「秋子様、敵に第18区までを完全制圧されました」

「そうですか、わかりました」

 

私は兵士からの報告を受け、城から見える城下街を見下ろした。

所々に飛び火している魔物の襲撃、思った以上に敵の展開が早い。

それに動かなかった魔法障壁装置の件もあるし、あれほどの数の魔物をどうやって連れてきたのかという事も謎だ。

 

「………まぁそれは今考えても仕方ないですね」

 

そう、今考えなくてはいけない事はただ一つ、この事態をどうやって解決するかだ。

カノン学園、貴族屋敷、産業地区、住宅地区……守るべき所は多い。

―――この事態に祐一さん達がどう動くのがわからない今、それほど学生達に期待はしてはいけない。

実戦を経験していない学生を前線に出す事は現段階では学園側も許可しないだろう。

となると圧倒的にこちらの駒が少なくなる、………ならばこちらは量より質を取る事にしましょう。

今私が使える駒、本当は祐一さんと麻衣子さんが一番いいんですけどここは一つ彼に動いてもらいましょう。

 

「―――彼に連絡を取ります、迎えの兵士を向かわせてください」

「はっ、了解であります」

 

彼ならば戦局を好転させる方法も編み出せるはず、並大抵の魔物ではどう足掻いても彼には勝てないでしょうから。

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第九話

「虚空の現実(前編)」

 

 

 

 

 

「あー、もうっ!! 邪魔よ!!!」

 

目の前に立ちふさがるゴーレムの石頭を跳躍してメイスの一閃を喰らわせながら私は叫んだ。

予想以上に敵の数が多い、多対一は私の専門外だからとっても面倒くさい。

こういう時はあの馬鹿に任せるのが一番なのに、肝心な時にいつもあいつはいない。

 

「本当に使えないやつよね……っと!!」

 

そう言い放ちながら後ろから私を襲おうとしていた大蛇に向けて振り返りながら殴りつける。

―――まったく、私を丸呑みしようなんて何考えてるのかしらね。

大蛇の頭部を殴り潰したがまだ周りには私を狙わんとしている魔物の群れが蠢いている。

………仕方ない、そろそろこの魔物達にも格の違いってやつを教えてあげる必要がありそうだ。

私は手に持ったメイスを逆手に持ち替えて隠されたレバーを引く。

するとメイスの先端部分から銀色の刃が飛び出してきて一振りの剣と化した。

これが私の相棒の本当の姿、メイスの中に仕込んだ私の相棒は光り輝く一筋の聖剣。

 

 

―――遙か昔……大蛇の尻尾から生まれたとされる魔性の剣、それがこの草薙の剣だ。

 

 

「久しぶりに使うわね、あんたも」

 

私はそう呟きながら銀色に輝く刀身を軽く撫でながら笑みをこぼす。

昔からこの相棒は気性が激しく文句を言いながらもいくつもの私の無茶にも付き合ってくれた仲だ……。

この剣に命を救われた事は多々あり、そしてこの剣を抜くからには私に負けは許されない。

まあ、………過去約一名にのみはこの剣でさえ太刀打ち出来なかったけどそれは置いておこう。

 

「さて……っと、それじゃあぱっぱと終わらせるとしましょうか」

 

剣を手に魔物の群れに向き直る。

魔物達は先ほどの威勢はどうしたのか、注意深く私の周りに集まり牽制しているだけだ。

流石に低級や中級といえども一端の魔物、この魔物を狩る事に特化された聖剣を見て少しは危機感を覚えたか。

だけどこいつらもなっちゃいないわね、本当ならこの剣を見た瞬間に逃げ出さねば命はないのに。

まあ魔物としてのプライドが許さないんだろうけど……馬鹿ね。

 

「―――いくわよ草薙、今日は喰い放題の大パーティーよ」

 

駆ける、剣を起こし低空の姿勢で一番近くにいたスノーベアの懐に潜り込む。

………多分今この場に麻衣子以外の他の人間がいたら口を揃えていうだろう、「彼女が消えた」っと。

草薙の剣、それは"羽のように軽い剣"……ではなくて"羽より軽い剣"である。

この聖剣を持つ者は跳躍の加護を得て身体能力が著しく跳ね上がる。

―――元来竜を倒す為に作られた究極の聖剣は人間の限界という殻を打ち破る効果を持っていた。

 

「ふ……せりゃっ!!!」

 

私の一閃はスノーベアの頑丈な両腕を空気を斬るが如く切り裂いた。

醜い咆哮を上げてスノーベアは一歩後ろへ下がろうとした瞬間、その首を跳ね飛ばされる。

 

「―――ふっ!!!」

 

そしてそのまま私は空高く跳躍して真後ろにいた魔物の頭上を通り越す。

着陸し、一息つく前に未だ目の前しか見ていない後ろ姿のスノーガストを真っ二つにする。

後は………残り十二匹か、四秒で行けるかしらね?

私はそう心の中で考えながら未だ残っている魔物へと駆けた。

刃が奔る、敵を切り裂く、刃が奔る、敵を切り裂く……。

 

「これで……ラストぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

残っている最後のリザードマンの脳天を真っ二つにして麻衣子はようやく一息をついた。

………辺りは既に色取り取りの血液で染まっていた。

 

「………およそ五秒か、少し鈍ってるわね」

 

私はそう呟きながら刃をメイスの中に仕舞いこむ。

だけどやっぱり草薙は圧倒的ね、流石伝説の幻想神種の一つ……八岐大蛇の尻尾から出来たと言われる聖剣なだけはある。

普段は性格悪いけどやっぱり私にとっては唯一無二の相棒だ。

 

「さてと……、それじゃあ元凶を断ちに行きましょうか」

 

そろそろあの馬鹿も追いついて来る頃だ。

ここまで先行して美味しい所だけあいつに持ってかれるのは我慢できない。

私は魔物の死骸を踏み越えてカノン城下街を歩きだす……。

しかし、―――私の歩みを止める人影がいきなり目の前に飛び出してきた。

 

「何よ、あんた」

「はっ、見てたぜお嬢さん……随分と強いじゃねぇか」

 

私の目の前に飛び出してきたのは黒装束に全身を包み込んだ軽業師のような男だった。

火山のように飛び跳ねている黒髪に野蛮そうな顔……何、こいつ?

もしかしてカノン騎士団の連中かしら?

まったく、みんなが必死に戦ってるのに一人だけサボってんじゃないわよ。

 

「何か用? ナンパならお断りよ」

 

私は手を振り拒絶の意を示す……しかしそんな私の行動を見ても男はただ含み笑いするだけだった。

………気持ち悪い奴、それに何か凄い嫌悪感が身に走る。

 

「おっと、いい殺気を放つねぇ……、おれっちも体が震えちまうぜ」

「―――うるさいわね、ピーピー騒いでんじゃないわよ、この鳥頭」

「けっけっけ、鳥頭と来たか! そんならお前はブサイク火山だなぁ? 髪の毛真っ赤だしよ?」

「こいつっ! うるさいって言ってんでしょうがっ!!!」

 

私は手に持ったメイスで本気で殴りかかる。

女の子に向かってそんなに失礼な事を言う奴は神が許しても私が許さない!!!

 

「おっとっと、あぶねぇなぁ?」

 

―――しかし、私の本気の一撃を目の前の男はあろう事かひ弱そうな腕で受け止めた。

嘘でしょ!?私の一撃はゴーレムの頭部だって吹っ飛ばすのよっ!?

 

「な……っ!?」

「まったく、まだ名乗ってねぇのに戦闘開始すんじゃねぇよ」

 

そういいながら男はメイスを払いのけて軽く笑う。

こいつ、まさか……人間じゃない?

私はメイスを構えながら緊張の面持ちで間合いを離す。

 

「よしよし、少しは賢いみたいだな……んじゃ問うぜ? お前の名前は?」

「………秋桜麻衣子」

「そうか、それじゃあ俺の名前も覚えときな? おれっちの名前は牙紗(がしゃ)……今回のパーティーの主催が一人だ」

 

そういって男――牙紗は私へと駆け始めた……。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

第九話いかがでしたでしょうか?

初戦は麻衣子!敵は牙紗!そしてなんとか間に合った俺(何

少しでも楽しんで頂ければ本望です(ノ´∀`)ノ

 

このSSは毎日更(以下略

 

 

 

 

―――第九話★用語辞典―――

 

製作中

Ads by TOK2