「や、計画は順調かな? 鬼仙(きせん)さん」

 

カノンより遙か南に位置する真実の森。

その真実の森に立ち尽くした鬼仙と呼ばれた男の背後から影のように白髪の少年が現れた。

少年の腕には不釣合いな巨大な青銅の盾が一つずつ両手に装着されている。

その青銅の盾の表面に描かれた模様は二体の悪魔を1人の聖者が殺すという魔道聖書の絵が描かれていた。

絵の題名は「レクイエム」、奇しくもそれは鎮魂を意とする悪魔への歌であった。

 

「…………お前か、何の用だ?」

 

口だけ見えるような全身を黒いローブで覆い隠した鬼仙は少年に振り返り、ただそう呟く。

すると少年はさも可笑しそうに笑いながら男へと近づく。

 

「そんな殺気を込めて睨まれても困るなぁ、心配しなくても今回はちゃーんと鬼仙さんの作戦で行くから」

「当たり前だ、その為に俺は貴様らのくだらない組織に入ったんだからな」

 

鬼仙はそういいながら手にした木製の杖を握り締めながら体中に魔力を漲らせる。

後鬼仙が魔法を唱えるだけでこの場は死場と化すだろう。

そんな攻撃態勢にある鬼仙を見ながらも少年はただ笑いながら近くにある木に背を預けた。

 

「くだらないとは心外だなぁ、結構いい組織だと思うけど?」

「ふん、貴様のような"裏切り者"が何を言おうが俺は信用出来ないな」

 

―――瞬間、今まで笑みしか浮かべていなかった少年の顔が憎悪に染まる。

恐ろしいほどの殺気が辺りを包み込み、木はざわめき風は踊り狂う。

鬼仙はそんな目の前にいる異常を目にしながらも平然と静かに魔力を高ぶらせている。

 

「………裏切り者…ね、鬼仙さんってもしかして古い事に拘る主義?」

「抜かせ、人間は誰しも間違いを起こす、過去の罪などに俺は興味はない」

「じゃあ僕の事を裏切り者って呼ばないで欲しいなぁ〜、あれは過去の事じゃない」

「何、いつでも仲間を裏切る準備をしているようなやつには俺は信用を置けないだけだ」

 

鬼仙はそういいながらにやりと笑い対して少年は少し眉を顰めた。

 

「あっ、ばればれ? まいったな〜、鬼仙さんって意外と抜け目ないですね」

「―――ふっ、お前の様な道化の扱いは慣れているからな」

「………まあいいや、それで? ゲヘナゲートは上手く開けましたか?」

 

少年の言葉に鬼仙は視線をずらし完成まじかの魔方陣を見る。

そんな鬼仙につられて少年も展開されている魔方陣を見て嬉しそうに笑う。

 

「無論だ、少し予定より時間が多めにかかったがもうすぐ完全に開く」

「それなら安心だ、それではゲートが開ききったら早速作戦を実行してくださいね〜」

「当たり前だ、俺はこの時為にずっと待っていたのだからな」

「打倒魔法国家カノン、初戦の相手としては不足なしですからね」

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第七話

「蠢く闇の影」

 

 

 

 

「あいつ、遅いわね」

 

そういいながら私は食堂で頼んだ3杯目のゴーヤライスを口に含む。

うん、中々食堂のご飯とはいえど侮れないいい味だ。

苦味と辛味がいい感じでマッチして後数杯はいけそうだ。

 

「麻衣子ちゃん凄い食欲だね〜」

 

隣に座った名雪ちゃんは驚いたように私を見る。

……そんな事を言ってるが名雪ちゃんもこれで4杯目のイチゴシャーベットだと思うんだけど?

それにしてもあいつ、本当に遅い。

負けたんならさっさと帰ってくればいいのに何をしてるんだか。

 

「……ねぇ、そういえば名雪ちゃんって祐一の従兄妹なんだよね?」

「え? うん、そうだよ?」

「子供の頃のあいつって名雪ちゃんから見てどんな感じだった?」

「祐一の子供の頃? う〜ん、祐一はちょっと意地悪だけど本当は優しい子供だったよ〜」

「そっか、あいつって昔からあんまり変わってないって事か」

 

納得、あいつの馬鹿な所は生まれつきだったっていうことか。

―――まあ、そんな馬鹿だからあの頃はみんなに信頼されてたんだけどね。

そういえば、もうあれから8年か……みんな元気かな。

 

「麻衣子ちゃん? どうしたの?」

「え? あぁ、なんでもないなんでもない」

 

私は名雪ちゃんに向けてそういって手をひらひらと振る。

いけないいけない、あいつじゃないんだからマヌケに黙って考え事なんてしちゃ駄目ね。

 

「そうだ、あいつも遅いし私先に魔法試験ってやつ受けてみたい」

「あれ? 麻衣子ちゃんってまだ試験してなかったの?」

「そうなのよ、今回の事は急に決まってね……、実は魔力測定だってわからないの」

「珍しいね、魔力測定もしなくてカノン学園に入れるなんて」

「私の力じゃないわ、多分入れたのはあの馬鹿のお陰よ」

 

………あんなのでも一応昔、英雄って呼ばれた一人だしね。

多分カノン学園側もそのせいで私と祐一をこのカノン学園に無条件で入れたのだろう。

なんか気に入らないけどまあ事実だし役得って事にしておこう。

さてさて、あの馬鹿はいつまで昼行灯を気取ってられるかしらね……見物だわ。

 

「それじゃあこの後魔法試験をしに行こうね」

「うん、頼める? さーて、私の魔力容量はどのくらいかしらね」

「麻衣子ちゃんはどのくらい欲しいの?」

「そうねぇ、少なめに見積もっても2Bは欲しいわね……そういえば名雪ちゃんはどのくらいなの?」

「私? 私は2Aだよ〜」

 

びっくり、名雪ちゃんてば純正魔法使いレベルの魔力量じゃない。

これで本人が言うに才能がないなんて……なんて矛盾?

まあ、でもそれはそれで名雪ちゃんらしいなと思う。

 

「そういえば祐一はどのくらいの魔力容量なの?」

「あ〜、あいつ? あいつは魔法使いとしては才能ないから3Cぐらいじゃないの?」

 

よくは知らないけどそのぐらいあればあいつはいいと思う。

……もしも万が一あいつが私以上の魔力容量があったら打ってやる、こうメイスで頭を。

流石に魔法使いとしての才能まで負けてたらなんというかムカつく。

 

「―――そうよ、絶対あいつには負けないんだからね」

 

 

 

 

「………なんだ? この寒気は」

「えぅ? 祐一さん、どうかしましたか?」

「いや、なんていうか凄い不吉な気配を感じたんだ」

「はぁ、そうですか……」

 

俺は体を震わせながら悪寒に堪える。

なんだ、この不吉な予感は……なんていうか凄い死の予感がする。

そんな俺を見ながら栞は苦笑して俺の隣に座った。

今俺達がいる場所はさっきの闘技場から少し離れたところにある魔法講義の教室だ。

教壇を囲むようにして生徒達の机が正面に向けられている。

席は大して決まっていないようで講義の時間は好きな場所に座っていいそうだ。

……俺達は休憩の為、講義の教室に休みに来たのだ。

 

「それにしても祐一さんって詠唱破棄出来るんですね、すっかり騙されちゃいました」

「騙されたって……、ありゃ戦略だろ?」

「む〜、でも一言教えて欲しかったです」

 

そういいながら頬を膨らませる栞。

しかし事前に教えたら普通戦略にならないんだけどなぁ……。

魔法使いとは戦士のように力ずくではなく頭を使う知略戦を制するものが勝つ。

よって実戦では些細な情報も相手に流してはこっちの命が危なくなってしまう。

だから俺は膨れる栞を見ながら微笑ましい気持ちになる。

それは実戦を経験していないが故の甘さだけどそれはとても幸せな事だと思う。

 

「うぅ、折角覚えた中級魔法も披露出来ませんでした……」

「ははは、まあそれはまた今度という事で」

「祐一さん、意地悪です」

 

むぅ、栞はもうすっかり拗ねてしまったみたいだ。

……しかしそれにしてもカノン学園って意外とレベル高いんだな。

実戦経験がないだけで栞の魔法レベルは結構高い、流石は名門学園といった所か。

これも魔法合戦なんていうものを日常的に行っているが故の成果なのだろうか?

 

「そういえば栞って魔力測定っていくつなんだ?」

「私ですか? 私は1Sです」

「へー、1Sねぇ………って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぅ!? ど、どうしたんですか!?」

 

栞は俺の驚きように脅えたように身を竦める。

しかし栞があまりに普通に言うから最初気づかなかったけど1Sって……、生まれながらの天才って事かよ。

まさに魔法使いになるべくして生まれた最高純度の魔力量を持つ天才ということだ。

通りで……あれだけ初級魔法といえども間髪いれず発動出来るわけだ。

北川といいこの栞といい、この学園には将来凄い魔法使いになれる金の卵がゴロゴロといるという事か。

 

「祐一さん? どうかしました?」

「いや、ただ単に栞の潜在能力の高さに純粋に驚いてただけだ」

「そうですか? でも私なんてまだまだですよ」

「……おいおい、1Sなんて持ってたらこの学園で上位ランクだろ?」

「いえいえ、規定外な3年生がいますから……なんと魔力測定測定不能っていう規格外です」

「―――測定不能? だって今の魔力測定装置ってかなりの高精度なんだろ?」

「はい、でも川澄さんの魔力測定をしても魔力が高すぎて装置が反応してくれないんだそうです」

「二つ名持ち以外にそんなやつがこの学園にいるのか、よく他国が文句を言わないな」

 

あまりに強すぎる力が一団体に加わると他の国々が文句を言い出す場合がある。

そんな規格外がいるなら文句の一つや二つあっても可笑しくないんだろけど……。

 

「大丈夫ですよ、カノンに攻め込んでくるような国はありません」

「それもそうか、スノーランス最大の魔法国家に攻め込むような輩がいるわけ………」

 

 

ウオォォォォォォォォオンッッ!!!

 

 

「―――ないとも言い切れないって事だな、うん」

「な、なんですか!? 今の大声」

「……わからない、けどまあ愉快な事じゃないって事は確かだな」

 

また面倒な事が起こりそうな予感がして俺は一つ深いため息をついた。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第七話いかがでしたでしょうか?

―――一体何が起きた、カノン!( ̄□ ̄;)

しかし指摘があったとおりSSを見直してみると凄く時間の経過が遅いorz

秋子さんにすらまだ会ってない状況どうよ?(ぇ

頑張れ俺、何とか一日ぐらいは10話ぐらいまでには進めるんだー(マテマテ

 

このSSは毎日更新ではあり(以下略

 

 

 

 

―――第七話★用語辞典―――

 

―レクイエム―

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