「第7小隊は23区内の民間人を守護しろ!」

「訓練兵が前線に出るなっ!!! 死にたいのか!!」

「あ、ありえねぇよ! な、なんだよあれは!!!」

「た、隊長! 敵が……敵が防壁を越えて……!!」

「た、隊列を乱すな!! 魔法兵は中級魔法で応戦! 弓兵も攻撃を続けろ!」

「援軍はまだか!? くそ、このままじゃもたないぞ!!!」

「敵の大将はたった五人だぞ!? 奴らさえ潰せば後は何とかなる!!」

 

 

 

 

「うるさい連中だねぇ……、あんな雑魚相手にするの私嫌なんだけど?」

「あはっ、それじゃあアタイが全部引き受けてあげようか?」

「………貴様ら、任務に集中しろ」

「鬼仙さんの言うとおりですよ? この作戦は我々にとって大事な作戦なんですから」

「でもよぉ? レイナじゃねぇがおれっちの相手になるようなやつはいんのか?」

「それなら安心してください、結構実力者が集まってますよ、あの国には」

「―――へぇ、それは楽しみだねぇ……是非アタイが全部喰い殺したいね」

「魔法使いなんてみんな糞だろ? そんなに期待出来るもんかねぇ?」

「………俺は取り合えず水瀬秋子を探す、お前らは予定通り川澄舞、倉田佐祐理、そして―――美坂栞を探し出せ」

「人柱候補ってやつかい? まったく、なんで私達が餓鬼を相手にしなくちゃいけないのかねぇ」

「そうだ、おれっちも水瀬秋子がいいぜ、そいつとならおれっちも本気で戦える」

「駄目ですよ、水瀬秋子は特別な人ですから……念には念を込めて僕と鬼仙さんが行きます」

「おれっち達じゃ役不足ってか、まあ水瀬秋子が噂どおりならそうかもな」

「あなた達も気をつけてくださいよ? 特に川澄舞、彼女には要注意です」

「へぇ、いいね、あんたがそういうの珍しいじゃん……どんなやつなわけ?」

「―――多分、今現在水瀬秋子を抜かせばカノンで一番強い魔法使いです」

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第八話

「戦場」

 

 

 

 

「―――名雪ちゃん、こういう場合学生ってどうすればいいのかな?」

 

私はそういいながら学園の窓から見える"戦場"を見下ろしていた。

こうして見えるだけでも魔物の数は200匹以上、しかも殆どが低級の魔物じゃなくて中級レベルだ。

現在はカノン側が圧倒的に劣勢、いつも魔法障壁に守ってもらってたツケが回ってきたみたいね。

―――しっかしこれはまた、大胆で大袈裟な歓迎会だ事。

多分これもあいつのせいだ、あいつと一緒にいるとこういう事ばかり起こるんだから。

 

「取り合えず学生さんは学園内で待機だと思うよ?」

「ふ〜ん、それじゃあ先生達いなくなっちゃったし魔力測定はお預けって事ね」

「うん、そうだね」

 

名雪ちゃんは私の予想以上に落ち着いている。

実戦慣れしているとは思えないけど……これも才能の一つということかしらね?

まあそれいいとして、結構楽しみにしていた魔力測定を邪魔されて私は酷くご立腹だ。

今はまだ笑顔でいられるけどこれ以上は猫を被る自信がない。

私は知らずうちに腰に差してある相棒に手を伸ばす。

―――これがあれば大抵のものには負ける気はしない、それが今までの実戦で学んできた唯一の心得。

 

「さてと、それじゃあそろそろ行きましょうかね」

「え? 麻衣子ちゃん?」

「悪いわね、名雪ちゃん、カノンの学生は待機なんだろうけど―――私まだ学生にすらなってないから問題なし」

 

そういいながら目の前に広がる光景を見据える。

………比較的魔物が少ないルートをここから見定める。

全てを相手にする事はない、そんなのあの馬鹿に任せておけば問題ない。

私がする事は元凶を断つ事のみ、そしてこんな馬鹿げた宴は即刻中止させる。

 

「それじゃあ名雪ちゃん、学園のみんなの事頼んだわ」

「え? えぇ!?」

「じゃあね! また後で会いましょ!」

 

私はそういってガラス窓を開け放ち、戦場へと駆け出していく。

後ろでは名雪ちゃんが何かを叫んでいたけど私は立ち止まらず校門へと走り出す。

―――取り合えずあいつが追いつく前になんとか終わらせたいものだ。

 

 

 

 

「おいおい、なんかすげぇ事になってきたな」

 

目の前に広がる光景を見て、流石に俺も雰囲気に押される。

カノンに群がる魔物の数々、ゴブリンにゴーレム……リザードマンまでいる辺り結構節操がない布陣だ。

各地でカノン騎士団が戦闘を繰り返してはいるがやはり状況は刻一刻と悪くなる一方だ。

………しかしこの数は異常だと思う、北の大陸最強と謳われるカノンが魔物の群れに押しつぶされようとしているのだから。

質より量……っというほどやつらは波のように押し寄せて来て全てを破壊し尽そうとしている。

 

「これはこれは……、う〜ん、僕達はどうしようか?」

 

カノン学園の屋上から俺と一緒になって見下ろしていた川口護はそういいながら俺を見る。

……俺に何を期待してるかは知らないけどそこまで俺は馬鹿じゃない。

いくら学園で序列が高いといっても戦場では何の役にも立たない。

結局戦争には戦争でしか太刀打ち出来ないのだ、だから俺如きが介入しなくても結果は変わらない。

 

「カノン学生は学園に待機だろ? それにあんな数相手に出来るかよ」

「君なら出来るじゃないか、その魔剣で」

 

そういって川口は俺の腰に差してある魔剣、ローエンシュヴェルトを指差す。

まあ確かにこれなら戦局の一つや二つぐらいは変えてしまいそうだけど……。

 

「アホか、これは家宝だっつーの……」

「ま、それもそうか……」

 

魔法使いの切り札はこんな衆人観衆がある中使うものではない。

本当に身の危険を感じれば俺だって後振り構わず使うだろうけど今はその時ではない。

何しろ使う"理由"がない、本来家宝などこういう場に持ち出す事さえ禁忌に触れる。

―――北川家家宝にはそれほどの意味合いがあるのだ。

 

「―――しかし魔法障壁を軽々と乗り越えてくる敵か、手強いな」

「そうだね、さてと……それじゃあ僕は行くよ」

 

そういうと川口はマントの後ろに隠してあった短剣を抜く。

そして自らの魔力を高めて戦闘態勢を整えだした。

……どうやら川口は本気でこの戦争に介入するつもりらしい。

 

「なんだ? 慈善事業でもしにいくのか?」

「あぁ、軽くボランティアしてくる、君も来るかい?」

「ごめんだね、面倒くさい」

「そう、それならここでお別れだね」

 

川口は屋上の出口へと歩きだす。

―――何のしがらみもないあいつの行動ははっきりいって少し羨ましかった。

俺だって血の気は多い方だ、こんな実戦の場が与えられたのなら本当は俺も今すぐ降りて行きたい。

……まあ、でもこれも自分が選んだ道、後悔はしないさ。

 

「精々死なないようにな〜」

「もちろん、君との決着もちゃんとつけたいしね」

「おう、川口護氏の健闘を祈る」

「はいはい、―――それじゃあね」

 

そういい残して川口は戦場へと駆けて行く。

………生きて戻ってこいよ、俺は声には出さずそう呟いた。

 

 

 

 

「ゆ、祐一さん! ど、どうしましょう!?」

 

栞は慌てながら俺の服の袖を引っ張る。

……やっぱり実戦経験が欠けてるのは意外と辛いな。

もしもという時これじゃあ自分の身も守れはしないだろう。

 

「慌てるなって、まだ状況がよくわからないんだし」

 

俺は栞を安心させる為に出来るだけ優しく声をかける。

しかし、栞の落ち着きの無さは段々と増していく一方だ。

 

「ででで、でもっ!」

「大丈夫だって、よっぽどの事がない限りは俺が守ってやる」

「は、はい……」

 

なんとか少しは落ち着いたのか栞は少し震えながらも大人しくなる。

それにしても謎なのは外の様子だ、明らかに魔物達がカノンを徘徊している。

 

「―――カノンの魔法防壁は一体どうなってるんだ?」

 

カノン最高の守りである魔法障壁装置がある限りよほどの事が無い限り進入は出来ない。

それを易々と突破できる敵なのか……それとも装置に何処か欠陥があったか……だな。

どちらにしても厄介な敵である事には変わりない、まったく……面倒な事が増える一方だな。

 

「祐一さん……私達はこれからどうすれば……」

「う〜ん、取り敢えずは栞を安全な場所まで運ばないとな」

「安全な場所?」

「あぁ、……まあカノン学園も中にいれば大抵の低級な魔物じゃ突破は出来ないからここも安全地帯の一つだな」

 

魔法教師がいるカノン学園は多分カノンの中でもカノン城を抜かせば結構安全な場所の一つだろう。

そう簡単に魔法使い達の学園は突破は出来ないはずだ。

 

「………祐一さんって冷静なんですね」

 

栞はそういいながら俺の顔を不思議そうに見ている。

冷静……か、本当は内心結構混乱気味なんだけどな、これでも。

あまりに速すぎる展開に置いてきぼりにされているのは確かだ。

 

「ん? そうでもないぞ? 意外に驚いてる」

「ふふ、全然驚いてるように見えませよ?」

「まあ荒事には慣れてるしな、それじゃあそろそろ移動するか」

「はい、まずはどこから行きますか?」

 

栞を確実に守れる場所か、カノン学園にも避難場所の一つや二つぐらいはあるんだろうか?

まあこんなにも大きい学園だ、そのぐらいの設備は整ってるだろ。

 

「そうだな、出来れば人が沢山集まっている所が―――っ!?」

 

………マジかよ、俺としたことがここまで気づかないとはなぁ。

実戦を離れて鈍ったか……それとも何か阻害の魔法でも働いてるのか?

まあどちらにせよやる事は一つだな。

 

「えぅ? ど、どうしたんですか?」

「その前にお客さんみたいだ、悪いな……先行っててくれ」

 

俺はそういいながら廊下の角を睨む。

数が多いな、最悪栞だけでも逃がさないと……。

俺は一つため息をつきながら体中に魔力を行き渡らせる。

初めからエンジン全開、余裕や余力など一切ない。

足りないものは足りるもので補えばいい、全てはこの身を信じるが故に行動をする。

 

「え? お客さん?」

「おう、後から行くから出来るだけ人が多い所に行くんだぞ?」

「あ……、祐一さん!?」

「大丈夫、すぐ戻る」

 

栞と離れ俺は廊下の角へと走る。

栞はその間少し悩んでいたようだが俺の言葉に従い駆けていった。

―――よし、これで心配の種はなくなったな。

 

「………はぁ、しかし結構厄介な事になったな」

 

廊下の角を曲がると……そこには廊下全体を埋め尽くさんが如し魔物の群れがこちらへと向かってきている。

スノースネイクにブリザード、ホワイトベアまで居やがる……こりゃ中級魔物の団体さんだな。

目に見える範囲だけでおよそ30程度、っという事は後ろに後20はいるな。

もしかしたら体内の魔力だけじゃ足りないかもな……。

それに俺にとっては久しぶりの本格的な実戦だ、油断してると"また"死ぬかもしれない。

流石にこれ以上は死ねない、気合を入れていかないとやばいな。

 

「かかってこいよ、これ以上の進入は俺が許さない」

 

ま、取り敢えずは栞が逃げ出せる時間を稼ぐ事に集中しよう。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第八話いかがでしたでしょうか?

今回は戦争直前、激突必死……! はーい、ここで一旦コマーシャルって感じです(笑)

しかし冒頭とか会話だけでわかるかよー(A`;(C=(∀`#)

一人称で区別してくれると嬉しいです、俺、アタイ、私、僕、おれっち……ね?(何

それにしても天然トラブルメーカーな祐一君、本人も呆れ気味。

敵も出てきていっそう忙しくなる今日この頃です、うぁ……もう人物総設定集を読むのすらだるい。

次回は戦闘戦闘また戦闘です。

今回はいつもより速めに執筆を開始したいと思います、戦闘スキー(・∀・)/

 

このSSは毎日更新では(以下略

 

 

 

 

―――第八話★用語辞典―――

 

製作中

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