」

「あっ、はい……、どこのですか?」

「食堂なんだけどここからどう行くの?」

「食堂ですか? えっと……ここから一番近い食堂は4番食堂ですけど……」

 

げっ、もしかして食堂って沢山あるのか……。

まずいな、名雪達がいる食堂って何処かわからない。

取り合えずその4番食堂って所に行ってみるか。

 

「その4番食堂って何処にあるんだ?」

「えっとですね……、あっ! もしよかったら案内しましょうか?」

「え? いいのか?」

「はい、私も丁度行こうと思っていたので」

「それなら宜しく、それと俺の名前は相沢祐一」

「え?」

「いや、案内してもらうんだし最低限の礼儀はしないとな」

「そうですか……、くすくす」

 

俺のその言葉を聞き少女は可笑しそうに笑う。

む?俺、何か可笑しい事でもいっただろうか?

 

「それじゃあ私も、―――私の名前は美坂栞です」

「そっか、それじゃあ美坂さん、道案内よろしく」

「栞でいいです、私も祐一さんって呼んでいいですか?」

「構わないぞ、お兄ちゃんでもお兄様でも兄ぃでもお兄タンでも……」

「よろしくお願いしますね、祐一さん」

 

ぐは、笑顔でスルーされた。

まあ本気で言ってた訳じゃないけどなんか寂しい。

 

「それにしても祐一さんって貴族なんですか?」

「へ? 貴族?」

「えぅ? でもこんな時期に学園に入れるのって貴族ぐらいのものだと……」

「貴族……ね、俺はそういう堅苦しいものは嫌いなんだ」

「そうなんですか? 私と同じですね〜」

「あれ? それじゃあ栞って貴族なのか?」

「知りませんか? 美坂って言えば結構カノンでは有名な貴族なんですよ?」

 

栞はそういって胸を張る。

その姿が何処か可笑しく俺は苦笑する、栞には悪いけど全然貴族に見えない。

どちらかというと元気な平民の女の子っていうほうが合ってそうだ。

 

「あ、こっちです、ここが4番食堂です」

「へー、ここが……」

 

栞に案内されて着いたのは実に清潔感溢れる食堂だった。

純白のテーブルに木製の高価そうな椅子が何脚も並んでいる。

食堂というより会食の場みたいだ、流石貴族が多いってだけはあるな。

 

「祐一さん、食堂は初めてですか? それじゃあ私がここのお勧めの料理を持ってきますね」

「ん? あぁ、悪いな……、それじゃあ席を取ってるよ」

「よろしくお願いしますねー」

 

栞はそういいながら嬉しそうに食堂の受け取り口に走っていった。

………その姿を見てどうしても栞が貴族とは思えない。

さて……っと、俺は席の前に名雪達がいるか確認しないと。

 

「ん〜、人が多くてわからないな……」

 

流石に昼時だからか人が多く名雪達がいるのかどうかがわからない。

いつもなら麻衣子の赤い髪が目立つのだけど……ここじゃあよく見えないな。

………しかしこう見る限りだと本当に貴族が多いな。

召使いを椅子の後ろで立たせてるやつまでいる、魔法使いになんてならないで自分の家でも継げばいいのに。

まあカノンに住むのだから魔法の一つや二つ使えないと格好がつかないか。

―――っと、俺がそんな思案をしていたら後ろの方から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「ゆ〜いちさ〜ん、何処ですかー?」

「お? 栞〜、こっちこっち〜!」

「あ、いましたー、祐一さんヘルプですー」

 

栞の声がする方に振り返ると驚いた事に彼女は何かとてもでかいものを体をふらふらさせながら持っていた。

………なんだ?あれ。

なんというか……一言で言えば雪だるま、もしくは小さい雪山。

 

「栞、なんだこれは?」

「これですか? カノン名物スノーシロップ丼です!」

「………昼飯? 思いっきりデザートに見えるのは気のせいか?」

 

見た目は確かに百歩譲って美味しそうとも言えなくもないかもしれない。

しかし、俺はこれを昼飯とは認めてはいけないと思う。

なんだこの雪に甘いシロップと生クリームたっぷりを丼の器に盛っただけの簡単デザートは。

 

「とっても美味しいんですよ? 私のお勧めです!」

「いや、そんなに力強く言われても凄い困るが……」

「さあ! 祐一さん、食べましょう!」

「俺甘い物苦手なんだけどなぁ……」

 

まあしかし、折角栞が好意で持ってきてくれたものだ。

食べれるだけ食べよう……。

仕方なく俺が栞から渡された巨大な丼を受け取り机に置く、改めて見ると凄い量だな……。

明らかにチャレンジャーな学生しか食べないような凶悪メニューだ。

 

「しかしこんなでかいものを栞食えるのか?」

「えぅ? 私はこれですよ?」

「………はい?」

 

栞がそう笑顔でこちらに差し出してきたのは……俺の目の前にあるスノーシロップの4分の1もない小さなスノーシロップだ。

………え?つまりどういうことですか?

 

「祐一さん男の方ですから、とっても大盛りにしてもらいました♪」

「あ、あはは」

 

滅茶苦茶余計なお世話だった。

好意もここまで来るとただの嫌がらせだぞ……、これ。

俺は目の前に置かれた巨大なスノーシロップを苦笑しながら見つめる。

―――絶対食べきれません。

 

「遠慮しないで全部食べてくださいね♪」

 

そんな栞の悪意のない笑顔が今は痛かった……。

相沢祐一、ここに死す……かもしれん。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第五話いかがでしたでしょうか?

今回はほのぼの戦闘はお休み〜。

スノーシロップは名前は違いますが現実世界に実際にある食べ物です。

正式名称は「生クリームとカキ氷の盛り合わせ」ですよ。

知らずに頼んで死ぬ思いをした思い出の品でもあります、本当にカツ丼の器に入ってるんだもん( ̄□ ̄;)

祐一君お早い復活です……、結構意味深ですが(ニヤ

 

既に書く事も面倒なんですがこのSSは毎日更新ではありません( ̄∀ ̄)

 

 

 

 

―――第五話★用語辞典―――

 

製作中

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